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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.03.02 
「利用制限」は憲法違反 新世紀JA研究会一覧へ

強権的な「農協改革」
実態に基づいた反論を
(公財)すかいらーくフードサイエンス研究所理事長 入澤 肇氏

 准組合員のJA事業の利用制限問題は、これから「農協改革」をめぐるやりとりで、政府からいつ持ち出されるか分からない地雷のようなものである。JAの経営と地域の農業振興にとって准組合員はどのような存在か。その位置づけをJA自ら明確にしなければならない。今回の紙上セミナーは、元農水省構造改善局長、同林野庁長官の入澤肇・すかいらーくフードサイエンス研究所理事長、農林中金総合研究所・斉藤由理子常務に問題提起してもらった。

(公財)すかいらーくフードサイエンス研究所理事長 入澤  肇氏 今回の規制改革推進会議の農業ワーキンググループの「意見」(平成28年11月)は本当にびっくりしました。こんなこと言っていたのでは日本の民主主義が成り立ちません。それから今、資本主義が行き詰まりに来ているといわれている時に最後の市場経済社会を守り、自由と平等を調和する社会をつくるには協同組合が重要な役割を果たしているということを強調しておきたいと思います。
 世界の状況はトランプ大統領の出現、英国のEU市場からの離脱宣言、それから、おかしなことに中国の習近平主席がダボスで「自由貿易こそ守らなくてはいけない」などといっています。まさしく混沌とした社会というほかありません。
 サッチャーさんが英国の首相になってから30年経ちますが、この間、ソ連の崩壊もあって、停滞した社会を変革するためにミルトン・フリードマンというアメリカの経済学者が「新自由主義」というのを唱えました。この考えは、あらゆる規制を撤廃(徴兵まで)し、競争、競争でやった方が世界全体、あるいは一国全体の国民の福利厚生が最大になるという思想なのです。この結果、特定の強者に富が集中するようになってしまいました。アメリカではこの30年間で、国民の1%だけの所得が増え、99%は減りました。中国でも1%の人間が中国の総資産の3分の1を占めています。
 わが国の場合、戦後の長期保守安定政権を支えてきたのは地方の中間層です。それは、とくに農地解放で自作農になった農家層です。国家の運営は所得階層が提灯型でなければうまくいきません。中間層が厚ければ厚いほど国は発展します。これが今、世界中で壊れつつあります。日本でも、富の集中度を表すジニ係数をみても格差が拡大してきており、若者の中でも格差拡大で貧困層が広がっています。
 こうした状況の中でいま、競争を第一義とする急進的な農協改革が行われ、あげくは、農業の不振の原因はひとえにJAにあるとまで言われています。しかし今回の農協改革の背景には、空白の20年の農政の混迷があります。コメの部分自由化を行ったウルグアイラウンドの次のドーハラウンドを見据えて、6年間に何をやればいいかということで、当時、私は三つのことを訴えました。一つは、諸外国に後れを取っている土地改良という基盤整備事業を早く終え、農家の所得・経営安定対策に全力を挙げるということでした。
 二つは、どの産業もプロの担い手がいなくてはいけません。これは認定農家・農業法人であり、それには相応の農業所得が必要です。そのためには農地を流動化させ規模拡大を図ることが必要で、そのために農業経営基盤強化法をつくりました。いま農地中間管理機構ができて規模拡大を目指していますが、基本は地域における話し合いであり、それがないとうまく機能しません。
 三つは中山間地域対策です。日本の農家の4割、農業生産の4割、農地保有の4割、これはすべて中山間地域であり、独自の所得安定制度が必要です。
 しかし、農政は混迷し、その中から生まれてきたのが政府官邸主導の農協改革です。その特徴は、法律による規制と権力行使によってなんでも可能だということです。最初は農地法の撤廃や所有権を否定する賃借権の強制的な設定、さらには卸売市場法の廃止まで考えられていましたが、さすがにそれはできませんでした。
 今の国会でも、国家主権を脅かしかねない種子法の廃止や農業競争力強化支援法案が議論されようとしています。支援強化法について当初は、農家の経営努力義務まで盛り込もうとしましたが、それはあまりにも農家を馬鹿にしているということで一部修正されました。しかしJAや全農などについては「改革プログラム」の進捗状況の管理を行うことなど、今後に火種を残す内容になっています。
 そこで農協改革についてですが、今回の規制改革推進会議・農業ワーキンググループの「意見」は酷すぎます。全農は購買部門から撤退して販売部門に人をシフトしろ、購買事業はやめてコンサルタント事業でやれ、JAの信用事業は半分にして、あとは農林中金の代理店にしろ、都市農協はいらないなど無茶苦茶です。こうした事業制約はそもそも営業の自由を認めた憲法違反に当たります。
 このことを契機に私は全農に次の三つのことを提言しました。一つは商工会議所など農協以外の外部の意見を聞く仕組みをつくること、二つは生産法人など大規模農家の意見をくみ上げる仕組みをつくること、三つは不正競争防止法の徹底とその実践を内外に明らかにすることです。
 農協改革については、自ら主張すべきことをしっかり主張することです。中央会監査についても、外部監査と業務監査が融合した優れた監査制度でした。公認会計士による外部監査がすべてではありません。また中央会制度についても、准組合員の利用制限と天秤にかけられて廃止されるようなことはあってはならないことでした。
 准組合員の利用制限については、准組合員の資格要件を厳しくすることはあっても利用制限をかけることなどはできません。そんなことをしたら民事訴訟が起きかねません。JAは准組合員の利用状況を調査し、准組合員の利用が他業態にどのような悪影響を及ぼしているのか、実態に基づく反論をしていくことが重要です。
 今回の農協改革は協同組合を否定する観点で行われています。重要なのは自由と民主主義、豊かな経済発展のためには共益に基づく協同組合の存在と役割が不可欠だということをしっかり主張していくことです。議論は内輪のものであってはならず、また事実に基づくものでなくてはなりません。さらに高い経済成長が期待されない状況下にある今、農業の重要性を認識すべきで、JA全中などが主導して「若者よ農村に帰れ」という運動を提起したらと思います。

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