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シリーズ:いんたびゅー農業新時代

2017.03.09 
【JA全中 大西茂志常務】 地域営農ビジョン実践こそ自己改革一覧へ

JA全中 大西茂志常務インタビュー

 JAグループは「農業者の所得増大」、「農業生産の拡大」を最重点課題とし、組織一丸となった自己改革を加速させる。地域でどう実践するのか、その視点を改めてJA全中の大西茂志常務理事に聞いた。

◆危機感を共有する

 --「農業者の所得増大」と「農業生産の拡大」、そして「地域の活性化」を最重点課題とした自己改革の加速化が求められています。今日は現場で着実に実践するための基本的な認識をどう持つべきかお聞かせいただければと思います。

JA全中 大西茂志常務 もともと創造的自己改革を打ち出した発端は人口減少社会のなかで、農業だけでなく地域全体をどう作りあげていくのかという問題意識が背景にあって、その危機感のもとに改革をスタートしています。
 そのために地域の話し合いで地域営農ビジョンを策定・実践しようということを提起してきました。最近の現場の取り組みを聞くとそれが確実に進化していることを感じます。
 たとえば、今年のJA全国青年大会で発表された青年部の活動のなかには、これまでは単に田植え体験だけで終わっていた食農教育を、学校給食の食材を青年部が子どもたちに指導して種を取るところから栽培、収穫、そして販売するという農業そのものを体験してもらい、さらに地域を巻き込み「こども食堂」の創設・拡大に取り組むという事例がありました。組合員が自ら地域に参加し動くということです。
 今年初めて開催した営農指導員全国大会でも、地域の人たちが危機感を持っていながら将来像をどう描いていいのかも分からないなか、営農指導員が中山間地の耕作放棄地解消のためJA出資法人の設立を提起し発展させた事例が発表されました。ソバの栽培から始まって六次化し販売、新規就農まで取り組むようになったということです。もちろんJAが事業として展開していますが、きっかけは営農指導員の力であり、そこにさまざまな地域住民が農業に参加して盛り上げていく。そして、それを理解するJA全体の総合力が発揮されています。まさに協同組合の基本的な姿で、自己改革の加速のため、今一度、このことを振り返る時ではないかと思っています。
 本紙前号の座談会(2月28日号「挑戦 自己改革2017」)でJA松本ハイランドの髙山拓郎専務が組合員との話し合いを「車座」、「ワークショップ」と表現し、JAみどりのの阿部雅良専務も地域づくりは「ワークショップ」だという指摘をしていましたが、地域営農ビジョン運動もまさにワークショップで、組合員のみなさんの問題意識をしっかり取り込んでJAが事業として解決していくことが大事だと思います。
 政府からの「農協改革」に対して、われわれは自主的な協同組合であると主張してきましたが、やはり協同組合としての実践を加速していかなければならないと思っています。

◆自分たちで「魅力増す」

 --昨年は「魅力増す農業・農村の実現に向けたJAグループの取り組みと提案」(以下、「魅力増す」)も出されました。現場では生産者手取りの確保や安い資材の提供などの取り組みなどの具体策が期待されていますが、この提案のポイントを改めてお聞かせください。

 この提案によって、実際に自分たちの営農と暮らしがどう変わるのかということがまだ腑に落ちていないという思いがあるのはその通りだと思います。
 ただ、一方でこの「魅力増す」の提案には、いくつかのポイントがあると思います。
 まずは自分たちで農業や地域をどうしっかりさせていくのか、そこを考えることが大事だということです。
 そのうえで、自分たちだけでできないことは、場合によっては地域の商工会や経済界などと自分たちを組み合わせながら将来像を実現していこうということを提起しています。それはやはり農業はわれわれだけではなくて、地域や国民のみなさんとともに発展していくものだということです。それを今まで以上に強調しているのが今回の提案の大きな特徴です。
 農業の6次産業化はもちろん、耕作放棄地の解消対策でもやはり地域を共有しているという点で商工会などとの連携に強みがあると思います。業種は違っても同じ地域で育ってきたという人的なつながりもあるでしょうし、実はJAの組合員になっている人もいるなど、この地域をどう盛り上げていくかということに同じ意思が持てます。成功例が多いのもそのためだと思いますし、もっとJAと地域の商工会などとの連携やコラボの成果を地域にも自ら伝えていくべきだと思います。
 そうしたわれわれ自身の取り組みを行っていきながらも、同時に必要な政策を求めていくということです。とくにわが国の特徴として、条件不利地も多いことや、この国の気象条件もあります。それに合う作物をどう生産し国民が求める食料にどう応えていくかが大事ですが、それを補う国の施策がどうしても必要です。それをわれわれとしては骨太の農業政策と言っています。
 産業としてどう農業を伸ばすかという施策は重要ですが、基本的な経営安定対策や農業多面的機能の発揮なども含めて、農業生産力や自給率を向上させる食料・農業・農村基本計画を実現できる施策としてしっかり求めていこうということです。

 --まずは自分たちのプランで魅力を増すようにするという取り組みが重要だということでしょうか。

 やはり組合員が地域や農業について語り、その組合員の思いを受けてJA職員が動くということだろうと思います。その点でいえば、JA全国大会でも前回は集落活動や支店協同活動を重視しようと決議していますが、それが基本になって地域営農ビジョンの取り組みを通じた自己改革も実現していくと思います。
 一例を挙げると、昨年、地域営農ビジョン実践大賞を受賞したJAつがる弘前の取り組みは、集落ごとに地域のなかでの合意づくりと、めざす姿が明確に打ち出されていました。全集落でビジョンを策定し、地域によっては祭りで元気にすることを柱にするなど、分かりやすい取り組みを提示して、それを支店別のビジュアルな資料として作成し地域住民にも分かってもらう実践もしています。絵だけ描いて終わるというのではありません。
 そうしたプロセスが非常に大事で、「魅力増す」の取り組みはどうしても農協改革への対応という面が先に出てきてしまっているのですが、地域で自らがビジョンを描き実現するという第27回JA全国大会決議が基本にあるということです。

◆地域再生に総合力を

 --一方で、准組合員の利用規制や信用事業譲渡問題などへの対応から改革が迫られているという面もあります。そこはどう考えるべきでしょうか。

 確かに准組合員の利用規制といった危機があるわけで、それを乗り切るためにはどうすればいいのかという意識もあります。同時に今の農業、地域をどうするのかという危機意識もあります。
 ただ、基本的には総合農協であるというのは、そもそも組合員の要望が「総合」事業ということですから、金融、経済、共済などそれぞれの事業の重要性を発信するアプローチもあると思いますが、やはり組合員の生活を支えるという観点からJAの事業や運動を理解してもらい支持してもらうということだと思います。
 たとえば、農業と農協の役割も単なる食料供給という役割ではなく、先ほど紹介した青年部のような活動であれば、住民にとって大切で理解しやすい学校給食への食材提供や直売所活動は食農教育にもなります。そうした目線で実際に現場で実践していることを組み立てて説明していくことが大切ではないかと思います。
 また、各地の集落では地域住民の合意づくりのための基礎的な共同組織をつくり、その上に営農組織をつくっていくという、いわゆる2階建ての組織づくりなどが行われています。そういう機能をJAが発揮していかないと日本の地方そのものがなくなっていってしまうという危機感が常に必要だと思います。
 それをどうやってJAグループとしてもサポートしていくか、JAグループ全体としてどう総合力を発揮していくかが問われています。
 その意味では「農協改革」が課題という以上に、大都市への人口集中、地方の人口減少・高齢化というわが国の大きな動きのなかでわれわれとしてどう組合員、地域住民とともに役割を発揮するのかが改革の基本と言えます。

--ありがとうございました。

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