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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.03.13 
JAにとって信用事業はなぜ必要か一覧へ

相互扶助の基本は信用事業
貸出しは営農・生活の全て
JA山形市参事・佐藤安裕氏

 JA山形市は総合事業の核は信用事業と位置づけ、組合員の営農・生活の隅々までフォローする独自の活動を展開している。2月17日に開いた第5回の「危機突破・課題別セミナー」で、同JAの佐藤安裕参事に報告してもらった。その内容を紹介する。

◆組合員を守るため

JA山形市参事・佐藤安治氏 農協は相互扶助組織であり、相互扶助の基本は信用事業です。信用事業を兼営する総合事業だからこそ、その適正な正しい収益で農家支援・農業振興ができます。信用事業は金のつながりでなく人と人、農協(職員)と組合員が信用と信頼で結ばれ、地域社会で資金の預け入れと貸し出しで組合員相互、地域利用者との循環型社会を創っています。全ての農協事業は信用事業の決裁機能とつながっていますが、農協と組合員・利用者もつながっています。
 地域住民が准組合員として利用者となっているのは、農協が農業者への支援、地域の農業振興・貢献の仕事を信用・共済その他の事業を通じて「地域協同組合」としても農協を支持・理解している証です。組合員は加入脱退が自由ですが当農協の出資金は毎年増えています。組合員を守るために、昭和23年の創立以来、一度も合併せず一度も赤字を出したことがありません。信用事業の健全性は全ての農協事業に影響するため、貯金を集める事は負債を集める事であり、他事業運用は注意深くする必要がある。当農協は利益剰余金の積立金から使う事を基本としています。

◆金融の地産地消

 信用事業は全てにおいて決裁権限であり、貸出金こそ信用事業の基本です。金利を始めとした決裁権限を必要とするもので、信用事業の代理店では主体的に行う事ができません。農協の定款には近年まで、事業目的の第一に「組合員の事業または生活に必要な資金の貸し付け」が定めてあり、歴史的経過を見ても信用事業が農協の基本です。金利での営業をしない、定期貯金の上乗せキャンペーンはしないで信頼関係を構築することが大事です。
 貸出金も適正な金利で正しい収益を上げる事が基本で、そもそも営農販売は信用事業の一つなのです。営農計画があり、品質の良い作物を生産することで販売金が振り込まれ、必要とする設備や機械等の購入資金の貸し出しが行われます。貸出金は営農・事業・生活そのものであり、組合員の豊かなくらしと社会的・経済的地位の向上を図る手段です。
 貸出金の審査は信用事業を含む総合事業を通してできます。それらの取引状況、確定申告支援による収支状況、不動産管理による入居状況、財産状況や家族構成や勤務先などでスコアリングシートとは違う生きた審査ができます。専務をはじめ私を含めた各部長の審査会でも、組合員の人となり、財産状況を全員わかっていて書類だけで判断することはありません。
 審査は人物が第一です。収支、担保は第二、第三であり、基金協会保証もその一つですが、協会が保証するから貸すという体制は取っていません。貯貸率50%台を維持しながら自己資本比率20%台を維持するために利用しています。貸出金で一番無責任なのは貸し放しです。生きた貸出金とするためには農業融資を始め全てにおいて支援することが大事です。
 地銀はカードローンをTVCM等でPRして残高を急に伸ばしていますが、問題であり取り組みがおかしいと思います。当農協は平成5年から債務整理相談も行っており、サラ金の債務整理経験からカードローンは推進していません。JAカードの申し込み時もキャッシングの金額を「0」にすることを説明していますが、リボ払いを選択できないのは残念です。

◆地域に合った農協らしい信用事業の形がある

 当農協は昭和33年4月の第10回通常総会で、「都市農協としての経営方式に移行し、准組合員利用(貯金の吸収・貸出金の伸張)に努力し、信用事業を推進すること」を決議しました。貸出金の営業は、信頼していただいている組合員・利用者の家族や分家等の親戚、知人や隣近所などに派生し、枝分かれして伸びていく営業を基本としています。さらに取引を厚く太くしていくことを大事にしています。
 現在の貯金集めは年金と口座振替を基本としています。年金は集金の手間がなく終身受給があり歩留まりが良い。農協と組合員・利用者も、現代の生活機能である口座振替でつながっており、給振よりも強い機能で、生活に関わるありとあらゆる支払いを取り扱うことで、口座自体が生活そのものになります。
 口座振替は24時間営業であり組合員・利用者自身が毎月々入金できるし、給振口座からも入金してもらえるのです。代理店になると地元の学校や新聞販売店等との自振契約決裁の権限もなくなります。JAカードの活用も支払日が決まっており、明細があるので家計簿や収支記帳に利用する価値もあります。また、年金振込利用者は将来必ず相続が発生するので、現世代利用者の満足度を高めることが最大の次世代対策になります。
 当農協の組合員は山形市の旧市内に居住しており、農地が市街化区域に編入され、資産価値が高まり相続税申告が必要になりました。49年から相続相談を開始していますが、昨年より責任ある業務としての相続手続とするため、店舗別に件数や手続チェックリストをもとに進めることで、店舗で対応の差が出ないよう注意深く進めています。
 相続に伴う売却もあり、昭和48年1月に不動産事業の資格を取得し、総会を経て開始。現在の不動産賃貸住宅の相続対応は、支店からの情報や相続を機に不動産部で企画・建設、貸出金、共済加入、入居者仲介、家賃決済と管理契約、LPガス供給、収支の記帳代行業務など農協事業を有機的に結び、組合員の信頼を得ています。地銀のダンピング金利による借換攻勢にも組合員との信頼関係は揺るぎません。

◆信用事業は「知的福祉サービス」である

 債務整理や年金手続相談、相続手続相談、遺言信託相談や確定申告などの税務相談等、全ての相談業務を「知的福祉サービス」として信用事業関連にしています。このサービスを充実していくには、協同組合として組合員・利用者の生命と財産を守るべく、全職員による認知症サポーター体制、任意後見契約や成年後見制度対応など、市社会福祉協議会とも連携して、さらには本店ビルにある公証人役場との協力体制を確立しています。最終的には農協自体で法人後見ができれば、組合員の財産を確実に守ることができます。

◆一人は万人のために万人は一人のために

 共済は信用事業の一部です。共済の金融化を進め、金融部として信用と共済の事業方針を一本化。共同元受方式ですが、企画や掛金、付加配分など何ひとつ農協で決定することができず、人的・事務的費用負担に見合う付加配分になっていないのが一番の問題です。全共連と農協の労働生産性に開きがありすぎます。付加配分を既契約も含めて見直しをすれば、創造的自己改革はさらに前進するものです。

◆   ◇

 時代は変化しても農家組合員はしたたかに力強く生き抜いていく。それらにあわせて「農協の軸足は組合員のために役立つ事をする」。時代とともに農協事業も変化していくことが大事です。
 総合事業すべてが相互扶助です。信用の資金循環、共済は全国の組合員間の相互扶助です。共選出荷しかり、米の一元出荷多元販売の共同計算方式委託販売や、肥料・農薬の共同購入等、農産物の出荷等、農協以外を一部利用している組合員も、ほぼ全員農協振り込みです。組合員の事情を常に優先しますが、農協を利用したくなる魅力ある農協を目指しています。
 昭和23年4月創立から複数組合員制を採用し、現在女性組合員の割合は41.4%。准組合員の女性割合も35.7%であり、総会にも年々准組合員の出席者が多くなっています。基本の「JA綱領」や「一人は万人のために、万人は一人のために」の協同組合精神を総会資料はじめ座談会資料、カレンダーや現金封筒などで相互扶助の理念を掲げていますが、はたして農協事業の進め方はどうでしょうか。組合員をお客様扱いとしていないか。推進対象者としていないか。職員に対して個人目標を課して評価していないか。「職員の信条」にもある通り、理念の実践は農協内部から必要と考え、個人目標は全事業において完全廃止し、「組合員のために」「組合員とともに」を基本に、店舗目標のみで取り組んでいます。
 現在はWLB(ワーク・ライフ・バランス)に取り組んでいます。「笑顔の集まる職場を創造する」をテーマに、労働生産性改革に取り組んでいます。職員の心身における健康が良質な組合員サービスにつながるのです。
 東日本大震災の被災地応援として、独自に「被災地応援懸賞品付き貯金キャンペーン」を新規契約に関係なく、手続きなしで既契約利用者から抽選で900名にプレゼントしています。大震災の翌年の総会では剰余金から一部寄付する議案提案をしましたが、組合員からは賛成とともに「お互い様だからもっと増やしてもいいんねがよ」との意見も出され、見識の高さ・心意気に感動させられました。信用事業を通した総合事業で農業に関わり、農家組合員・地域の利用者の信用信頼を積み上げて健全経営を貫き、農のある豊かな地域社会を築くべく、どのように時代が変わっても変化に対応し、力強く未来に向かって歩んでいきたいと思います。

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