JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.04.28 
消費情報を販売戦略に【JA富里市前常務理事 仲野 隆三氏】一覧へ

直接販売で農業所得アップへ― マーケットインで販売力強化 ―
主食米の供給不安見越して

 新世紀JA研究会の「総合JAビジョン確立のための危機突破・課題別セミナー」は、「マーケットインに基づく直接販売の拡大」をテーマにJA全農の米穀、園芸事業、それにJAみどりの(宮城県)、JA富里市(千葉県)の取り組み報告をもとに意見交換しました。今回は2JAの報告を紹介し、全農の報告と意見交換は5月20日号で掲載します。(7面に関連記事)

◆「経済事業」で生きる

はじめに

 JA富里市で営農指導から販売開発まで43年間、「経済事業で生きてゆく農協」を目標に、次世代組合員(青年部・農業後継者)の育成と組合員の経営安定のため、営農形態に合わせた多様な販売事業を推し進めてきました。いまも小規模JAだが役職員が一体となり、組合員の営農経済事業に取り組んでいます。どのように販路開拓を進めてきたか、直接販売と買取りコストやリスク管理の考え方を報告します。

組織共販と直接販売

仕向け先ごとに産地で分荷(JA富里市で) 昭和58年まで共販部会を13組織育成し、大型共販産地(構想)を推し進めてきました。バブル崩壊後、小売業のディスカウントが進み、系統共販はデフレの中でもがき苦しみました。一方で予約相対取引が進み、バイイング・パワーのもと安値安定が定着、組合員の売り上げは激減しました。
 解決策は5段階の流通を2段階にするコスト削減にあり、実需者を特定した直販取引を進めることだと考えました。具体的には長崎屋やジャスコと取引交渉(定時・定質・定量・定価)を開始。組合員の同意を得て市場取引(共販)と併用し、プール精算で平均単価を引き上げました。
 直販の副次的効果は、小売店側の宣伝広告の悩み解消、JA側は産地情報の発信ができること。二つめは小売店の品出し時間に余裕ができること。三つめが店舗ごとに地域(消費者ニーズ)に合わせた季節野菜の提案が可能になることで、最大の効果は売り先との信頼関係ができてマーケティングや産地情報の把握が可能となり、販売戦略を立て易くなったことです。これで生産部会等に価格予測や出荷時期を示し、JAの販売事業の信頼性を高めることができました。
 課題は取引での債権管理。大手スーパーとの取引はJAに振込当座を開設しているが、中小の生鮮スーパー、ドラッグストアー等(異業種)は取引交渉等で与信情報を得て不良債権発生の防止につとめています。後に「販売対策積立金」や「債権処理対策積立金」などで、組合員支払および減損処理(引き当て)し、経営への影響が発生しないようにしました。
 また、卸の経営が悪化する中で、卸売市場側から生鮮スーパーとの直販取引が提案され、商社を取引先にJAと生鮮スーパーの直販取引も実施。商社はJA出荷量に対し過不足数を調整するため、双方の需給バランスを維持安定させることができます。商社をはさんだ決済は卸売市場の精算方法と変わらず、卸が立替処理し、組合員への精算は共販品「組織共撰(共計)」の場合と同様に4日間で口座振り込みとなります。

◆加工卸と契約で説得

加工・業務用野菜取引

seri1704280803.jpg 平成29年現在、生鮮野菜需要は中、外食などの用途が60%に対して、内食(家庭消費)は50%を切り、市場外流通の要因となっています。平成7年営農指導と加工卸企業(野菜カット会社)と取引契約を締結。組合員はJAを通じて野菜を加工卸企業に出荷となりました。JA販売事業での取り組みは全国的に稀で、加工卸の存在も卸関係者に知られていなかった。課題は市場価格に比べ2~3割安いため、全農も含め話を聞いてくれる産地やJAがありませんでした。
 加工・業務用野菜の要諦は、専業経営による再生産価格に基づく契約取引(面積契約=数量取引)とコスト削減にあります。さらに野菜の加工適性に見合った品種の発見が重要です。意欲ある組合員をリストアップ、青色申告書と経営診断で契約取引をシミュレーションして計画経営改善プランを説明。多くの組合員は価格の安さに驚きました。それがいま次世代組合員(30代~40代の農業後継者)はカルビーポテトや長ネギ、キャベツ、ダイコン、ニンジン、ショウガなどの加工・業務用野菜を経営に取り入れています。
 地域農業は畑作中心の家族経営体が多く、野菜生産が周年可能なため農業労力を機械に頼ります。事前に取引価格が決まっている加工・業務用取引は「規格簡素化(2階級~)」や「流通コンテナ(鉄コン等)」などでコスト削減ができます。規格簡素化はサイズが大きく10a当たり2割程度増収するため契約単価を補うことができます。
 具体的には加工卸企業を通じ、実需者の外食店などに組合員が出荷。JAは生産管理(圃場指導、情報発信、出荷調整)を行い、加工卸企業に生産ステージや圃場情報を伝え、加工卸は実需者に最新情報を伝えることができます。
 販売債権管理は加工卸企業とJAとの取引契約書に基づき、半月~1か月の決算サイトで支払いますが、サイトが長いため組合員から立替払い請求があれば、販売確定額(販売債権)の80%以内で支払いできます。
 契約栽培は組合員とJAが行うが、契約書は加工卸企業とJAの間で締結されます。これに基づき組合員と契約取引の意思確認をするが、課題は市況高騰時に市場へ逃げ、産地商人の庭先買いに翻弄されることです。
 そのときは組合員と膝詰め談判します。これからは「組合員が農協を選び、農協が組合員を選ぶ(時代)」と説得し、以後組合員は契約取引を遵守するようになりました。

インショップ取引

 共販組織参加の中堅組合員からインストアーの要望が起こり、京浜地域の20社(ピーク時30店舗)の大手小売店に3坪(10平方メートル)の産直コーナーを設けました。部員は年間を通して生産出荷する農産物計画書を提出し、JAは各店舗バイヤーと農産物(種別、数量、価格等)を交渉、JAは部会と協議、部員は出荷計画をもとに分担してJAの低温倉庫に出荷します。出荷物はJA指定運送が朝4時~8時まで店舗まで搬送、店員がJAインショップコーナーに野菜、花卉など陳列します。
 決済サイトは1か月、売掛金(販売債権管理)は販売開発課及び精算処理(電算経理)により入金確認を行います。課題は売れ残り品回収。部会と協議してスーパー側が買い取りますが、その結果、インショップの中間コストは40%(運賃、手数料、買い取り費用、小売店マージン含め)となり、部員からコスト引き下げ要望が出ています。

◆理事会の責任明確に

決裁権限と責任及びリスク管理

議論を深めた課題別セミナー JA直販取引は「取引交渉(契約)」や「債権管理(売掛金回収)」など含め、事業規程などで明確な決裁権限を設ける責任が「理事会」にあります。これら権限責任に基づき役職員は買い取り販売など取引交渉に臨まなければなりません。
 系統以外の取引契約(交渉)に際しては、次のことを遵守したい。一つは、取引交渉は必ず2人で対応すること、二つ目は取引内容を事前に伝え、取引する組合員のアウトライン、時期、面積、数量、規格、価格を話し合っておくこと、三つ目は、取引決済サイトをいくつか用意(理由も含め)しておく、四つ目は物流コストの負担を考えておくこと。
 そして五つ目が、予測できない事態、気象変動(異常気象等)における野菜の数量不足及び欠品など瑕疵(かし)責任について、また輸送及び鮮度管理等についての責任を明確にしておくことです。
 また、交渉相手の要望や双方の合意事項はその場で再確認し、後日、交渉相手に成文を送付して内容確認することです。やっていけないことは交渉で合意した事項を、後に一方的に訂正・変更しないこと。交渉担当者の専門性(現場知見と企画力、交渉能力など)が試されます。
 交渉後、上席者に口頭及び文書報告するなどして決裁を受けることです。JAの決裁稟議は時間がかかると業界から批判されます。常時、取引に応じて決裁ができるシステムが必要です。
 次に交渉担当者の取引額「権限」を明確にする必要があります。組合員の生産物を取引契約(組織共販品)の買取り販売などで売買交渉を行う際、取引金額を無制限に任せることは債権管理上、非常に高いリスクが発生します。 
 直販など買取販売は、その都度販売債務(未払金)と債権(売掛金)が発生します。取り引きにおいて担当者の経験に頼り過ぎると販売債権が不良債権化する危険性をはらむ。電算及び経理部と販売部署と取引情報を把握するなど、担当職員の判断に目配りをするとともに取引額に一定の歯止めを設ける権限表が必要となります。

◇     ◆

 振り返ると独自で卸売市場に農産物販売をしてきました。昭和53年に生産部設置規程を
整備、系統販売に転換大型共販を推し進めてきました。バブル崩壊後、野菜価格は長期低迷し組合員から悲鳴があがりました。販売担当は京浜市場を訪れ、流通変化を探り、スーパー等との直販取引を決断し、全農園芸部長に大手スーパーとの直販取引を3年連続で要請しました。
 全農(当時経済連)は県下JAの協力がないと動けないとして動かず、単独で大手スーパーに通い、バイヤーに産地情報を発信するなど直販取引により販路開拓をしてきました。加工・業務用野菜や原料用野菜等の取引も、全農と取引企業トラブルなどで、部を除きJA単独で食品企業や加工卸企業との販路を切り開いてきました。
 既に実需者との取引が進んでおり、人材も育っており、全農への要望としては、全農が現在取り組んでいる生産資材及び農業機械類(中古含め)の廉価な商品情報を発信してくれることを願いたい。
 また、系統販売事業の単協と全農の二つの手数料問題があります。全農合併(全農県本部と全国連本部)となっているが、全国連本部扱いの販購買事業で県連本部の手数料は独立採算性から避けて通れません。だが合併で一つと考えると矛盾があります。さらに系統販売で単協手数料と全農県連本部手数料は組合員にとっても解せません。
(写真)仕向け先ごとに産地で分荷(JA富里市で)、議論を深めた課題別セミナー
このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

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