JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣・東京大学名誉教授】

2017.06.11 
第18回 水田農業改革と地域再生の仕組みづくりをいかに推進するか一覧へ

 今回から農協塾とも呼べるJA-IT研究会の研究報告の紹介をおこないつつ、JAはいま何をなすべきか、ということを先進JAの活動報告ならびに討論の紹介を通して考えていきたいと思う。ここでとりあげようとしているのは「JA-IT研究会 第45回公開研究会」(2017年2月17~18日)の報告ならびに討論についてである。
 この時に行なわれた報告テーマならびに報告者をまず一覧のかたちで紹介しておこう。
 第1報告
 「新企画『蔵出米』を中心とした新たな販路開拓」
 JAぎふ営農部 部長 小野忠義
同 営農企画課 課長 辻有記臣
同 営農企画課 代理 林秀治
 第2報告
 「園芸メガ団地の取り組み―ー水田地帯でネギの10億円産地をつくるーー」
 JAあきた白神 営農部 営農企画課 課長 佐藤和義
 第3報告
 「担い手組織と二人三脚で米・麦振興に挑む」
 JA糸島 営農部 農畜産課 考査役 田中義徳
 第4報告
 「パルシステムの米販売の取り組み」
 (株)ジーピーエス 第二事業部 部長 武藤浩史
 第5報告
 「震災復興の歩みと平成30年以降に向けた水田農業ビジョン」
 JAふくしま未来 営農部 農業振興課 次長(災害復興特命担当) 高玉輝生
 第6報告
 「二階建て集落営農法人が取り組む地域再生の仕組みづくり」
 (株)田切農産 代表取締役 紫芝勉
 以上の6報告があり、それぞれの報告について質疑応答、討論が行われた。
 このほかに、開会あいさつにJA全中常務理事・大西茂志氏、JA-IT研究会副代表・黒澤賢治氏、さらに解題として、JA-IT研究会企画委員松岡公明各氏の講演があり、またコメントとして副代表委員の吉田俊幸氏があり、コメントと閉会のあいさつを私が行なった。
 ここでは、6つの報告のうち第6報告を除き(紫芝氏の活動はすでに本欄で詳しく紹介してきたので省略)、5つの各地からの報告について紹介したいと思う。それぞれの報告は、各JAの今後の活動ならびに地域活性化戦略に必ず役に立つヒントが内包されていると考える。
 まず、JAぎふの「新企画『蔵出米』を中心とした販路開拓」の紹介から始めよう。
(1)JAぎふの概要
 簡潔に報告の要点を整理すれば次のようになる。
 これまでになかった新たな発想に基づき提示した「蔵出米」の構想を核として販売・生産体制の全面的な革新。そのための「担い手協議会の創出・革新」「保管・輸送コストの徹底的削減」「消費者の組織化拡大、米消費の安定化等々」、米産地としての望ましい革新の方向を大胆に提示した。特に消費の安定的拡大とそれに対応すべき生産・流通体制の全面的な改革が焦点となっている。
 それらの活動の成果(つまり本報告の結論)からまず見ておこう。
 第1図に示したように、平成27年という最近年の米穀販売高は、平成20年の12.1億円から平成27年の17.3億円へと実に43%の飛躍を示している。この同じ期間に国内すべての主食米市場規模は前揚図に示したように平成20年の2兆813億円から平成27年の1兆6536億円へと実に20.5%の減少を示していた。つまり全国的に見れば米は売れない、需要は激減しているという状況の中でJAぎふでは43%もの販売高の拡大を見せている。

第18回 水田農業改革と地域再生の仕組みづくりをいかに推進するか

 こうしたすばらしい成果をあげている前提には、第2図に示したように複数年契約の実施という販売戦略ならびに販売戦術の改革とその推進が前提となっている。つまり、「出来たから売る」というのではなく、米を作る前に「売り方」「売り先」「売り場」「売り値」などをしっかり押さえ、流通業者、販売業者と契約をしっかりと作り上げ、また、生産者との契約もしているのである(第2図参照)。

第18回 水田農業改革と地域再生の仕組みづくりをいかに推進するか

 こうした販売戦略を実現し、担保するためには、すぐれた品質の確定、組合員生産者の組織化、そしてその信頼に応えうるJAにならなければならない。
 詳細はここでは省略せざるをえないが、品種選定にあたっては食味等消費者に選ばれ、かつ栽培の適地として「あさひの夢」と「ハツシモ(岐阜SL)」を選定し、生産者組織の組織化、播種前契約、収穫前契約の徹底・促進、家庭消費用米と業務用米の区分と不足基調の業務用米の販売促進のための生産段階からの組織化など、紙数の制約でここではすべてを語れないが、JAぎふの提起している「蔵出米」の構想を一図に表現すると第3図のようになっている。

第18回 水田農業改革と地域再生の仕組みづくりをいかに推進するか

 この第3図を解説する必要はもはやないであろう。
 この第3図をじっくり読み説いていただくなかから、JAぎふ米の「蔵出米」を中心にどのような構想を立て、どのような手順で組合員の組織化と求心力を高め、かつ外部の消費者やユーザーに対応すべき戦略、戦術を展開すべきか判ると思う。JAぎふの先進的な取り組みを学ぶなかから、わがJAは何をなすべきか、いま迫られている課題は何か、ということを学び取っていただきたいと思う。

※高山輝生氏の「高」の字は正式には異体字です。

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