JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

2017.06.17 
第19回 水田地帯でネギの10億円産地を作る――JAあきた白神の「園芸メガ団地の取り組み」――一覧へ

 つぎに、秋田県の最北西部の米代川下流の能代市を中心に組織された、JAあきた白神のネギの大産地の形成へ向けた奮闘の姿を紹介しよう。JAの名称を「あきた白神」としているのは、世界自然遺産として名高い見事なブナ林で覆われた「白神山地」をその管内に含むからであり、また「白神」ブランドを全国に広めたいという願望が込められているのである。

【第1表】
●組合員数 4173名
●水田面積 5536ha
●主食面積 3085ha
●加工備蓄 324ha
●飼料米 88ha
●大豆 749ha
●水張・保全 775ha
●野菜・そば等 515ha

 JAあきた白神の概要を示せば第1表のとおりである。これで判るように、水田が主力であり、主食米以外に、米の生産調整対応の飼料米や転作大豆、加えて水張・保全水田が圧倒的多数を占めて、東北水田地帯の苦悩を物語っているようにみえるが、他方で野菜・そば等も水田の1割近くを占めていることを頭に入れておきたい。
 そこで野菜などの主力品目と生産者数を紹介しておくと、第2表のように、白神ネギの生産額が11億円余、生産者151名と圧倒的に多くなっている。たしかに「白神うど」や「白神みょうが」などもそれなりの成果をあげているが、生産額では「白神ネギ」が11億円と一頭地を抜いて大きいことが判るであろう。

【第2表】
(1)白神山うど 1億2620万2000円(H27年)山うど部会 59名
(2)白神みょうが 9845万9000円(H27年)みょうが部会 151名
(3)アスパラガス 4564万円(H27年)アスパラ部会 13名
(4)白神キャベツ 6293万7000円(H27年)キャベツ部会 41名
(5)白神ネギ 11億708万4000円(H27年)ねぎ部会 151名

 JA-IT研究会における報告は、営農部営農企画課課長の佐藤和芳氏が行ったが大変な熱弁であった。

<最大の問題点は何か>
 では、白神ネギをめぐる最大の問題点は何か? 何を解決しなければならなかったか?

現状の白神ネギの分析

 その要因を第1図で説明しよう。これまでの白神ネギの作付体系ならびに出荷時期と販売単価の関係をみると、販売単価の高い6月下旬から8月中旬にかけては出荷(取扱)数量はきわめて少なく、販売単価の下がるあるいは低迷している時期に取扱数量が増加するという関係にあった。

現状の白神ネギの分析2

 これを、のちに述べるように多彩な指導、改革等全力をあげて越冬早取り作型導入などの改革を進めた結果、第2図に示したように、7月上旬~8月中旬の高価格を示す時期、つまり品薄の時期に、JAあきた白神の出荷量は大幅に伸び、その結果、販売額は大幅に伸びただけでなく、生産者の作業効率の上昇、秋作業の労力の軽減、適期収穫を可能とするなど多方面で成果があがり活気が充ちあふれるようになった。
 こうした成果をもたらした最大の要因は、JAの指導に基づくネギ育苗ハウスの増設であったと強調された。

【第3表】ネギ育苗ハウスの増設
・消費者ニーズにあった産地形成を目指す
・従来の「秋冬ネギ」出荷の体型から「越冬早取り」の栽培体型の導入
・「白神ネギ」新規作付者の増加に伴う、「ネギ苗」の安定供給
H24年度「農業夢プラン実現事業」活用(県事業)
         ↓
90坪×2棟 2200枚 約3ha分の苗供給の実現

 育苗ハウスの増設の経緯は、第3表に示したようにJAの指導のもとに、消費者ニーズにふさわしい産地形成・定着を目指して、従来の「秋冬ネギ」出荷を主力とした体系から「越冬早取り」の栽培体系の導入・革新と合わせて新規作付者の参入とその増加にともない「ネギ苗」の安定供給を目指して、県単補助事業である「農業夢プラン実現事業」による助成事業を活用し、約3ha分にあたる苗供給事業をJAの実践のもとに実現できたことがその成果としてあげられている。
 それらが成果として実現したのが、前揚第2図に示した7月中旬~8月中旬のネギの高価格時の出荷を拡大できたことにつながっただけでなく白神ネギの販売額の拡大と「白神ネギ」ブランドの確立に大きく寄与したのである。
 こうした成果を踏まえつつ、「白神ネギ10億円販売達成プロジェクトチーム」をJAに設置し、次の3つのプロジェクト方針を決定、推進している。すなわち、(1)作付面積の増反推進、(2)販売単価のさらなる向上・維持、(3)反収のさらなる向上、というものである。
 作付面積の増反推進にあたっては、作付を拡大した生産者への10aあたり2万円の支援・助成を行い、年々作付拡大を達成して、28年度には7haの作付拡大に成功している。
 さらに、JAあきた白神は全力をあげてさらなる白神ネギの拡大・充実を目指して次のようなめざましい活動を推進している。白神ネギの知名度向上=ブランド化=販売単価向上を目指して、(1)「白神ネギ」ステッカー・缶バッチの作成、役職員着用の義務化、JA業務車全車への貼付義務化、(2)「白神ネギ」のポスター、のぼり、半纏(はんてん)の作成、普及、(3)動く広告塔としての「白神ネギ」ラッピングトラックの作成、(4)反収のUPのための営農指導活動の徹底、(5)そのための「白神ネギ」メールマガジンの運用開始と普及の促進、など多彩な取り組みと運動を進めている。
 さらに秋田県の全面的支援のもとに、いま「園芸メガ団地育成事業」に取り組んでいるところであるが、いまは計画から実施に着手した段階でもあるので、これについては、いずれ私がJAあきた白神を訪ね、自らの眼でその実状を確かめ、次の機会に、ネギ栽培の技術体系――例えばほ場レベルでの機械化の実情、調整・出荷段階での機械化の現状、特に皮むきやラッピングなどの技術――あるいはそれらを生産者がどのように駆使・活用しているか等々について自らの眼で確かめたいと考えている。特に、水稲単作地帯という汚名を長年着せられてきた秋田県北の地域で実にすばらしい活動と成果をあげているJAあきた白神の指導陣の皆さんと生産者・組合員の皆さんとじっくり現地を拝見し話を聞いたうえで、改めて皆さんに報告したいと念願している。

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