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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.06.22 
【意見交換】信用事業譲渡 代理店化は総合JAの否定一覧へ

事業譲渡の目的不明確「営農重点」が「破綻防止」に

 新世紀JA研究会第8回「危機突破・課題別セミナー」ではJAにおける信用事業譲渡・代理店化の問題で討議しました。特に首都圏のJAの企画・信用担当による新世紀JA研究会企画部会小委員会の「提言」は、参加者の関心を呼びました。今回はそのときの意見交換の内容をまとめました。(主な発言者は農林中金総合研究所基礎研究部・清水徹朗部長、東京都のJA東京中央経営企画課・荒川博孝課長、元協同組合経営研究所・福間莞爾理事長、トーマツ監査法人JA支援室・井上雅彦室長ほか、敬称略)。

・提言はこちらから

「組合員のため」第一に

報告者との意見交換 ●わが県は1県JA構想がある。その場合、信連が残るとして、信連に事業譲渡するようなことが法的に可能なのか。(山口県JA)
 ●清水 1県JAになった場合、信連を残してそこに事業譲渡することになるのか分からない。また合併しなくても、ネットワークで結び付くことは可能で、ヨーロッパなどでも事例がある。事業譲渡したからといって赤の他人になるわけではなく、事業分離のマイナス面をカバーする可能性はあるのではないのか。

 ●わが県のマリンバンクは、信漁連が解散して農林中金への事業譲渡となっている。それは良い方向なのか、とるべきでない方向なのか聞きたい。 (神奈川県中)
 ●清水 マリンバンクの事業譲渡については、JAとまったく事情が違うので参考にできない。漁協は、やむを得ず事業譲渡を行ったという面が強い。漁協の貯金量は2兆円程度に対して、JAは90兆円を超える。また、漁協は漁業権がもとになっており、漁業権を管理するのが漁協で、魚市場の決済機関として信用事業が行われてきたという事情がある。

 ●信用事業譲渡について、荒川課長の報告は、突っ込んだ検討をされており敬意を表する。この中で、公認会計士監査に耐えられる体制ということが強調されているが、具体的にどのようなことをさすのか。今までも、中央会監査は公認会計士帯同で行っているので大きく変わらないのではという意見と、そうではなく、相当の改善が必要だとの意見に分かれている。この点をどのように考えるのか。(島根県JA)
 ●井上 いま、公認会計士協会で、公認会計士の実務についての指針作りをしている。農水省調査などによれば、監査報酬等はあまり変わらない。ただ、中央会監査は経営指導と一体になったものであったが、公認会計士監査は金融庁の監督の下で行われ、リスクアプローチ一本の財務諸表監査だ。両者が行う手続きに大きな差はないが、監査の性格はこれまでと大きく異なる。
 監査は、限られた時間で結論を出すことが求められるので、公認会計士の視点から見ても内容はそう変わらない。ただし、何を見られるのか、そのためにはどのような準備が必要かをあらかじめ十分検討しておくことがポイントだ。そこで重要になってくるのが内部統制の整備状況であり、そのことについての説得力のある説明だ。
 ●荒川 これまでの中央会監査は身内の監査であり、内部統制の状況等について説明することは必要とされなかった。これからは、誰が来ても内部統制の整備状況を説明できる能力が求められ、そのためには内部統制の整備とそれを担う人材育成が急務の課題であると考える。

 ●小委員会の報告は信用事業経営の現状認識について甘いのではないか。経費率についても、JAは他の金融機関と比較して低いというが、算定基礎が違う。JAの信用事業は信連・農林中金からの奨励金なしではやっていけない。JA改革どころではなく、足下の信用事業を何とかしないと大変なことになるという認識だ。
 経営が行き詰まって代理店化せざるを得ないという状況をつくってはいけない。われわれは、代理店化は選択しないという前提のもとにやっている。理事会でも、代理店化の検討は不安を煽るのでやめてもらいたいという意見が出ている。小委員会報告の課題の指摘は重要であり、各JAで項目ごとに潰していけば、一定の方向性が出てくると思う。(神奈川県JA)

◆フィンテック活用総合JAの強みに

 ●小委員会報告は大変参考になった。フィンテックについて、今後、総合事業を営むJAは、むしろ対応能力があるという提言は新鮮だった。(JC総研)
 ●荒川 JAは人と人とのつながりを重視する協同組合だ。したがってフィンテックを活用した事業展開が可能であり、事業間の情報の共有などで総合事業の強みを発揮できる。
 ●福間 昨年12月のセミナーでは、農水省金融調整課の山田リーダーから信用事業の収益環境の厳しさが指摘され、またフィンテック等の事業環境の変化に対応するには、事業譲渡が選択肢となるという説明を受けた。
 この点について、JAは信用事業収支において、信金や信組に比べて善戦しているという認識を持つべきだし、実績数値もそれを物語っている。
 フィンテックについては、これをファイナンスとテクノロジーの結合による顧客との取り引きの深化ととらえれば、メンバ―シップの組織で、組合員経済に一体的に対応できる総合事業を営むJAは、単営の他企業に対して大きなアドバンテージを持っている。フィンテックはわれに利ありと考えるべきである。

 ●リスク管理について、公認会計士監査に備えて内部統制の取り組みを進めているが、これが末端の職員レベルにまで浸透するのか心配している。支店が多く、融資についても実行と審査の区別を厳密に区分するのが難しい状況もある。(愛知県JA)
 ●JAは財務諸表監査について、そのポイントを判断できないと対応が難しい。どこまでポイントを絞っているのか、JAによってそのレベルは、バラバラなのではないのか。(神奈川県JA)

◆内部統制確立急ぎ説明能力アップへ

 ●井上 おっしゃる通り、重要性でそのポイントが判断できるのであり、そこは全中・県中、それにJAを入れた協議の中でキーコントロールは絞られる。全中・県中に相談し、または民間の会計士と相談して準備していくしか方法はないが、そんなに難しくはない。なぜならそれはおのずと決まっており、勘定科目と事業の両面からリスクを回避できるキーコントロールを見つけ出すことだ。その意味で、これまでの確認作業が必要だともいえる。それと荒川課長の指摘のように、監査を受ける側の説明能力を高めることが重要になる。

 ●全体レベルの内部統制はできつつあると思うが、今後はそれを踏まえた、項目レベルの内部統制の確立が必要となっている。(神奈川県JA)
 ●荒川報告は大変勉強になった。当県では、4月に農水省の協同組織課長を呼んで直に話を聞いた。基本的には、昨年の12月の課題別セミナーの農水省報告とまったく同じであった。事業譲渡は「選択肢の一つ」を繰り返し強調し、農業融資も行き詰まりですね、支店統廃合等の経営改善も限界に来ていますね、合併もやってきましたね、後に残っているのは信用事業譲渡ですね、という説明・論法だった。
 しかし、われわれの感覚は少し違う。農業融資については、確かに残高は減ってきているが、行政の縁故債が何十億円もあり、個人の農業融資は今後伸びる余地があると思う。また経営改善については、経営努力で営農経済事業の赤字を減らしていく余地は十分あるし、合併を進める余地も残っている。だが、今後の信用事業収支の見通しが大変厳しいのは事実だ。(福岡県JA)

 ●5月に農水省の協同組織課・金融調整課と話し合いを持ったが、金融調整課からは、今後バーゼル規制が厳しくなるとの認識が示され、将来的にダブルギアリングの対応等が変わる可能性があるとの説明を受けた。
 フィンテックについての役所の考え方は、わが方とまったく違う。将来的に窓口業務がなくなるので、JAの仕事のやり方を変えるべきという考えだ。また、バーゼルⅢについては、ダブルギアリングの適応等、その動向を注視すべきと思う。農水省の奥原事務次官は、JAを潰すことなどは考えていない、強くなってもらいたいと応じたが、全体として現場感覚とずれているように感じた。(神奈川県JA)
 ●清水 2012年からバーゼルⅢに入っており、自己資本規制等が一層厳しくなるが、結論的には、現状ではダブルギアリングを含めそんなに心配はなく、すぐにわれわれの組織を脅かすような事態にはならないというのがわが方の認識だ。
 ●福間 平成14年にJAバンク法ができた時から事業譲渡の規定は入っている。JAバンクの考え方は、JAの信用事業を、農林中央金庫を本店とする一つの金融機関に見なすというものだったが、そのことを実体として実現する手法として事業譲渡が位置づけられていた。
 われわれは、事業譲渡を破たん防止の緊急避難的なものと受け止めていたが、それは甘かったということだ。争点は、JAのすべての信用事業が農林中金の支店・代理店になった方が組合員のためになるのか、それともJAを基点とし、連合組織がそれを補完する現在の体制が良いのか、徹底した議論を行って結論を出すべきだ。
 議論は協同組合理念などという抽象的なものではなく、組合員の願いをかなえるにはどの事業方式が適切で優位性を持っているのか、具体的な検証が必要だ。農水省の出方を待って右往左往するのは情けない。

 ●JAでは、信用事業譲渡・代理店化の問題について地区別総代懇談会等でつないでおり、主にJAの経営構造を中心に説明している。営農・経済事業にとって信用事業は不可欠だ。また営農・生活活動の中で信用事業が成り立っている。荒川報告にあるように、信用事業と他の事業との間に壁をつくることでうまくいくのか。(和歌山県JA)
 ●清水 営農・生活活動の事業によって信用事業はじめ各事業が成り立っているというのはその通りだと思う。しかし、今までの営農指導事業で良いというわけにはいかない。普及員の活用も含め、営農指導員のレベルアップが必要だ。農業生産法人などでは、会計・税務指導などの機能発揮も求められている。農業の収入保険の議論もあり、農業共済を含めた議論が必要で、今後、中金と全農が連携して営農指導の強化策を考えていかなければならない。

 ●最後に、今回の問題は信用事業だけではなく今後のJAの総合事業のあり方が問われている問題だととらえることが重要ということが確認できたと思う。(白石正彦東京農大名誉教授)
(写真)報告者との意見交換

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