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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

【M・S】

2017.09.27 
【覚醒】教育・道徳的価値を軸に一覧へ

協同組合共済の新地平

 農協共済事業は1947(昭和22)年の農協法制定により導入可能となり、翌年には北海道で農協共済事業が開始され、1951年には全国共済農協連が設立され、さらに1954年の農協法改正で現在の農協共済事業の法的基盤が確立されました。このうち、農協法の枠組みで協同組合らしい共済事業モデルをパイオニア的に切り開いた北海道の農協共済運動を高く評価したいと思います。
 北海道士幌村農協の太田寬一組合長は、同農協が1954年6月に東京で全国共済農協連合会から表彰を受けた際に、その体験発表の中で農協運動における共済事業の意義を①教育的事業、②農村金融の改善と農家経済の長期安定にあることを強調しています。このようにわが国の協同組合共済運動の先駆者たちが教育的事業であり、農家経済の長期安定であることを自覚して、組合員と役職員が思いを一つにして取り組んできたことを、再評価して取り組む必要があります。
 2014年5月14日に規制改革会議農業ワーキング・グループは「農業改革に関する意見」をとりまとめ、その中で時代錯誤の"農協解体"を鮮明にし、農協共済に関わる点では「単協の行う共済事業については、単協は、全国共済農業協同組合連合会の統括の下で窓口・代理業を実施し契約に基づいた業務に応じた報酬を得る。」、「准組合員の事業利用は、正組合員の事業利用の2分の1を越えてはならない。」と明示しました。
 これに対して、在日米国商工会議所(ACCJ)意見書「共済等と金融庁監督下の保険会社の間に平等な競争環境の確立を」(2018年1月まで有効)では、「ACCJは、...安倍政権が初めて大規模な農協の改革を実行したことを高く評価している。...しかし、最終的な改革法案では、平等な競争環境の確立に上記の内容はいずれも規定されなかった。」と明示している点に警戒を緩めてはなりません。
 今年8月29日開催のJA共済をテーマにした新世紀JA研究会課題別セミナー(本紙8月30日号、9月10日号、本号に掲載)で明らかなように、共済事業の代理店化は協同組合の特性の変質につながり、JAグループの総力を結集して避けるべきである点が実態面から明確になりました。
 筆者は、その決め手として、N・バルウが1936年に彼の著書(Co-operative Insurance)のなかで営利保険と協同組合共済が根本的に異なるアイデンティティ(本質)として、組合員の

(1)物質的利益(損害を補填)に加えて
(2)教育的価値(損害の発生を予防する方法)、組織的価値(助け合い)
(3)道徳的意義(正直さ、他人への配慮)

を明示しており、外部環境が激変しても変えてはならない点だと考えます。すなわち、協同組合共済の営利保険に対する

(1)物質的利益の優位性は事業面での法制度の改正で独自性が薄くなりつつありますが、
(2)教育的・組織的価値と
(3)道徳的意義は営利保険に欠落している点であり、

この3つの特性を結びつけて相乗的に顕在化することが大きな課題と考えます。

 単位JAの共済事業は、
(1)物質的利益(損害を補填)に加えて
(2)教育的価値(損害の発生を予防する方法)、組織的価値(助け合い)、
(3)道徳的意義(正直さ、他人への配慮)を結びつけて、組合員・役職員による本格的な論議と実践が必要です。

 具体的には、単位JAは、

(1)管内の農作業事故を抑止する効果的な予防活動に取り組み、
(2)農業者がJAにおいて指定農業機械作業従事者・特定農作業従事者の労災保険特別加入ができる団体として整備すること、さらに、
(3)万一に備えて労災保険とJA共済(農作業中の傷害保障等)

を組み合わせて相乗的に加入率を高め、本格的に農業者との強い絆を持続できる戦略的共済運動を開拓すべきです。農作業事故死件数のみで2015年1年間に338件みられますが、2014年の農業就業人口比の労災保険加入率はわずか5.4%ときわめて貧弱です。JA共済の仕組みづくりから論議を開始するのではなく、地域の農作業事故予防活動を含め低コストで安心して万一のリスクに備える単位JA発の助け合いの仕組みづくり、労災保険加入運動、JA共済の仕組みづくりとその加入運動の有機的展開こそが、営利保険との根本的な相違です。

◇   ◆

 JA共済連は、日本の生協等の他分野の共済連と共にICMIF(国際協同組合保険連合) に加入し共に活動しています。その成果は、全世界の協同組合/相互扶助保険組織が総資産8兆3000億USドル、役職員数111万人、加入者数は約10億人に達し、保険料収入における市場シェアは生命保険分野、損保分野の合計で27.0%を占めています。ICMIFの活動で注目されるのは、2015年から5年間で5つの新興国(インド、フィリピン、スリランカ、ケニア、コロンビア)におけるマイクロ・インシュランスを開発し、普及させて、「500万世帯」(合計2500万人)の貧困層を対象に相互扶助型の保障の普及を支援する「5-5-5マイクロ保険戦略」に着手している点です。
 以上のようなローカルかつグローバルな協同組合共済運動の新地平の開拓を使命として、協同組合人、JA組合員・役職員が誇りをもって取り組むことを期待します。 

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