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シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣・東京大学名誉教授】

2017.10.29 
第33回 「焼き芋戦略」を中心にした農業6次産業化ビジネスの展開一覧へ

JAなめがた営農経済部長 金田富夫氏の講演・説明ならびに現地視察

 今回の「人材養成セミナー」では、講義と合せて現地視察・研究を通した研修も行うことにして、JAなめがたの「焼き芋戦略」を通して「農業の6次産業化」の実情を学ぶことにした。

 まず、金田富夫JAなめがた営農経済部長の考え方と講義の要点を紹介しておこう。
 「カンショを主力とするJAなめがた。カンショの消費の落ち込みや価格低下のなか、『焼き芋』に活路を見出した。スーパー店内での焼き芋販売を皮切りに、食品会社と連携した加工カンショの商品化、キュアリングと定温貯蔵による周年安定供給、主力3品種の栽培技術確立とリレー出荷体制、おいしい焼き方マニュアルの作成などを実施。科学的な裏付けによる分かりやすい販売戦略で消費者の信頼を勝ち得ている」。これが金田部長の講義要旨であるが、そのうえで現地・現場視察に受講生ならびに講師陣、事務局全員が参加した(但し、私は急な所用のため、残念ながら参加できなかったが、頂いた詳細な資料、写真等にもとづき紹介する)。

 1.セミナー参加者の意見と感想

 JAなめがたの「焼き芋戦略」の現地の紹介の前に、セミナー参加者の視察・研修の感想文が寄せられているので、まず、「焼き芋戦略」のどこに注目したかを知っておくためその紹介から始めたい。(かっこ内は出身JAを示す。但し氏名は省略させていただいた)。
(1)「実際に焼きイモの試食をさせてもらったのは良かった。できれば施設、倉庫等もくわしく見せて欲しかった」(JAサロマ)
(2)「生産者と共に進めた結果が成果を結んだものだが、生産者への説明と納得を得るには苦労したであろうと思う」(JAサロマ)
(3)「イモの品種の使い分けのタイミングが上手いと思った。最初は失敗しても、何度も挑戦する精神力がすごいと思った」(JA常総ひかり)
(4)「大変興味深い話だったのでもっと時間をかけ、詳しい説明を聞きたかった」(JA横浜)
(5)「イモ産地がさまざまな戦略・戦術を実施しているのが参考になった」(JA横浜)
(6)「消費者の立場になって商品開発に努めておられ、食味や旬を考慮して提供されていると思った」(JA花咲ふくい)
(7)「農協の特徴でもある主要農産物を伸ばすために、細かく問題点を分析し、解決した過程を見せてもらい感銘した。当農協は6次化が課題と思っているので大変参考になった」(JAとぴあ浜松)
(8)「国内だけでなく、アジアを中心とした海外でも勝負できる品目と施設やその質の高さに魅力を感じた。当JAの場合、どの品目をこのようにできるだろうかと考えさせられた」(JAとぴあ浜松)
(9)「JAとは思えない戦略、戦術に驚いた。JAと生産者の信頼で成りたっていると思う」(JAあいち海部)
(10)「焼き芋はまずかった。スケールが大きすぎると思う」(JAあいち海部)
(11)「市とJAが共同して産地と地域づくりをして、成功した事例に学ぶことができた。また、仲野隆三氏と同じく営農指導に携わる人間として棚谷組合長、金田部長をはじめとするJAなめがたの皆様を尊敬し目標としたいと考えた」(JA常総ひかり)
以上、視察の感想を寄せて下さった人材養成セミナー参加者の意見を先ず紹介したが、この感想をもとに、どのあたりに現地視察の焦点があったか判ったので、これらを参考にしつつJAなめがたの『焼き芋戦略と地域活性化への取り組み』について、要点をしぼって紹介することにしたい。

 2.「消費者・実需者のニーズの先取りを目指す焼き芋戦略と地域活性化の取り組み」 JAなめがた視察資料

 JAなめがたの概況(要点のみ)
【1】首都圏消費地へ70㎞と近く霞ケ浦と北浦に挟まれた半島状地形、湖岸は水田地帯、後背地が畑作地帯。年間60数品目の野菜を生産、1億円以上の売り上げの野菜が16品目、カンショ、レンコン、イチゴ、葉物が主力。
【2】組合員1万1245人(うち正組合員9151人)、職員数174人、販売高112.9億円(うち青果102.8億円)、安全・安心の農産物づくりを徹底、GAP、IPMへの取り組み、なめがたブランドの確立、農業6次産業化の推進、販売戦略5つの視点(情報力、商品力、機動力、組織力、企画力)の推進と徹底。
【3】かんしょをJA管内の主力基幹作目にするべく、(1)売り方の提案、すなわち焼き芋戦略の推進、(2)そのために貯蔵施設整備(キュアリング施設)による周年安定供給、(3)食味を重視した出荷体系の実践、(4)組織活動を通じた人づくり、(5)実需者、消費者への積極的な産地PR、を次々と推進した。
【4】顧客ニーズに対応した「カンショ販売戦略」の実践―1年365日こだわりの焼き芋を届けるために。なによりも時期別にすぐれた品種導入と貯蔵、出荷体系の確立を行った。品種として、紅優甘、紅こがね、紅まさりの3品種に確定し、生産、加工、販売の一貫した体制を整えた。(その上で次回以降に紹介するカンショを核とした農業の6次産業化のすばらしい展開をみせることになる)。

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