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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.11.20 
【意見交換】「系統の資本持合規制」見え隠れ一覧へ

・第12回 課題別セミナー意見交換(後半)
・協同組合での合理性明確に
・金融庁主導の監査に準備を

 第12回の課題別セミナーでは農林中金総合研究所理事研究員の高島浩氏が、「バーゼル規制の動向とJA信用事業について」、トーマツ監査法人JA対策室長の井上雅彦氏が、「一般事業会社における会計監査人選定・変更の実務」について講演しました(10月30日付参照)。それについて行なった意見交換の内容を紹介します。

【高島報告について】

◆協同組合での合理性明確に

 【福間】以前のセミナーで、農水省の金融調整課からダブルギアリング(金融機関同士の資本の持ち合い)規制問題について、バーゼルIIIのなかでいずれ表面化するという話があったが、この点についてどう考えればいいのか。また、協同組合金融として他の金融機関とまったく同じ考え方に立っていいのか。かつて、出資金は負債であるという国際会計基準の議論があり、この時は協同組合の主張が取り入れられて負債とはならなかった経緯がある。協同組合金融の独自性についてお聞きしたい。

 【高島】1点目のダブルギアリングについては、資本の意図的保有にあたるものだが、バーゼルIIIの中では、この議論はされていない。もう一つの、協同組合性をどう考えるかということでは、現にさまざまな金融機関があるなかで、その独自性をどのように考えるかということであるが、当局はできるだけ同じルールにしたいという意向が基本にある。したがって、例えば協同組合として相互支援制度がある中で、他の金融機関と同じリスクウエートで良いのかということがあり、その合理性をいかに説明していくかが重要になる。

 【宮永】バーゼルIIIのルール適用の時間軸との関連で、例えば劣後ローンについて、ある日突然資本から除外されるようなことが起こったり、出資金のリスクウエートが100から250に引き上げられるなかでダブルギアリング規制が見え隠れたりするという危機感がある。また、今後グローバル化が進む中で、いつまで国内基準というようなことを言っておられるのかお聞きしたい。

 【高島】出資金のリスクウエートが100から250に引き上げられることと、ダブルギアリングは別の話であって、バーゼルIIIの見直しの中で議論になっているわけではない。農水省のウェブサイトでも、告示で協同組合の性格を踏まえて、普通出資、後配出資、劣後ローンは除外する、つまりダブルギアリングの対象とはしないとしている。
 国内基準の見方については、一つは、国際的観点から日本の国内行はバーゼル基準に適合していないから何とかしろという意見が当然ある。一方で、アメリカの国内基準行はバーゼルIの段階にあり、バーゼルIIIの適用は大手行だけだ。また、ヨーロッパについては、バーゼルIIIの適用によって不都合が生じており、地域の金融機関の特性を踏まえたルールをつくるべきという議論がドイツなどを中心に起こっている。最終的には、金融システムと国益の関連をどうするかということになる。

 【佐藤】バーゼルIIIの経過措置のなかで、連合会に対する出資金のリスクウエートが250となっている。私としては、これは最大100と理解していたが、なぜ250になるのか。また、土地評価の差額金の段階的参入削減の考え方についてお聞きしたい。
 【高島】確かに、資産と自己資本の割合は100が原則であるが、例えば、出資金などについてはリスクが高く、担保がなくほぼ倒産状態にあるものを100で見るのは合理性がなく、資本から控除すべきということになる。こうしたことを総合的に評価して250ということになっている。また土地評価の差額金削減については、バーゼルIIIでは、自己資本の質と量を向上させることが狙われており、この点含み益は確かなものではないので削減していくことになっている。


【井上・戸津報告について】

◆金融庁主導の監査に準備を

 【白石・福間】監査法人を選定するにあたってJAの監事は必ず複数の監査法人から選ばなければいけないのか。また、JAでは選定するにあたって規程のようなものが必要なのか。

 【井上】一般事業会社の場合は、必ず複数の監査法人から監査人を選ぶ手続きを踏んでおり、実質的に取締役が実権を握っていても、形式的な発信者は監査役になっている。会計監査人を選ぶにあたって、規定のようなものは必要ないが、実質的な内容が求められる。
 JAの場合も、いろいろな実情があると思われるが、最低限の手続きは踏んでおいた方がよい。そうしなければ、後で金融庁から指摘を受ける。何か問題が起こった時にやられるのはみのり監査法人の方であり、後々のリスクを考えれば、必要とされることはやっておいた方が良い。

 【萬代】監査費用について、実態はどうなのか。農水省でも円滑な移行措置を講ずるとしており、農水省調査でも法外な監査費用はかからないとなっているが、実際のところの話を聞きたい。

 【井上】1県1JAのJAしまねについてはJA全中の皆さんとも議論をしている。一般論としては一定の条件、例えば内部統制の整備状況をクリアできれば、それほど大きな監査フィ-(手数料)をとられるようなことはない。公認会計士監査には一定のストーリーがあり、それにはまっていれば問題はない。
 JAしまねには11の事業本部があり、事務処理がそれぞれに違えば11倍の監査フィーが必要になるともいえるが、そうではなく、11の事業本部を一つとして見られる前提が欲しい。さもなければ、監査人の判断によって監査フィーは増えることになるかもしれない。

 【白石】農水省は公認会計士監査にあたっての円滑な移行措置を講ずるとしているが、最終的にはJAの自己責任である。そうした観点から、JA全体の状況はどうなっているのか。

 【井上】公認会計士監査移行について、意識改革が進んでいるところは準備が進んでいるが、全部のJAでそうした実態にあるとはいえない。これまでにやられた中央会監査と金融庁が監督する監査とは、見る視点がまったく違う。金融庁が主導する監査について、どういうところを見られるのかをしっかり研究して対応していかなければならない。これから1~1年半かけて、更なる準備を進めていく必要がある。

 【福間】みのり監査法人で全部対応できるようには思えないが、その辺りはどうか。

 【井上】JAのほかにも信連や大きな経済連も対象になるので、守備範囲は大変広い。みのり監査法人では、監査人50人体制で対応できるよう対策を進めている。

 【白石】今後、監査制度の変更に伴って、バーゼル規制の内容等も研究しておく必要がある。とくに、金融システムの変化に対応するには、ドイツを中心としたヨーロッパの監査制度の研究も必要だ。要は、事態の変化に対応できる必要条件の整備と、協同組合としてどう対応するかの十分条件の研究・検討が必要である。
(発言者は、新世紀JA研究会常任幹事・福間莞爾、有限監査法人トーマツJA支援室長・井上雅彦、JAはだの専務・宮永均、JA秋田しんせい常務・佐藤茂良、Jしまね前組合長・萬代宣雄、東京農大名誉教授・白石正彦の各氏)

※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。

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【意見交換】あらゆる選択肢検討(17.11.13)

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