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JAの活動:緊急連載-守られるのか? 農業と地域‐1県1JA構想

ガバナンス、営農指導、合併の成果―JAおきなわ(2)2017年12月1日

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田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授

◆ガバナンス体制
 
 全国支援を受けた手前、農水省や全中の指導で経営管理委員会制度が導入された。その下でのガバナンスの体制は三段階を経た。

 
【第一段階(支店長理事、2002年8月~)】
 当初の経営管理委員は29名、女性部、青年部を除けば旧農協から1名の組織代表(農業者)である。理事は23名、理事長、専務、管理・経済事業・共済事業・信用事業の各本部長(常務)が常勤、他の17名は支店長理事である。「健全」農協が主となって構成した常勤執行部を組織代表(経営管理委員、支店長理事)がチェックする態勢といえる。

 
【第二段階(地区事業本部、04年6月~)】
 5つ(郡)の地区事業本部制をとり、事業本部長は常務ポストとなった。地区事業本部制については賛否があったが、「組織2段、事業2段」の全国方針の下で信連・経済連が支所の廃止をした頃から、目が行き届かなくなり、単協経営が苦しくなったという過去の経験から、「やはり地区の取りまとめ機能が必要」ということになった。
 また支店長理事と地元選出理事が重複するのもおかしいと言うことで、支店長理事は廃され、理事は8名の本店役員と5名の地区事業本部長(常務)の計13名の体制になった。経営管理委員は39名に増員された。

 
【第三段階(地区本部、07年8月~)】
 地区事業本部制を実際に動かしてみると、地区事業本部を経由しないと支店に指揮命令が及ばない、地区事業本部長(常務)と本店役員の意見がかみ合わないといった内部統制上の問題が生じた。地区には取りまとめ機能や組合員対応を残しつつ、事業を持たないことにして、地区事業本部から「事業」を外した「地区本部」とし、それに伴って本部長も職員を充てることにした。
 こうして事業・指揮命令系統は本店―支店関係に純化した。理事は11名(現在の出身は信連6、経済連2、単協3)、経営管理委員は25名(女性部2、青壮年部1)となった。
 経営は少数の(主として連合会出身の)常勤理事、経営の監視は組合員・地域代表の経営管理委員会への純化、それぞれの人数の若干の減少、というのが大きな流れである。

 

◆経営管理委員制度の評価

 同委員会は、当初は「文句ばかり」「会議が二重三重になり組織決定が遅れる」と不評だった。しかしある経営管理委員は、「理事会が連合会出身者で固められると、現場の声を反映できない。委員は地元への説明責任があり、きちんと説明してくれることが大切」と言う。それがある程度満たされていくなかで、今日では委員会が理事会提案をひっくり返すことはなく、「理事会の暴走を防ぐうえで有効」と評価されている。経営管理委員は依然として地域代表色が強い。

 

◆基幹支店を軸に

ガバナンス、営農指導、合併の成果―JAおきなわ(2)_1 信用事業再構築計画のメスがいれられたが、それが一段落した2006年からは落ち着いている。現状では、基幹支店が52(うち島部が16)、その他に地域支店(信用共済の窓口)が若干ある。信用店舗115、購買店舗53(ほぼ基幹支店併設)、生活店舗27(子会社経営Aコープ20、ファミリーマートのコンビニ1、直営店が島部に6)、集出荷施設は84である。
 基幹支店は合併前のJAを基本型とし、主に信用・共済・購買事業を担い、組合員課や営農課を置くところもある。一般貸出(証書貸出)等の権限等をめぐり、S(5000万円以下、合併前の「健全」農協が主)からD(700万円以下、全て島部)まで5段階に分かれる。
 基幹支店は、地域営農ビジョンをたて、場所別収支計算の単位であり、その成績に応じて支店活性化資金が配分される(JA全体で2000万円)。支店運営委員会(女性部、青壮年部、市町村の産業課長等もメンバーに、経営管理委員も出席、年4回開催義務付け)、総代選出、女性部、青壮年部、も基幹支店単位である。「何をやるにしても基幹支店」とされる。合併前のJAは基幹支店としてサバイバルした。

 
 
◆営農指導体制
 
ガバナンス、営農指導、合併の成果―JAおきなわ(2)_2 5郡に地区営農センターが置かれる体制に変化はなかった。発足当初は、本島には北部・中部・南部の営農センターが本店の経済事業本部下におかれ、宮古・八重山の営農センターは支店直轄だった。地区事業本部制に移行した段階では、営農センターは地区事業本部(常務)の下に置かれ、地区本部制に移行してからも同様だった。それが2008年からは本島の3地区営農センターは本店直轄、宮古・八重山は遠隔地ということで地区本部直轄という当初の体制にもどった。しかしいずれも分荷権はもたない。
 宮古地区本部の例をみると、営農振興センターの下に農産部とさとうきび対策室(サトウキビは島の販売額の6割を占める)が置かれ、前者は野菜果樹とファーマーズ「あたらす」の出荷協議会を担当している。畜産振興センターも置かれている。
 現在の営農指導員は159名、地区別内訳は本店7名、宮古19名、八重山7名で、後は本島だが、なかでも南部が3割を占める。作目別には青果47%、花卉16%、畜産18%、さとうきび9%である。北部を中心に支店配属が5名いるが(島部)、その他は地区営農センター所属である。野菜・果樹の振興に力が入れられている。
 TACは14名、営農指導員OBの雇用で、地区営農センターに所属し、500万円以上の販売農家を訪問し、日報を義務付けている。

 

◆剰余金処分政策
 
 合併初年度は赤字のために無配当で、不満が強かった。次年度から10年物国債利子を参考に出資配当0.8%を行い、優先出資を募った2004年度からは1%(優先出資は1.2%)に引き上げ今日に至っている。
 破綻JAの組合員は減資されたので出資配当がない。そこで出資配当とほぼ同額の事業利用分量(利用高)配当を行うこととした。現状では、ほぼ総額2億円を貯金残高、貸出金利、生産資材、園芸販売高、畜産販売高で5等分して利用高配当している。両配当額を合わせると当期剰余金の23%に当たる。
 2010年に、「組合員・利用者の顧客満足度の向上」「JA顧客基盤の拡充」を目的として総合ポイント制を導入した。当初は信用共済にも付けていたが、2016年度から准組対策、次世代対策を考慮してファーマーズマーケット・購買店舗でのポイント獲得率をアップしている。現在の会員は17万人、計4000万円の付与になっている。

 

◆合併時を100として現在は
 
 (1)組合員は正組合員87.6、准組合員143.8で准組比率は63.6%、准組の出資割合は43.9%と高い。優先出資28%を差し引いた組合員出資では准組が61.7%を占め、合併時の減資がなお尾を引いている。2016年度から総代会に准組合員50名の傍聴席を設けたが、発言はなかった。
 (2)職員数は正職97.3、臨職(2016年次は常用的)219.6で、臨職は4割に達する。
 (3)販売品は146.2と健闘している。このうち買取販売が89億円14%を占める。買取販売は農家の販売リスクを軽減し、業者の一本釣りに対抗するうえで有効として、とくに青果物の買取販売に注力している。沖縄農業は今、さとうきびの生産増と畜産物価格の上昇、青果物の伸長で販売額も1000億円を越す状況にあり、それに伴い農協手数料も増え、農業事業利益(共管配賦前)も2013年以降プラスに転じている。
 (4)生産購買108.2に対して生活購買は303.1と伸張著しい。絶対額でも生活購買は生産購買の2倍弱である。
 (5)貯金額は134.6、貸出金は96.3である。貯貸率は47.3%から33.9%に落ちている。
 貸出の絶対額の減少もあるが、貯金の伸びがより大きい(合併時6000億円が直近の2017年9月には9000億円になり1兆円が視野に)。長期共済保有額は76.0である。
 (6)2016年度の経常利益17.4億円を100とすると、信用116.3、共済44.8、農業▲61.9、生活86.5、営農指導▲85.7である。信用事業と生活事業の健闘がめだつ。営農指導の赤字15億円を正組合員数で割ると一人当たり3万円弱で全国平均の2.5万円をうわまわる。

 
◆1県1JA化の成果をどうみるか
 
ガバナンス、営農指導、合併の成果―JAおきなわ(2)_3 第一に、合併前は都市部JAは「カネはあるが農業がない」、農村部・島部は「農業はあるがカネがない」のミスマッチがあったが、合併により全島的な投資が可能になった。サトウキビの機械・施設投資、サトウキビ・パイン・黒糖の加工施設、青果物の選果場やパッキングセンター、前述のファーマーズマーケットの全域展開等である。青壮年部長(58歳)は合併がなければ農業は衰退していたという。現在の販売額は畜産36%、サトウキビ32%、青果14%、ファーマーズマーケット12%で、後二者を合わせれば1/4を占める。
 ファーマーズマーケットは、地域的には人口の多い中部、南部が8つを占めるが、宮古、八重山にも各1あり、計11である。売り上げは70億円だが、やや伸び悩んでいるため、総合的直売所(カフェ・食堂・市民農園併設)、信用店舗併設型のミニファーマーズ、安全・安心対策のための営農指導員配置等を検討している。生産者会員は9000名にのぼり、部会会員1万人に匹敵する。
 第二に、島しょ対策である。投資はとくに島部に留意し、島部は合併効果を最も享受できた。大赤字だった離島の支店長を経験した女性は、離島では難しい人材確保が本島からの派遣で可能になったと強調する。県農林水産部長は、離島は担い手育成だけではダメで、人がいなければならず、JAがあるために離島でも安心して暮らせるとする。離島の店舗等は赤字が多いがライフライン店舗としての位置づけである。
 第三に、意思決定の迅速化である。合併前は単協間協議(地区組合長会議)、単協と連合会、連合会と中央会、全体組合長会議など何をするにも二重三重の会議に時間が割かれた。理事会の招集が容易になり、毎週月曜に役員会議を開き、決定は本支店を一本で結んで迅速に実施に移せる。
 しかし島しょ部を含め県全域に農協を残すことができたのが合併の最大の成果だろう。

 

【JAおきなわの概要】

・2002年4月1日28Jの合併
・組合員数13万6722人、うち准組合員63.6%
・経営管理委員25名、理事11名、監事7名
・出資額209.6億円(うち准組43.9%)
・販売品取扱額649億円
・貯金額8532億円、貯貸率33.9%

 

(関連記事)
破綻JAをどう救済するか JAおきなわ(1)(17.11.17)

 

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田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授のシリーズ【緊急連載-守られるのか? 農業と地域‐1県1JA構想】

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