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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

【K・F】

2017.12.14 
【覚醒】「排除」をアウフヘーベン 准組合員対策の本質(上)一覧へ

◆基本認識の確立を

 JAの准組合員の事業利用規制は、今次農協改革で残された最大の課題の一つです。周知のように、改正農協法は附則第51条3項で、「准組合員の事業利用制限は、政府が平成33年3月まで正組合員及び准組合員の事業利用状況並び改革の実施状況について調査を行い4月以降、その結果に基づき制限のあり方を検討する」としています。
 この問題について、JA全中の中家徹会長は、11月6日の日本記者クラブでの会見で、JAが過疎地で経営する移動購買車や給油所を例示し「(利用者は)ほとんど准組合員。地域住民のライフラインを守る(観点)から、規制はできない」(日本農業新聞)との考え方を示しました。
 このいわゆる地域インフラ論がJAグループの准組合員対策の考え方になっているようです。法改正にあたっての衆議院の農林水産委員会の付帯決議でも、「准組合員の利用の在り方の検討に当たっては、正組合員・准組合員の利用の実態などを適切に調査するとともに、地域のための重要なインフラとして農協が果たしている役割を十分踏まえること」となっており、参議院でも同様の決議が行われています。果たして准組合員問題についての付帯決議がわれわれの主張を実現するのに有効なものでしょうか。
 結論から言えば、この地域インフラ論は半世紀前の農協論であり、今の地域の実態からみればあまりにもかけ離れたもので、著しく説得性に欠けるものといって良いでしょう。確かに一部の山間僻地や離島などの地帯ではインフラが未整備で、JAはなくてはならない存在のところもあるでしょうが、今や大多数の地域では金融・保険会社や量販店・コンビニなどがひしめき合い、JAはなくてはならない存在ではありません。
 したがって、地域インフラ論は准組合員の事業利用規制にとって効果がないばかりか、インフラが整っている大多数の地域では規制をかけるという有力な根拠を与えるものといって良いでしょう。今のところ農水省の准組合員調査結果の内容は明らかにされていませんが、これまでの同省の説明を聞けば、JAの周囲にどのような同業者がいるのかの調査が行われていることは想像に難くなく、すでにその調査は終わっていると推測されます。
 准組合員問題については、農水省もJAも問題があると認識しながらも、長年にわたり放置してきた重要課題でした。とくにJA側の対応については、自らこの問題を取り上げれば職能組合か地域組合かの二者択一を迫られ、その結果は、准組合員を排除する職能組合論に軍配が上がるであろうことを恐れ、壊れ物に触るがごとき慎重な態度をとってきました。
 今回、全国的にJAの組合員のうち、准組合員数が正組合員数を上回るという状況をとらえ、一挙にこの問題の解決をはかるべく問題を提起してきたのが「規制改革会議」であり、その内容は准組合員の事業利用を正組合員の事業利用の半分以下に規制するという衝撃的なものでした。

 

◆農業振興の准主役

 このように、政権側から准組合員について具体策が提案されてきた以上、われわれは、この問題に正面から向き合わなければならないという基本認識がまず必要です。これまでJAは准組合員対応については、制度としての准組合員の存在・大義を主張し、JAにおける准組合員はその数の多寡によって問題とされるべきではないとの立場をとってきました。また、その対策は、准組合員はJAにとってのパートナーであり、組織・事業活動について分け隔てなく対応するというものです。
 いま、JAが全力を挙げて取り組んでいる「自己改革」でもこの姿勢を崩さず、従来路線を踏襲したままです。ですが、今回政府が打ち出した農協改革は制度としてのJAを否定しているのが特徴であり、とても准組合員制度に大義ありという従来路線の踏襲では、事態を解決することは不可能で、新たな准組合員対策が必要になっています。
 それでは、新たな准組合員対策とはどのようなものでしょうか。その内容とは、誤解を恐れずにいえば、准組合員を農と食を通じた農業振興の准主役に位置づけることではないかと考えられます。この考え方はJAの経営理念と考えられる「農と食を通じた豊かな地域社会の建設」という考えにも合致し、ここから事態を解決する糸口が見えてきます。少なくとも、「農協 准組合員制度の大義」(農文協発刊のブックレットの表題)などではなく、准組合員に大義を認めることこそがこの対策の基本でなければなりません。
 しかし、この考え方の確立の前にはJAの保守性という途方もなく高い壁がそびえ立っています。JAでは准組合員をパートナーなどと位置付けていますが、実のところは、正組合員の潜在意識には准組合員を自らの利害対立者とみなす「排除」の思想があります。
 この排除の思想は、JAに限らず農業者と消費者の間に横たわる伝統的なもので、その背景には、農業者には食の提供者であるという自負と、消費者は安易で安価な食を求める気まぐれな存在というぬぐいがたい不信感が存在しています。

 

◆正組合員の保守性

 さらに、戦後の自作農主義が地域におけるJAの排他性・保守性を増幅しています。ここに准組合員問題の所在があり、この准組合員「排除」の思想を「アウフヘーベン」する意識改革こそがこの問題解決の本質で、准組合員の問題は正組合員の問題と考える理由がここにあります。准組合員対応で最先端を行くJAはだの元組合長から、JAには「准組合員に庇を貸して母屋をとられる」意識があるとお話を伺ったことを思い出します。
 こうした排除の思想からくる、農業は農業者・農家だけが担うものという職能組合の考え方は、実はJAも農水省と同じであり、この問題の深刻さがあります。現に苦し紛れの准組合員対策で散見されるのは、この期に及んで出来もしない正組合員を増やすべきという意見や、またむやみに正組合員の資格水準を引き下げて正組合員の聖域を犯すなといった内向きの議論しか出されていません。
 この際、JAは正組合員が准組合員を排除する思想を乗り越えて、農業振興には准組合員の協力が必要なことを本音で訴えていくことが必要になっています。准組合員は正組合員の(元)子弟が多く、またそうでない人でもJAに協力的な存在だなどと喧伝しても何の意味もなく、准組合員はJAのことをそれほど真剣に考えているわけではありません。
 農業振興への応援を頼むのは、正組合員たる農業者・農家の方であり、准組合員はパートナーなどといった鷹揚で不遜ともいえる態度をとっている場合ではありません。しかも、農と食を結びつける存在の准組合員は、自らの組織メンバーとして存在しています。こうしたアプローチさえできなくて、何が協同組合間提携かと思えます。(つづく)

※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。

 

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