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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

【K・F】

2017.12.15 
【覚醒】共に農業支える存在 准組合員対策の本質(下)一覧へ

◆最大のアキレス腱

 准組合員の事業利用規制問題は、今回の農協法改正をめぐる議論で、中央会制度の廃止と引き換えに執行猶予とされたほどのJAにとって最大のアキレス腱です。いま再び、JA信用事業の代理店化と引き換えにこの問題を出されたらJAは打つ手なしという状況になるでしょう。JAが進める自己改革は単なるお題目であってはならず、及ばずながら准組合員対策の根本の具体策を考えることこそが自己改革の本質と言えるでしょう。
 話は変わりますが、今でこそJAでは女性や青年を正組合員にする一戸複数組合員が常識ですが、これは1986年のJA全中の総合審議会答申がその発端になっています。驚くべきことに、当時のJA・組合員の意識は戦前の家父長制の考えを引き継いだ一戸一組合員(一戸に一人の組合員)が常識であり、一戸複数組合員の考え方には相当の抵抗がありました。
 結果、複数組合員がJAで実現・定着するのには実に20年以上の歳月を要しています。一方で、その後の継続的な正組合員数の減少を見れば、86年の総合審議会答申がいかに重要なものであったかがよく分かり、この取り組みがなければJAはいま悲劇的な状況を迎えていたでしょうし、准組合員問題はもっと早く俎上にのぼっていたことでしょう。
 このようにみると、JAは自らの力で組織運営のあり方を変えることには極めて苦手な組織であることがよく分かります。しかも新たな准組合員対策は、一戸複数組合員の実現に比べればはるかに高いハードルを持っています。
 准組合員は食の面から農業を支える存在であり、正組合員の方から農業振興に協力してください、そのためには制限付き議決権を持っていただいて意見を聞き、一緒に農業振興に取り組もうなどという具体策は、誰しもが考えることですが、JA現場の反応は鈍く、対応はほとんど絶望的に近い状況にあります。ですが、何事も問題提起をしなければ事態を変えることはできません。
 制度に守られてきたJAは自らの力で事態を変えることをほとんどしてきませんでした。ひたすら政治力を頼り、制度を守ることに腐心してきました。だが、准組合員対策に限らず今回の農協改革は政権側から制度の変革を求めてきているもので、これまでのJAの対応では通用しないことはもはや明らかです。
 苦しくても、時間がかかってもJA自らの力で変革の案・新総合JAビジョンを提案し、将来展望を切り開いていくしか方法はありません。そうしなければ、JAは農業と協同組合の利益集団の域を超えることはできず、間断なく国民の批判にさらされることになります。
 産業としての農業の確立が叫ばれて久しいのですが、いずれの先進資本主義国でも国民総生産に占める農業生産額の割合は低く(1~1.5%程度)日本もその例外ではありません。

 

◆「2軸論」は無理

 准組合員制度は、組合員の資格を問わなかった戦前の産業組合の残滓を引きずった、第2次大戦後今日まで続くJAの根幹の仕組みです。JAはこの仕組みの解釈として、JAは職能組合と地域組合の両方の性格を持つという、いわゆる「2軸論」を持ち出して良いとこ取りの運営を続けてきましたが、もうこの理論で事態を解決することはできない状況に追い込まれました。
 しかし一方で、日本のJAの准組合員制度は、その成立経緯は別にして、結果として正組合員が准組合員と手を携えて農業という1.5%産業を支える仕組みとして有効なものとなる可能性が大いにあります。JAは国民の理解を得てその可能性にかけるべきではないでしょうか。「排除の思想」からは何も生まれません。
 准組合員問題と関連して准組合員が多く利用する信用・共済事業の位置づけについても考えておく必要があります。准組合員が多く利用し、正組合員にとっても重要な地位を占める信用・共済事業について、JAおよび農水省はその位置づけを明らかにしていません。100兆円を超えるJA貯金や300兆円におよぶ長期共済保有高をもつ信用・共済事業について、組合員の立場に立った位置づけがないことは不思議というほかありません。
 この背景にはJA、農水省ともにJAは農業振興を目的とする職能組合であるという建前の意識があり、営農・経済事業については、組合員にとって農業所得の向上という明確な位置づけがありますが、信用(貯金・住宅貸付等)や共済事業につてはその位置づけを回避してきました。
 正・准組合員一体となって農業振興に取り組む方策が将来ビジョンとして議論されれば、このことについても整理が必要になります。農業者は生産に携わるとともに、一方で生活者です。准組合員は農業振興に協力する者であるともにそのほとんどは生活者としての顔を持ちます。ですから、正組合員、准組合員とも農業振興に貢献する生活者の立場から信用・共済事業を位置づけることは可能です。それは、JAがもっぱら生活者としての顔を持つ信用組合や生協と一線を画す組織であるということを表明することでもあります。

 

◆将来検討の機会に

 いずれにしても、これまでに述べた准組合員対策はJA運営の将来方向を変える大きな問題を抱えており、とても平成33年3月までの事業利用制限再検討の時期に間に合うようなものではありません。ですが、JAは今回の農協改革を自らの組織の将来方向を考える絶好の機会にすることが重要です。組織の将来方向を考え、自らの立ち位置を明確にすることが、長い目で見れば最も有効な准組合員対策となるでしょう。

 

※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。

 

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