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JAの活動:緊急連載-守られるのか? 農業と地域‐1県1JA構想

福島県における数農協の合併(2)2018年1月30日

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田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授

◆JAふくしま未来の営農販売体制

 営農指導や販売体制はどの新JAをとっても旧JA単位に取り組まれており、合併による大きな変化はない。従ってJAごとに体制も異なることになる。
 JAふくしま未来の地区本部ごとの販売額順位を見ると、福島地区は桃・梨・リンゴ、伊達地区は桃・あんぽ柿・きゅうり、安達地区は米・畜産・きゅうり、そうま地区は米・畜産・野菜苗といったところで地区により主力作目が異なり、営農指導も地区本部単位になる。作目別部会・女性部・青年部・年金の友の会等の組合員組織も地区本部単位であり、新単協レベルではその連絡協議会をつくっている。
 営農部門は要員を減らさないことが合併の条件だった。専任の営農指導員138名は各地区本部に所属する(そうま地区が復興対策もあり最多で45名、最小は安達地区の18名)。そのほか本店営農部に米穀、園芸、畜産、直販の課がおかれ、計28名(最多は園芸の16名)が兼任で配置されている。
 担い手支援(TAC)担当者は支援目的(巡回訪問)や訪問先の選定基準は統一しているが、その配置場所・人数は福島本部は営農センター5名、伊達地区は営農センター7名・農業振興課1名・指導販売課1名、安達地区は農業振興課4名、そうま地区も農業振興課4名と微妙に異なる。TACの実態は経営指導まではいかず、御用聞き、情報のつなぎ、税務記帳代行である。
 販売については、箱のデザインは統一しているが、前述のように分荷権は地区本部がもっている。これまでの市場とのつきあいがあり、また果実は必ずしもロットが大きければ良いというものでもないからである。最盛期の桃などは各営農センターごとの方が対応しやすい面もある。共販体制も福島地区はプール計算しているが、伊達地区は5つの共選場ごとの計算になっている。
 米は4割を直接販売(直売所の米コーナー、米屋)しており、本店指示が強まっている。園芸直販も5億円になる。直売所に力を入れ、全部で12カ所、30億円に達する。農協としては部会(共販)も直売所(部会組織の一つ)も両方とも大切と位置付けている。小さい農家が昔は売れずに捨てていたものを直売所に出荷して生きがいを感じているし、直売所で5千万円を売りあげる椎茸農家もいる。利用客は延べ180万人で年々増えている。
 自己改革の柱として「2・5・10運動」(販売力2%アップ、コスト5%削減で農業所得10%増)を掲げ、直販強化、オリジナル肥料作成、出荷段ボール統一等に取り組んでいる
 旧JA新ふくしまの時代から全水田・果樹園の全筆放射能汚染調査にとりくむなど徹底し、また風評被害の払拭に全力をあげてきた。
 直接の被災地であるそうま地区は大震災前には100億円の販売額があったが、現在は30億円台に減っている。水稲は主食米と飼料米と半々だが、飼料米助成がなくなると主食用米にもどるとして、業者は業務用に使いたい意向もある。また農業を人に任せたい者が多く、大規模経営の出現もみられる。

 

◆JA福島さくらの営農販売体制

 たむら地区本部は4つの営農センター、いわき地区本部は6つの営農経済センターをもつが、郡山地区は営農経済センターを置かず、営農指導も13の総合支店を拠点としている。理由は営農指導には繁閑があるので、空いた時は信用共済の仕事をしてもらうためである。両方式の長短を検討中である
 営農指導員は56名、TACは48名で専任は2名のみ、「営農指導員みんながTACの気持ちで」で仕事をする体制である。両者の配置場所は、郡山地区は総合支店、たむら・いわきは地区本部2名のほかは営農センター、ふたば地区は地区本部と分かれる。
 分荷権は全て本店がもつ。米の比重が4割と相対的に高く、かつ買取販売が8割に達することも反映していよう。販売先は東京・関西の卸売業者である。全農出荷に対して1俵1,300円高になっている。他品目は全農経由である。また直売所に注力しており、売り上げは12%を占める。
 ふたば地区ではまず農業施設を行政が建設し農協が運営することにしているが、農業をやる者が思った以上に復帰していないのが悩みである。

 

◆剰余金処分政策

 この点は各単協の独自政策になる。出資配当はJAふくしま未来とJA福島さくら、そして非合併のJA東西しらかわが2%で、その他は1%である。
 JAふくしま未来では、合併前はJA伊達みらいが出資配当7%で、事業利用分量配当も行っていた。その他のJAは1~2%のみだった。旧JA伊達みらいは内部留保よりも組合員還元に注力していた。それが合併により出資配当2%のみになったが、組合員からの反発はなかった。前回に述べた合併時の財務調整で出資金追加がなされていたためである。
 2%という水準は「合併ご祝儀」の意味合いもある。今後は事業利用分量配当を行えるか検討中である。
 総合ポイント制にも独自の位置づけをしている。購買等にはポイントではなく価格引下げで対応すべきだし、住宅ローンを借りた人は返せば農協との付き合いは終わりになってしまう。それに対して、定期貯金、年金受取、直売所利用等の長い付き合いのところでポイントランクをアップして直売所利用者等の囲い込みに活かし、アクティブメンバーシップを固めて准組合員対策にしつつ、直売所の売り上げ増を出荷者の所得増につなげようとしている。
 JA福島さくらでは、合併前はJA郡山市、いわき市が2%、JAたむらとJAいわき中央が1%、JAふたばは資本注入との関係から配当は不可能だったが、合併直前は2%の配当をしていた。JA郡山市でも不良債権問題時には1%に下げ、それが解決してからは2%に復した。その水準が組合員の頭にあるため2%水準となった。「合併して出資配当を下げるわけにはいかない」というのっぴきならぬ事情でもある。総合ポイント制は合併前からJA郡山市で取り入れている。
 JA福島さくらは事業利用分量配当を行っている県下唯一のJAでもある。配当基準は米出荷30kg当たり50円で、米どころとしての対応である。
 剰余金全体に占める配当金の割合はJAふくしま未来16%、JA福島さくら11%、JA会津よつば12%である。

 

◆合併の効果と課題

 福島県における農協合併は、機が熟してのそれというよりは、大震災で外部から加速化された合併であり、それだけに常勤理事を配しての地区本部制の採用など、力のある旧JAへの配慮を厚くせざるをえず、営農指導は旧JA単位であり、合併効果も直ちには出しにくい
 また福島県全体としてとくに米・牛肉の風評被害を払拭し切れておらず、浜通りの旧JAでは原発事故からの復旧が進まず、住民や農業者の帰還も進まないことから回復が遅れている。中央会として地域差・標高差を利用したリレー出荷や地域間交流のメリットを出したいとしているが、容易ではない。
 そのなかでJAふくしま未来では、直売所では6次化商品を中心に地区を超えた商品交流を図り、全店舗での統一イベントを行う(直売所ネットワーク)、オリジナル肥料8品目の販売、出荷段ボールの統一などを「自己改革」のテーマとして追求している。また2017年5月の復興対策室(専任3名)の設置、そうま地区における2016年4月の小高総合支店の再開、2017年4月の山木屋支店の再開等、合併JAとして被災地支援に力を入れている。将来的には信用共済事業の高位平準化、管理職の地区横断的交流を課題としている。
 またバーゼルIII(普通株や内部留保など中核的自己資本の比率7%以上、2019年から全面適用)のクリアは、合併しなければギリギリだったとしている(単体自己資本比率13.3%、JA福島さくら13.7%、JA会津よつば16.7%、JA夢みなみ14.4%)。
 JA福島さくらでは、新たな大型の直売所建設への取組み、磐越自動車道沿いの合併を活かしていわきの魚を郡山等の直売所で販売するなどを計画している。前述のように被災地のふたば地区本部は5つの支店が域外にサポートセンターを設けるなど厳しい状況にあるが、本店には代表理事復興対策本部長の下に復興対策室(復興推進課・損害賠償対策課)が置かれている。同JAは福祉・介護・医療サービスでも全国トップクラスの事業量を誇り、新たな事業として郡山地区グループホーム、たむら地区といわき地区でグループホームと歯科診療所の開設・機能充実等を新たに行っている
 JA福島みらいとして直面する課題は山積している。第一に、原発事故からの復旧が進まず、住民の帰還も遅れているなかで、地域の農業と生活をどう支え事業回復を図るか。第二に、信用・共済事業の収益が落ち、貯金額に対して0.408%の代理店手数料が示されるなかで、少なくとも当面はさらなる合併を考えずにどう切り抜けていくのか。第三に、経済事業が地区本部ごとに展開しているなかで、公認会計士監査に備えて内部統制の整備、電算処理や事務手続きを統一化する必要がある。併せて作目・施設が多いなかで減損会計をまぬがれる工夫が必要である。第一の点を除いては1県1JAと共通する課題である。

(関連記事)
福島県における数農協の合併(1)(18.01.14)

 

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田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授のシリーズ【緊急連載-守られるのか? 農業と地域‐1県1JA構想】

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