JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2018.03.15 
「貯保」の積立金は十分 JAバンクシステムが機能【榎本浩巳・農林中央金庫JAバンク経営指導部長】一覧へ

榎本浩巳・農林中央金庫JAバンク経営指導部長 「農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律」(以下、再編強化法)に基づき策定されているJAバンク基本方針に基づき、JAバンクは、JA・信連・農林中金が一体的に取り組む仕組みであるJAバンクシステムを構築している。このシステムは、JAバンクの信頼性の確保に向けた「破綻未然防止システム」と金融サービス提供の充実・強化を目指す「一体的事業運営」の2つの柱で運営されている。
 再編強化法上、農林中金には指導権限が付与されている。破綻未然防止の取り組みにおいて、農林中金はJAバンク基本方針に基づいてJAへ必要な指導を実施するとともに、経営管理委員会の下に信連・JAの代表者からなる「JAバンク中央本部」を設置し、JAバンクシステムを運営している。
 JAバンク基本方針に基づき、JAは経営管理資料や体制整備状況等を農林中金に報告し、農林中金はそれらを基に、JAの経営状況が一定の基準に該当した場合に早め早めの改善指導を行う。必要が生じれば、前提条件を充足した上で、指定支援法人(ジェイエイバンク支援協会)による資本注入等の支援が行われる。なお、その支援財源はJAバンク支援基金として、平成29年3月末時点で1707億円の残高がある。
 県段階でも、信連が「JAバンク県本部」を設置し、JAバンク基本方針に基づいて管内JAを指導する。また、前述の「JAバンク中央本部」の会議体である「JAバンク中央本部委員会」には、信連・JAの代表者が各組織、地区・県域への説明責任を負って委員会に参画している他、JA・信連・農林中金は指定支援法人による支援の財源を協力して拠出し、支援実行の際は対象JAへ経営の合理化や計画策定を求める等、モラルハザード防止に向けた相互牽制の仕組みもJAバンクシステム内に備えている。
 こうした農協系統独自のセーフティネットと、公的なセーフティネットである貯金保険の仕組みで全体のセーフティネットが構築されている。貯金保険は全国の組合が貯金保険料を貯金保険機構に納付することにより、万一、組合が破綻し、貯金等の払い出しができなくなった場合などに、貯金保険機構が一定額の保険金を支払う等により貯金者を保護し、信用秩序の維持を図る制度である。

 

◆10年余り支援なし

 貯金保険においては、平成12年頃より農漁協への支援が相次いだが、平成14年発生の大原町農協(岡山県)問題への支援以降は、貯金保険による支援は発生しておらず、貯金保険機構の責任準備金は増加している。これはJAバンクシステムの運営が奏功し、現在はJAの経営問題は個別対応に取り組む有視界のステージにあるため。JAバンクシステムの要であるJAバンク基本方針はこれまでも不断の見直しを行ってきており、今後も必要な改正措置が行われる予定。
 また、銀行業態等のセーフティネットの制度である預金保険においても、過去に銀行等の経営不振が相次ぎ、その支援に責任準備金が使用されたものの、現状では責任準備金は回復し、準備金残高は増加傾向にある。
 預金保険では、北海道拓殖銀行や日本長期信用銀行、日本債券信用銀行などの大型破綻が相次いだことを受け、責任準備金を回復するために、平成8年度には0・084%の料率とされたものの、その後、平成27年度、29年度には引下げが行われ、現在は0・037%の料率となっている。一方、貯金保険では、平成8年度の0・030%の料率から、平成14年度に0・018%、平成16年度に0・015%へ引下げが行われて以降、現在に至るまで0・015%の料率が継続されている。
 預金保険機構と貯金保険機構の責任準備金を比較すると、預金保険機構においては、平成28年度末の責任準備金は約3兆円あり、預金量(平成28年度平残)のうちの被保険預金約1000兆円に対しては0・285%の割合。また、預金保険機構の掲げている責任準備金の目標額は平成33年度で5兆円規模とされている。
 一方、貯金保険機構においては、平成28年度末の責任準備金は約4000億円あり、貯金量(平成28年度平残)のうちの被保険貯金約95兆円に対しては0・392%の割合。農協系統では貯金保険機構とは別に、前述のジェイエイバンク支援協会が運営するJAバンク支援基金等、独自のセーフティネットがあることから、実質的な同割合は更に高いものになる。
 先の農協法改正では、中央会制度の変更や、公認会計士監査の受監義務が盛り込まれた。特に公認会計士監査に向けては、JAは公認会計士監査受監に対して万全の準備を整えるべく、内部統制の整備に取り組んでいるところである。
 また、前述のとおり、信用事業におけるJAの経営上のリスクは個別対応に取り組む有視界のステージに入っているが、農協法改正に基づく中央会制度の変更を踏まえ、信用事業以外のリスクに対しても引き続き適切に対応してJAの経営の健全性が維持されるよう、関係団体間で目下検討が行われている。

 

◆保険料水準の検討も

 こうした取り巻く環境の変化はあるが、これを踏まえて適時、JAバンクでは所要の制度改正を講じており、今後も破綻未然防止策やセーフティネットは有効に機能していくことから、貯金保険料のあるべき水準について今一度の検討が必要である。

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

 

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

(関連記事)
役割果たした貯金保険機構【萬代宣雄・JAしまね前代表理事組合長】(18.03.15)
【意見交換】JA経営の健全性担保に(18.03.15)

一覧はこちら


このページの先頭へ

このページの先頭へ