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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2018.04.05 
許可制から認定制へ 市場間の格差拡大も【野上昭雄・JA常陸代表理事会長】一覧へ

・生産農家の所得向上を第一に ― 卸売市場法の改正とJAの対応 ―

 卸売市場法の改正案が、今国会に提出されています。食品の流通環境の変化に対応した効率的な仕組みに変えることを目的に、その核となっている卸売市場に対するさまざまな規制を緩和し、活性化しようというものですが、急な改革には特に出荷者であるJAに大きなとまどいがあります。新世紀JA研究会は、3月に開いた第17回課題別セミナーで卸売市場法改正を取り上げました。

野上昭雄・JA常陸代表理事会長 1923年に中央卸売市場法が制定されて以降、卸売市場が果たしてきた役割は集荷面では国産青果物の卸売市場経由率80%以上を占めているなど、分荷、価格形成、代金決済等の調整機能は食品流通の中で大変重要な役割を担っており、国民への食料安定供給に大きく貢献してきました。
 現在の卸売市場法も生鮮食料品の流通・取引の円滑化、価格の安定かつ統一的な価格形成を行い、農家の生産意欲を高めると共に国民生活の安定に資することを目的に制定されています。

(写真)野上昭雄・JA常陸代表理事会長

 

◆「地方」の民営化進む

 しかしながら、今国会では卸売市場法の改正などを含む農業関連9法案が提出されており、2018年度予算が3月にも成立すれば、4月以降審議が本格化し、政府は6月20日までの会期内に成立を目指しています。
 現行の卸売市場法では中央卸売市場を食品流通の中核に位置づけ、国は都道府県や人口20万人以上の市に限って開設を「認可」し、参入を制限してきました。今回の卸売市場改正案では「認可制」から開設者の制限を設けず、国が定める基本方針に適合する要件を満たす場合に認定する「認定制」へと変更することとしています。
 それ以外の卸売市場は「地方卸売市場」として都道府県が認定することとなり、中央卸売市場と地方卸売市場が規模や品目数によって区分けされます。このため大きな地方市場が中央市場になったり、小さな中央市場が地方市場となったりすることも考えられます。
 国としては、中央市場と地方市場の取引規制にほとんど差をつけない方向で進めているとのことですが、従来の卸売市場法と大きく異なるのは「受託拒否の禁止」の維持については引き続き中央市場のみであり、地方市場は任意で「受託拒否禁止」を入れることが出来ることです。また、地方卸売市場は開設者になっている市・町の財政環境が年々厳しくなっているため全国の地方卸売市場は民営化に向け大きく変化していくと思われます。
 「第三者販売の原則禁止」については一律規制せず、卸売市場ごとに定めるとしていますが、廃止ということになれば市場と大手量販店との直接取引が拡大し、仲卸を介した取引がなくなる懸念があります。価格についても大手量販店との交渉で言い値となる恐れがあり、相場の乱高下が起こる可能性もあります。
 さらに、市場も仲卸も自ら荷を引いて販売することになり、市場と仲卸の垣根がなくなって荷の取り合いになることも考えられます。現在でも第三者販売によって産地から大手量販店との直接取引も行われていますが、こういった取引形態はさらに拡大し、大手量販店に荷が集中し、中小スーパー、八百屋等がどのようになるのか心配されます。

 

◆値決め販売主流に

JA常陸 平成29年度販売先別実績 では、卸売市場法改正に伴って食品流通がどのような変化が考えられるか。まず、市場側は産地直接買い付けとなり受託販売から買い付け販売へと移行し、セリがなくなり、相対取引が加速して市場間競争が進み、市場間の格差が広がっていくことが考えられます。仲卸は市場との間で競争が激化し、生き残りをかけて仲卸同士での統合が進み、大手量販店は、量販店バイヤーが産地との直接契約に走り、工業製品同様の値決め契約が主となることが予想されます。
 以上の現行の卸売市場法からの改正に伴い農業者やJAへの直接的な影響を考えると、まず販売力の弱い市場に荷が集まらず、一部の市場に集中することで価格が安定しないことがあげられます。次にセリの機能が失われてしまった場合は、値決め販売が主流となることや、産地契約・産地開拓が進み、企業間の争奪戦が始まる恐れがあります。また、大規模産地と小規模産地との格差、市場手数料の自由化の進行、農業経営の企業化や農家の仲卸等への直接販売の進行などの問題が考えられます。

(グラフをクリックすると大きなグラフが表示されます)

 

◆風評払拭の助けに

 茨城県県北の11市町村を管内に抱えるJA常陸管内でも市場出荷は青果物販売流通上、大きなウエートを占めており、産地の形成及び生産者にとっても統一規格で出荷生産物の全量取り扱いは大きなメリットになっています。また、直荷引き禁止や商物一致の原則、第三者販売の原則禁止などについては地域、市場、量販店へ大きな影響が予想されます。産地並びに生産者へ直接不利益となる内容ではありませんが、注視していく必要があります。
 最後に、茨城県県北の農産物は過去には1999年にJCOによる臨界事故の発生で風評被害を受け、また2011年の東日本大震災の影響による東京電力福島第一原発での爆発事故による農産物の出荷停止が、一部農産物ではあるものの現在も続いています。生産者が手塩にかけて育ててきた農産物が言われなき風評被害による影響を受けて翻弄されてきました。
 その間の大変厳しい状況を乗り越えられたのは、市場側からの適切な情報やアドバイス等があったからこそであると考えています。今回の卸売市場法の改正については生産農家の所得向上が図られると共に、消費者にとってもメリットが感じられるような改正であるよう切に願い、今後の法案の内容について卸売市場と情報を共有していく必要があると考えます。

 

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

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