JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2018.04.09 
市場淘汰・再編の恐れ 食料安定供給に不安も【阿部裕幸・JA邑楽館林常務理事】一覧へ

 卸売市場法の改正案が、今国会に提出されています。食品の流通環境の変化に対応した効率的な仕組みに変えることを目的に、その核となっている卸売市場に対するさまざまな規制を緩和し、活性化しようというものですが、急な改革には特に出荷者であるJAに大きなとまどいがあります。新世紀JA研究会は、3月に開いた第17回課題別セミナーで卸売市場法改正を取り上げました。

◆有利な立地条件で

阿部裕幸・JA邑楽館林常務理事 JA邑楽館林(平成21年3月群馬板倉、西邑楽、館林市の3農協による合併)は群馬県の南東端に位置し、北は栃木県、南は埼玉県、東は茨城県に隣接しています。関東地域全体からみるとほぼ中央に位置し、利根川、渡良瀬川に挟まれた肥沃な優良農地を数多く抱える平坦地です。
 平均気温は14.9度、年間降水量は1184mlで12月~2月は5度以下の低温が続き、この期間の降水量は35㍉程度で晴天日が多く、古くから野菜・米麦が盛んな地域です。また東北自動車道館林ICを有し、首都圏まで約60kmと有利な立地条件に恵まれ、京浜市場を中心に全国的な販売が行われています。

(写真)阿部裕幸・JA邑楽館林常務理事

 

◆キュウリ50億円超

 JAの農畜産物の年間販売高(平成28年度実績)は約162億円で、園芸100億円、米麦37億円、畜産13億円、直売所12億円です。市場流通を基本とする野菜の販売高は農業生産額の62%を占めています。主な品目はキュウリ、ナス、白菜、イチゴ、ニガウリ、トマトで約20品目の野菜が栽培され、年間の出荷体制が整備運営されています。特に施設キュウリは昭和40年前半にビニールハウスの普及に伴い、有利な立地条件を背景に急速な発展を遂げました。
 当時の産地形態は各地域に農事組合、ハウス研究会などが多数存在し、各組織が独自のルートで市場に出荷していましたが、50年代半ばに管内野菜生産の95%以上がJA出荷となり、共販体制が確立されました。現在の組織はJA邑楽館林青果センター出荷組合連絡協議会を中核に、28年度でキュウリ部会570名・出荷数量1万7796t・販売高51億7000万円(市場手数料・運賃控除後)の最大の部会として活動しています。
 JA自己改革に掲げた「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」の具体的な取り組みとして、当JAでは経営刷新3か年計画第2年次で「農業ビジョン」を作成し1500万円以上の農業収入を目指す農家をA農家群として位置づけ、事例のひとつとして施設園芸の維持に止まらず、露地野菜の振興策として、冬場のキャベツ40ha、レタス13haの産地化を推進しました。さらに、面積拡大を計画し「多様な農業人の育成・支援」を行っています。

 

◆市場販売は88%に

 当JAは、北は北海道、南は大阪まで約50社の卸売市場に青果物を販売しており、青果物販売における市場販売比率は88%に達します。都市近郊型農業でキュウリの販売高が全体の50%を占める産地として、卸売市場は極めて重要な販売先です。今まで市場が果たしてきた集荷・分荷、価格形成、代金決済などの機能は原則的に堅持されなければなりません。
 また、最近の市場は「売り手市場」から「買い手市場」となっており、天候不順など、よほどのことがない限り市況が上がることはありません。言い換えれば消費動向が変化し個性化、多様化が進み、同じ品目の中から特定の品物を選ぶ傾向にあります。必然的に売れない商品が増加して市況の低下を招いているのが現状です。食品は「安全・安心」を基本に置き、本来持っている特性と機能を充実させるための栽培を評価するべきだと考えます。 

 

◆狭まる市場選択肢

 市場法では、卸売市場内に現物搬入し取引を行うことが原則でした。これは品質や規格の統一が難しく貯蔵性がないといった生鮮食料品の特性に由来するもので、取引形態は「せり」であり、それに伴う受託集荷・委託販売が原則ですが、食品の鮮度保持化が進み、取引形態が多様化し、買付集荷や相対取引が積極的に展開されることになりました。
 産地からスーパーに直接送ることが可能となり、物流コストの削減や鮮度保持、確定数量による安定供給などメリットがある反面、市場は代金回収が優先業務となり、本来持つ価格形成機能が脆弱化し、資本力を持つ大型量販店や巨大スーパーが利益確保による有利な価格設定をする懸念があります。
 委託手数料の自由化については、野菜8.5%、果実7%の既存手数料に変化がないように思えますが、今後については市場の企画力や提案力といった能力の差が、市場の淘汰や再編を加速化する可能性があります。一定の市場が残った後、手数料が一様に高く設定された場合、産地は市場の選択肢が狭まり、広域的な販売展開が困難になる恐れがあります。
 産地において、生産者からの販売手数料は2~3%であり、JAによっては赤字運営を余儀なくされています。市場もスーパーも資本力に勝る巨大組織による価格支配力が集中した時、国民に対し食料の安定供給と適正価格が維持できなくなるような改革は避けるべきです。

 

◆農家所得向上が前提

 市場法の改正の前提は、農家所得の向上が目的であったはず。当JAは出荷した2日後には通帳に振り込みが完了します。より迅速に精算処理することで生産者との信頼関係を築いてきました。産地も生産者の所得増大に努力をしています。時代の変化によって制度の改革は必要ですが、本来の姿に戻った議論を進めてもらいたいと思います。

 

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

一覧はこちら


このページの先頭へ

このページの先頭へ