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シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣・東京大学名誉教授】

2018.04.28 
第54回 第16回全国農林水産物直売サミット 愛媛県下直売所サミットの現地視察を通じて考えた直売所の課題一覧へ

 直売所サミットをしめくくる行事として最終日は4コースに分かれてサミット参加者のほとんどが現地視察と意見交換の場に参加した。私は中予コースの(1)道の駅「八幡浜みなっと」(八幡浜市)、(2)JA愛媛たいき たいき産直市「愛たい菜」(大洲市)、(3)道の駅「内子フレッシュパークからり」(内子町)、(4)ファーマーズマーケット「いよっこら」(伊予市)、(5)JAえひめ中央「太陽市(おひさまいち)」(松山市)に参加した。
 中予コースを選んだ理由は「愛たい菜」の運営をしているJA愛媛たいきの梶谷組合長と旧知の仲であったこと(しかし、残念なことに梶谷組合長は去年お亡くなりになっていた)、いま一つ内子町では、私はかつて30余年前に内子農民塾の塾長をしていた、という関係にあったので、その発展を見てみたいと考えていたからである。

 

1.八幡浜みなっと「どーや市場」

 ここの施設は「みなと交流館」が運営母体となっており、八幡浜港の近くに市民交流広場を作り、その一面に魚介類を中心に取り扱う「どーや市場」や柑橘類を中心に扱う「アゴラマルシェ」さらには「どーや食堂」「パン工房」あるいはカフェテラスなどが半円型の広場、駐車場を囲んで立地している。
 いわば八幡浜市民がここに来れば、多彩な食品類が揃うだけでなく、休養もできる複合施設になっている。私は体調を崩し「どーや市場」など視察はできず、カフェテラスで紅茶を飲み休養せざるをえなかったので、魚の取引などについての考察はできなかった。申し訳ない。なお、この「どーや市場」の去年の売上額は8億4790万円で増加傾向にあると聞いている。

 

2.大洲市「愛たい菜(あいたいな)」

 「愛たい菜」はさきにふれたようにJA愛媛たいきが運営する農産物直売所である。この直売所の開設以前から私は旧知のJA愛媛たいきの梶谷組合長から色々と相談を受けるだけでなく、3度にわたって管内各地で(特に中山間地域で)講演も行ったことがある。その中でJAの活動路線一般とは別に直売所の開設・運営について(1)直売所を成功させるには女性と高齢者を組織し元気を出させる方針を堅持すること、(2)中・高校生を色々な方法で組織し将来の地域の担い手に育てていくこと、(3)学校給食を徹底して実施すること、そのための多彩な地元産素材を作り供給すること、(4)直売所では米・野菜・果実・肉類などの素材を供給するだけでなく、女性、特に高齢女性の経験を活かした伝統的加工食品を多彩にすること、(5)そのためには性能の高い冷蔵・冷凍施設を整備すること、などを提案した記憶があるが、梶谷組合長はそれらの提案を受け入れてくれたようで、直売所をくまなく視察し、店長からの説明もいただいたが、いずれも充実していると感慨にふけった次第であった。訪ねた時期が2月初旬であったので、これが3~5月の春になると山菜やタケノコ、キノコなど中山間地域の品々でにぎわうという説明であった。
 そして「愛たい菜」の基本理念は次の3つで、梶谷組合長時代から堅持しているとのことであった。(1)地域の食にかかわる発信基地として広域から集客可能な直売所を目指す、(2)地域に点在する全ての「食財」を集め、販売する拠点を目指す、(3)多様な農業者が出荷でき、利益を得ることができる直売所を目指す。
 さらにお客様への3つの約束を次のように高らかに掲げていた。
(1)<安心品質> お客様に安心していただけるものしか並べません!(農薬使用基準など法令遵守、栽培履歴の記帳取り組み)
(2)<安心価格> お客様が安心してお買い求めいただける価格で販売します!(適正価格の設定、消費者・生産者共にメリットのある価格)。
(3)<安心食文化> 地域の食文化を大切にした商品をお届けします!(加工食品も可能な限り地元産の材料を使用)。
 こうした路線を反映してか、28年度の販売高11億4307万円のうち、野菜類40%、加工食品31%、果物8%、花卉6%、穀物3%というように加工食品の比率が非常に高くなっている。これは、女性とりわけ高齢女性の皆さんの経験と技能が生み出したものではないかと痛切に感じた。
 なお、学校給食との関係については、給食部会を「愛たい菜」に立ち上げ(平成24年9月1日)、これまで多彩な給食材料を供給してきただけでなく(郷土料理や旬の食材を重視、拡充した冷蔵・冷凍施設のフル活用)、いまでは病院、福祉施設などへの納品拡大をはかり、「愛たい菜」が拠点となって、地産・地消・地食の拠点となるよう新たな展望も描いていた。

 

3.内子フレッシュパークからり

 私が、中予コースを選んだいまひとつの理由は内子町を訪ねてみたいという想いにかられたからでもあった。その理由とは、いまから34年前に、内子町の農村青年たちと町長に要望されて、内子塾という農民塾の塾長をしていたからである。内子町は作家の大江健三郎の出身地でもあり(私とは東京大学時代に学部は異なったが同学年だった)、内子座という歌舞伎もできる古色蒼然とした立派な建物もあるのはすでに知っていたが、この町では絵ローソクや伊予和紙という伝統技術がなお連綿として存続している町でもあった。
 そういう町で農民塾を興したいという農村青年の要望に応えて農民塾の塾長として指導していたが、1985年から1年間文部省派遣の在外研究員として、アメリカ・ウィスコンシン大学土地所有研究所(LandTenureCenter)の客員教授になることを命じられ止むなく塾長を1年で辞めざるをえなくなった、という想い出があったからである。
 さて、「内子フレッシュパーク・からり」は、その前身は古く愛媛県下でもトップランナーであったが色々の変遷を経て、平成8年に現在の直売所になるとともに、農産物直売所のみではなく、「れすとらんカラリ」や「うどん処あぐり亭」なども併設して活動している。経営者や組織の変更などについてはここでは省略するが、現在では参加生産者388人、会員出荷の農産物のみの販売が主力であるが、売れ筋加工品も多く、パン、アイス、もち、弁当、総菜等多岐にわたっている。
 飲食店である「れすとらんカラリ」はすぐれた特徴があり、私ども視察団一行は、ここで昼食を頂いた。実に美味、多彩であった。洋食の簡易なフルコースであったが、そのスープの味、豊かな多彩なサラダ、肉の味、パンの味、すべてにわたって視察参加者の皆さんはその豪華な昼食に喜びの声をあげていた。また別の機会に訪ねてみたいという声があちこちから聞こえてきた。
 また「内子フレッシュパークからり」の脇を流れる中山川の清流と美しい吊橋の景観も見事で、参加者の多くは、時間さえあればここでゆったりコーヒーでも飲みながら過ごしたいねという感想も聞いた。

 

4.ファーマーズマーケットいよっこら

 この「いよっこら」は、以前家畜の屠殺場であったところを全面改修、美しい建物になり、さらに最近花卉売場も併設した直売所で、運営主体はJAえひめ愛パックス株式会社とされている。立地場所は伊予市となっているが松山市に隣接し、市街地が周辺にあるように見えた。
 参加生産者は530人、正職員10名、パート30名で運営されており、売れ筋農産物は、かんきつ、きゃべつ、白菜、大根、トマトなどの地物であるようだが、私が視察を通して目にとまったのは肉類の多彩な加工品、例えばトンカツ、焼鳥・豚串、コロッケ、酢豚、唐揚げなどであった。恐らくこれらは少々遠くても愛好者は買いに来るのではないかとの感想をもった。売上高は昨年7億5519万円で微増傾向にあるとのことであった。

 

5.農産物直売所「太陽市(おひさまいち)」

 この直売所が視察の最後であったが、時間の制約(帰る参加者の列車、航空の時間の切迫)のため充分な視察時間はとれなかったので要点のみ記す。
 この直売所はJAえひめ中央が運営する直売所であるが、JR松山駅の裏にあり、松山市の中心部にあると言っても良い所に立地していた。
 参加生産者は900人と多く、農産物は多彩であるが、この他の特徴として、手作り総菜や弁当など市民の多くが望みそうなものが多いということであったが、夕刻となり、それらはほとんど売り切れで棚から無くなっていた。要するに勤め人や主婦たちがもはや夕方で無くなる前に買ったのではないかと痛感した。28年度の販売額は16億円と巨額であり立地条件もよいからであろう。増加傾向にあるという。しかし、都市に囲まれている中で、駐車場の狭さと混雑を今後どうするのかというようなことが気になった。都市化の中の直売所のあり方はいかにあるべきか、新たな研究課題を提起しているように思った。

◇   ◇   ◇

 以上で、第16回全国農林水産物直売サミットにかかわる報告をすべて終わることとするが、次回第17回サミットの予告のみをここで揚げておきたい。
 ▽第17回 全国農林水産物直売サミット
 ▽開催日:平成30年11月1日~2日
 ▽開催地:和歌山市 和歌山県民文化会館(和歌山県庁前)

 

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