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シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣・東京大学名誉教授】

2018.06.02 
【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第56回 JA改革の推進とJAのさらなる発展の途を示す2つのすぐれた著作の推せんと課題-是非読んでもらいたい-一覧へ

 前回の村上光雄『明日からの実践!私たちのJA自己改革―元組合長が語る現場視点の提言』に引き続いて、上村幸男『届けあぜ道の声―"競"の時代に"協"を求めて』を紹介したい。
 この本は、前回の村上氏とは異なり、自伝風に熊本県のJA菊池青壮年部時代から理事、組合長としての活動、さらに熊本県経済連の再建から新しい経済連への再生に至る多彩な活動の歴史が実に読みやすく親しみやすい文章で書かれている。上村さんの人柄がにじみでており、多くの苦難の道をいかに乗り越えられてきたか、そして組合員、とりわけ女性の皆さんに新しい道筋を示し、説き、活動の舞台をしつらえてきたか、ということなど、読者として「私にもできそうだ!一肌脱いで頑張ろう」というような勇気を与えてくれる本である。

 

 <この本を書かれた意図>
 「振り返れば農協運動は、昭和の『米価闘争』から『農畜産物自由化阻止』そして『ウルグアイラウンド交渉成立』と舞台が変わり激変の時代であった。協同活動も時代の変革に翻弄され、JAの常識までも壊され、組織事業改革が必要と認識した」。
 そういう中で、「JAの強みと裏腹に、弱みはコスト意識が希薄、資金づくりが不要、事業が地区制限され、危機感乏しく、また身内や仲間の集まりで保守的であるため、変わることが難しいのである」
 「そのような中で、JA菊池では、時代を先取りし、組合員、役職員が痛みを分かち合い、組織事業改革の苦難の道のりを果たし実践された。止まることなく健全経営をテコに販売事業改革に着手、"きくちのまんま戦略"を樹立、実行され、数々の成果が生まれた」。
 「同じ様に県経済連でも、先人たちが困難な問題を乗り越えて組織事業改革が計画的に実行された。次なる課題は『意識、行動、カタチ』を変えようと販売事業改革に軸足を移し、ブランドマークを旗印にコントロールセンターを核として新たなステップアップとなった。この様に止まることなく改革が進められたのは様々な学習活動をもとに『人づくり』が続いたからである。
 今日、的外れの総合JA解体論があるが、今後の協同活動の戦略展開はいかにあるべきか問われているのも確かである」。
 「まさに競争の時代のなかで、協同活動はどうあるべきか常に問われる時代でもあります。(中略)この書が協同活動の仲間たちの足跡を知る機会となり、参考になれば幸いである」
 以上、上村幸男さんの本書の序文の一部を紹介することを通し、この著書の意図したところの一端を紹介したつもりであるが、本文は実に貴重な経験や実践、その発想力、構想力に充ちた内容が散りばめられているが、ここで紹介できないのが残念である。とも角、一度手に取って頁をめくりつつ、上村さんの発想力、構想力、実践力の数々を読みとっていただければ、読者の血と糧になるものと思い推せんする。

 

◇    ◇   ◇

 

 旧知の仲の上村幸男さんから、この本の推せん文を書いてほしいと頼まれ断り切れずに書いたので、ここで紹介させていただく。


 発刊によせて
 今村奈良臣(東京大学名誉教授)

 

 「本書を原稿の段階で読ませていただき、上村幸男氏のJA菊池の理事・組合長時代からJA熊本経済連会長時代を通して、思考し、実践してきた、その思想と足跡を、私なりに表現すれば以下の5か条に集約できるのではないかと、痛感した。

 

1、農業は生命総合産業であり、農村はその創造の場である
2、食と農の距離を全力をあげて縮める
3、農業ほど人材を必要とする産業はない
4、トップ・ダウン農政からボトム・アップ農政への改革に全力をあげる
5、共益の追求を通して私益と公益の極大化をはかる

 

 私は、旧農業基本法に基づく最後の農政審議会の会長を務めるとともに、1999(平成11)年7月に制定された「食料・農業・農村基本法」に基づく初代の食料・農業・農村政策審議会の会長を務めることになった。そこで、99年9月、食料・農業・農村政策審議会の会長就任にあたり、農政審議会会長時代の反省も込めて、「食料・農業・農村基本法」の核心を明快に示し、かつ、国民とくに農業関係者に判りやすく示すにはどのように表現すべきか熟考し表現したのが、前掲5本の柱である。この5項目について解説は必要ないであろうが、上村幸男氏の活動と思考の足跡を本書でたどると、まさに、この5本の柱に集約して表現された内容の活動をされていたことが、判るであろう。
 とりわけ、JA菊池にかかわる青年部時代の活動から組合長時代に至る多彩な活動を集約してみれば、地域の農業を「生命総合産業」と表現できる視点からとらえなおし、その拠点をJA菊池一円に及ぼしていることが判る。
 さらに、JA菊池組合長時代から熊本経済連会長に至る時代には、全力をあげて、「食と農の距離を縮める」ための活動を多彩に展開されていた。そして、多彩な手法で「人材」を掘り起し、かつ「育成」し、さらに常に「ボトム・アップ」路線を追及していたことが判る。
 さらに重要なことは、JA菊池組合長、熊本経済連会長時代を通して、「共益の追求を通して私益と公益の極大化をはかる」という路線を徹底して推進されてきたことである。
 なかでも、JA菊池組合長時代には、常に女性の役割が重要であるという強い信念のもとに、直売活動や介護関連の活動など、多彩な女性の登用と活動の場を拡げ、元気付けてこられたことに私は特に注目したい。
 こうした多彩な活動を通した上村幸男氏の活動記録たる本書を、とくに農協人に広く読んでもらいたいと考え、ご推薦させていただきたい。

 

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今村奈良臣・東京大学名誉教授の【今村奈良臣のいまJAに望むこと】

 

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