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特集:日本農業の未来を創る JAの課題

2013.07.26 
全国のJA流通ネットワークを 産地連携でグローバル化に対抗一覧へ

・農消連携に高齢化の危機
・域内で労働力確保を

 日本の農業はどこに向かうのか。TPP参加問題が大きくなるにつれ、政府・与党は相次いで農業の改革を打ち出し、競争力のある強い農業、輸出の増大などによる「攻めの農業」を強調し出した。現場ではこれをどう受け止めているか、園芸を中心に全国トップクラスの産出額を誇る千葉県で、長年、産地づくりに努めてきた単位JA、JA県組織、そして県庁のOBのみなさんに自由に語ってもらった。
(司会はJC総研客員研究員・千葉県JA富里市前常務の仲野隆三氏。カッコ内は元所属先)

現場感覚から厳しい意見の出た座談会(千葉市内で) 司会 安倍政権成立から6か月。アベノミクスといわれる成長戦略のなかで「攻めの農林水産業」を強調し、農山漁村の底力を取り戻そうと言うことで所得倍増計画を打ち出した。しかし、本当に倍増ができるのか。またTPPを前提にした国内農業をどう育てるのか。さらに今後、消費者とどう提携するか。この3つが鍵になるだろう。この視点に沿って意見を聞きたい。
 K氏(JA県組織) 広島県の世羅町の例だが、町全体を消費者にPRしていく取り組みがすばらしい。直売所もあれば作業体験の場もあり、食育もできる。グローバル化に対抗するには、地域をみんなでつくっていく仕組みが必要だ。ヒントは「地産地消」にある。国が旗を振るだけではだめ。生活普及指導員、農協の女性部や生活指導員など、女性が自分たちの力で主体的に取り組んだ結果だ。スローフード的な運動も地域から提起し、消費者を巻き込んだ。

(写真)
現場感覚から厳しい意見の出た座談会(千葉市内で)

◆農消連携に高齢化の危機

 いま、生協が問題だ。市民生協やパルシステムなど反TPPを鮮明にした生協もあるが、大手の生協の姿勢が見えない。中国産の毒ギョウザ事件の時も、利用している生協が「これから衛生管理を徹底する」と言ったが、そういう問題ではない。「これからは国内で調達する」というかと思ったのでがっくりした。食の安全・安心、遺伝子組み換え食品など、海外農産物輸入との関係について、もういちど仕切り直ししないとだめだ。
 司会 ギョウザ事件から考えると、全体の食を輸入に依存してしまったところに問題がある。消費者が食のことをよく理解していない。地域の農業と食品がどういう関係にあるかを知らないと、ますます輸入食品は消費者に浸透するだろう。
 T氏(JA県組織) 生産と消費の連携が必要だが、消費者も変化している。団地の自治会と月一回の取引したことがあるが、半年でやめた。消費者は何でもそろわないとついてこない。消費地も高齢化が進み、買い物難民になっているところが多い。自治会が何とか支えてほしいと言ったが、支える側の生産者もついていけない。地産地消といっても、なかなかむずかしいと感じた。
 アベノミクスの「攻めの農林水産業」に目新しい話はない。過去に取り組んだ話ばかりだ。TPPを含めて、だれのため、どこを向いて、日本の地域社会を再編成していくのかが見えない。政策の道具にされているように思う。農地を集約し、少数精鋭の条件づくりとうことで受委託を進めるということだろうが、これが農村から自然発生的に出てくるだろうか。外部の人も入ってこない。
 このままの地域でいいとは思わない。何かの形で変えようとおもうのだが、農業で自立しようという人が少ない。その中で集団化、個人経営の規模拡大もなかなか難しい。集落営農も補助金がなくなったら潰れるだろう。
 D氏(県農林部) 生協組合員の変質はまちがいない。生協で働いたことがあるが、若いお母さんと昔からの人の世代間対立構造がある。昔からの人は生協とは何か、安全安心とはと考えるが、若い人はブランド志向が強い。品質がよく安全で安心できればスーパーでも構わない。生協とどこが違うのかと言ってくる。
 司会 生協組合員も世代間に意識格差がある。生産側として考えなければならない問題だ。次に、いま産地ではどんな問題を抱えているのか。首都圏で200億円以上の販売額がある園芸産地の銚子市ではどうか。
 S氏(単位JA) 野菜産地の将来を考えると、収入の不安定と労働力不足、その結果、後継者の不足が深刻だ。毎日500箱出荷するキャベツ農家の場合、朝は5時に収穫をはじめ、朝食前にトラック1台分(200箱)は終える。これが連日続く。相当なエネルギーだが、収入が当てにならない。銚子の農業は、45歳以下が300人ほどいるが、地域によっては、後10年で若者いなくなって、やめる人が出るだろう。農地は空いているが専業農家が使うには、労働力の面で限界がある。野菜はせいぜい10haで、これ以上は無理だ。大きな農家は、働き手になにかあると大変だ。最近“泣き”を入れる農家が増えた。東部地区ではぼちぼち土地が動き出したが、これは苦しくなって経営を持続できない農家が出ているからだと思う。
 銚子では過去5年間で新規就農が50人いる。年平均10人の就農だが、産地を維持するには最低20人は必要で、まだ少ない。これから10年、作付面積は変わらないと思うが、農家数は減るだろう。
 I氏(JA全国連) 県内でトップクラスの農業地帯の銚子ですらそのような状況はショックだ。安倍政権は耳触りのいいことを言っているが、現実は全く異なることが分かった。この現実を訴えていくことが大事だ。
 N氏(農林金融全国機関) 地域農業の現実は厳しい。それに対してだれが農業の将来像を描き、実行するのかが問われる。そのとき大事なのは、「幸せ」とは目的を持って活動をすることだという原点に立ち返って、今の問題を自分たちの手で解決することだ。日本の農業はこれまで2000年に渡り、人々の命を守るための生産を続けてきた。これを永続させるため、生産者も消費者も生活者の立場で、必要な行動を起こすべきだ。
 具体的には、JA冨里市が、消費者のオーダーに応じた野菜を作る農家を手上げ方式で集めて拡大したように、小さなところから改革を積み上げることが大事だ。今までの組織、やり方が悪いというだけでなく、変えていくことだ。野菜の取引でみても、大手の青果卸が野菜の業務加工需要の増加に合せた改革、人づくりを始めている。リスクは伴うが、JAは無条件委託だけでなく、そこに踏み込んでいくべきだ。
 司会 次に労働力の問題だが、現場ではこの不足が大きな問題になっている。どう確保するのかが見えない。何をもって、今後それを補うのか聞きたい。

◆域内で労働力確保を

 S氏(JA単協) JA管内では、農家170戸が、研修生として約300人の外国人研修者を受け入れている。季節性があり、雇用は農繁期に集中する。研修生のため別のものを作ると経営者に一層の負担がかかる。地元で時間の空いている人がスポット的雇用に対応できる体制をとるべきだ。何件かやっている例はあるが、地域に根差したJAがやるべきことだ。
 司会 最初に出た世羅町では66の経営体が、地域雇用をまとめている。共販もひとつだが、野菜類のピッキング作業も雇用一つである。沖縄から北海道まで、加工業務野菜を集中管理し、加工業者に送る。千葉県でも、それなりに大きいところはやっているが、加工業務用需要が拡大しており、全国連のネットワーク化が必要だ。いま、加工業務用の普及で動いているが、加工業務用は周年入荷が前提で、産地をまとめてコーディネートするシステムが必要だ。営農指導員は自分のJAだけでなく、もっと広く考えなければならない。近隣のJAとの連携も必要だ。困難だがこれをやらなければならない。


【特集 日本農業の未来を創る 多様な現場から考えるJAの課題】

【紀ノ川農協と生協おおさかパルコープの連携】生・消ともに地域農業再建 (13.07.26)

【JA愛知県厚生連足助病院】「生き方」が地域をつくる (13.07.26)

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