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特集:元気な国内農業をつくるためにいま全農は

2013.10.10 
【営農販売企画部】パイロットJAを訪ねて(株)援農いんば(千葉県)一覧へ

・集落の受託者も、高齢化で農地を返上
・秋冬ネギや育苗ハウス活用で収入安定を
・育苗ハウスに1680本のトマトを定植
・課題はあるが「やりながら解決していく」
・元気な農業を築いていく大きな力に

 JA全農は、「地域営農ビジョン実践のため、集積された農地を担う担い手生産者の手取りが最大となるような営農モデルをつくろう」と考え、全農が自ら全国に6つのパイロットJAを設置し、担い手である生産者とともにさまざまな実証と検証に取組んできている(詳細は4面参照)。
 そのパイロットJAのなかから千葉県のJAいんばのJA出資型法人(株)援農いんばに取材した。

生産者とJA、全農一体で
元気な産地づくり

◆集落の受託者も、高齢化で農地を返上

(株)援農いんば・福島幸一社長 株式会社援農いんばは、平成21年3月に、JAいんば管内の3市(佐倉市、四街道市、八街市)のほ場経営、農作業の受け皿となることを目的に、JA出資型法人として設立された農業生産法人だ。
 JAいんばの管内は古くからの城下町である佐倉市は水稲中心、八街市は落花生や野菜など園芸中心、そして四街道市は都市近郊型と「同じJA管内であっても農業の性格が異なる」と、JAいんばの指導販売課長から今年8月に援農いんばの社長に就任した福島幸一社長はいう。
 設立の当初は水稲と落花生の受託からスタートしたが、生産者の高齢化と後継者不足から、水稲面積が毎年5ha拡大するとともに、畑地の委託ニーズの高まりにともなって園芸作も拡大しているという。
 とくに最近は、集落(地域)で農作業を受託していた人が年をとり受託作業が難しくなったと「地主に返す」ケースが多くなってきている。「そうはいわれても地主もできないので、やってくれ」という話が多いという。
 しかし、必ずしも条件がよいところばかりではない。四街道の事務所から車で30分とか1時間という場所もある。30分かかれば往復で1時間かける人数分が移動だけでとられることになる。JA出資法人だから無下に断ることはできないが、そこが経営的には難しいところだと福島社長。

(写真)
(株)援農いんば・福島幸一社長

◆秋冬ネギや育苗ハウス活用で収入安定を

ニンジン畑 そうしたなかで、試行錯誤を繰り返しながら事業を展開してきたところに、全農本所から、今回のパイロットJAの話が持ち上がった。このとき、全農ちば(千葉県本部)としては「援農いんばをぜひに」と考えた、と語るのは全農ちば営農販売企画部営農担い手支援課の林広和さん。
 そしてこの春からパイロットJAとなり、全農本所(営農販売企画部)も加わって経営分析やさまざまな検討・協議を行なった。
 全農からの具体的な提案を見る前に、24年度実績をみておくと、水稲は16haで主食用コシヒカリ6ha、飼料用ちば28号10ha。園芸は延べ4.3haでニンジン、落花生、加工・業務用キャベツ、バレイショ。そのほか水稲苗の生産受託、落花生の乾燥受託なども行ってきた。
 こうした実状を分析したうえで、全農からの提案は、園芸(延べ4.3ha)では、
[1]1品目の栽培面積を50a程度として設定し、収穫時期を明確化し収穫作業が一定期間に終了可能な品目体系とする。
[2](年明けの収入源となる作物が少ないので)単収が高く、作業適期が長い秋冬ネギを年明けの収穫物のメインに据える。
[3]省力化のための機械導入をすすめる(ニンジン、ネギ、トマト)。
[4]水稲育苗ハウス(24年度追加、300坪)への抑制トマトを導入し天候要因を排除し収益の安定化をはかる。
 水稲については、[1]育苗ハウスの有効活用[2]熟期の異なる品種(あきだわら、べこあおば)を導入し、植え付け時期、収穫時期の分散、単収増をはかる。
 [3]では、専用の乾燥施設を活用する(25年作より麦作組合の新規施設が利用可能に)。

(写真)
ニンジン畑

◆育苗ハウスに1680本のトマトを定植

水稲育苗ハウスを有効活用した抑制トマト。「うぃずOne」活用で1680本を定植 こうした提案を受けて、25年度の概要は水稲は25haと24年より9ha増加したこともあり、植付け、稲刈作業の分散化をはかるため、主食用ではコシヒカリに加えて全農ちばが実需提携米として産地提案を展開している「あきだわら」を新たに採用した。また、飼料用米ではちば28号に加えて、あらたに「べこあおば」を採用した。
 園芸は延べ4.3haと変わらないが、夏以降では、ニンジン1.3ha、キャベツ50a、ネギ20a。そして水稲育苗ハウスに「うぃずOne」を設置し大玉トマト10aの栽培を始めた。
 取材で訪れた水稲育苗ハウスを有効活用した「うぃずOne」によるトマト栽培は、定植が遅かったのでまだ収穫には早かったが、順調に生育しているようだった。
 ここでは「うぃずOne」を70箱×12列、840箱設置し、1箱に2本、合計1680本が定植されていた。培土も数種類使っていたが「ヤシガラが良いようだ」と林さん。ヤシガラは軽いので設置や撤去のときの持ち運びにも適しているといえる。
 ただ、他の作物との作業時期が重複したりしたことで、一部手入れが十分に行えず、初年度の今年は予定よりは収量が減るのではないかという。後でも見るように園芸作物ではこうした問題が起きやすいので、今年の7月に全農ちばの紹介で計画的に農場管理する人を雇用し、今後の問題に対応していこうとしている。

(写真)
水稲育苗ハウスを有効活用した抑制トマト。「うぃずOne」活用で1680本を定植

◆課題はあるが「やりながら解決していく」

 福島社長は、人数が少ない(社長、専務、常時雇用4名)ので、作物の収穫期は分散できたけれど、例えば水稲の稲刈りと園芸作物に対する手入れなどの作業が重なると、園芸への作業が後手後手になり、適期作業ができず予定した収量が取れないなどの課題が生じているという。
 水稲だけでも作業時期が集中するため、品種特性に適した時期での植付け、収穫ができず減収となっているという。
 これに水稲の25haは197枚のほ場で、事務所から車で片道1時間というほ場もあるという問題もある。
 こうしたさまざな問題を一気に解決する妙案はない。人を増やせば解決しそうな問題もあるが、人件費の増加は「経営の圧迫要因」ともなるので、軽々に語れることでもない。
 秋冬ネギの導入など収入源の少ない時期への対応や育苗施設の活用など将来的に有効な施策もある。未解決な課題はあっても基本的な方向は間違っていないのだから、「作物の選定や作業のあり方などについては、やりながら検討し修正していくことだ」と福島社長は考えている。

◆元気な農業を築いていく大きな力に

秋冬ネギ 年明けの収入源として期待される JA全農の本所と県本部そしてJA、生産者が一緒になって、元気な産地を築いていこうという「パイロットJA」の取組みは、いま始まったばかりで、小さな瑕疵をあげつらって、その成否を云々する時期ではないといえる。しかし、こうした取組みがいまの日本農業には必要であり、こうした取組みこそが間違いなく「元気な国内農業を築いていく」大きな力となるといえる。
 他の5つの取組みを含めてこうした動向を本紙では今後も注目し続け、さまざまな形で取材し全国に伝えていきたいと考えている。

(写真)
秋冬ネギ 年明けの収入源として期待される


【特集・元気な国内農業をつくるために“いま全農は…”】

全農特集にあたって 奮闘するJA全農のトータルな姿を (13.10.10)

【営農販売企画部】中澤靖彦部長に聞く 消費者・実需者ニーズに応える仕組みを構築 (13.10.10)

【米穀部】大手実需者と複数年契約拡大 需給改善対策も課題に(2014.02.26)

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【畜産生産部】JA全農の畜産事業 アルゼンチン農協連合会と事業提携50周年 (14.01.14)

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