JAの活動:日本農業の未来を創るために―JAグループの挑戦―
【現地ルポ・JA広島北部(広島県)】野菜生産の倍増めざす「いざ、GO 55作戦」2013年11月13日
・退潮歯止め55億販売へ
・養液栽培で青ネギ拡大
・法人組織が担い手育成
・若手の専農「農考会」に
中山間地域に位置するJA広島北部は、農業を軸とした地域農業、地域社会再生のため、「いざ、GO 55(ゴー ゴーゴー)作戦」を展開し、農畜産物の大幅売上げ拡大に取り組んでいる。野菜を中心とした若い担い手支援と併せ、女性や高齢者には直売所を用意し、野菜栽培を勧めるなど、地域の状況に応じた、さまざまな農業支援を行っている。
【JA広島北部の概況】(平成24年度末)
○組合員数=1万8556人(うち正組合員1万1891人)
○販売取扱高=44億9800万円
○購買品取扱高=41億円
○貯金残高=1139億5000万円
○長期共済保有高=5169億2000万円
○職員数=360人
◆退潮歯止め55億販売へ
JA広島北部は、島根県と県境を接する広島県の県北にあり、管内総人口の33%が65歳以上という高齢化が進んだ地域である。水田農業を中心とする典型的な中山間地域で、基盤整備されたほ場でも1区画当たり面積は小さく、未整備の山間棚田も多い。耕作放棄地は年々増えており、地域の農地を守るため、集落型農業生産法人による集落ぐるみの生産組織づくりを進めてきたが、若い担い手が減少し、農業生産額は年々落ち込んでいた。
「いざ、GO 55(ゴー ゴーゴー)作戦」は、こうした退潮に歯止めをかけ、農業生産額を拡大しようというもの。JAの中長期営農振興計画に盛り込み、21年からスタートした。26年までの5年間で農畜産物の販売高39億円を55億円にするという意欲的な計画だ。品目では米を20億円から21億円、野菜を10億円から20億円、畜産を5億円から10億円に拡大し、畜産は現状の4億円を維持。
◆養液栽培で青ネギ拡大
このなかで最も期待するのは、5年間で倍増をめざす野菜だ。管内北部はやや冷涼で、南部はやや温暖な気象条件で、さまざまな野菜が栽培されているものの、少量多品目で、昔からの米作地帯だったため、まとまった産地にならなかった。しかし、JAの強力な振興方針と積極的な支援などから、新しく野菜栽培に取り組む生産者が増えている。
「クリーンカルチャー」グループはその有力な牽引力となっている生産者組織だ。JA広島北部の生産者部会に位置づけられ、養液栽培の青ネギを栽培する有限会社である。元JAの3人の営農指導員を中心に7人で平成4年に発足。現在15 人の個人メンバーと6法人が、平均で50?60aのハウスを持ち、栽培面積は全体で14haを超す。
春夏に栽培しているミツバなどを含め、年間7億5000万円前後の売上げがあり、JAの野菜販売高の半分以上をこのグループが占める。JAは、これを拡大し、10億円の売上げを見込む。
このグループは担い手の育成にも力を入れており、研修や新たな栽培技術や環境保全技術の開発を通じて、就農を希望する担い手の受け皿にもなっている。ハウス施設等は事業の開始時からJAが取得し、生産者にリースで貸し出す方式。また同グループは独自の青ネギ調整出荷施設を持ち、自ら運営する。常時120?130人が働いており、雇用の機会を創出することで地域の信頼を得ている。
(写真)
地域の農業を牽引するクリーンカルチャ―の青ネギの調整出荷作業
◆法人組織が担い手育成
もう一つ、地域農業を牽引する組織にJA広島北部集落法人協議会がある。合併前のJA管内にあった農業生産法人を一本にしたもので40余の会員がいる。同協議会会長の松川秀巳さん(65)は、農用地利用改善団体の構成員から農地を引き受けるよう依頼があったときは、これに応じる義務を持つ特定農業法人からスタートした株式会社・羽佐竹農場の代表で、40ha近い水田で米やソバ、白ネギを中心とした野菜を栽培し、地域農業のリーダー的な存在だ。
松川さんは、集落のみんなを担い手とする集落営農には疑問を持つ。「集落型は農地を維持管理するという大きな目的はあるが、それで後継者を育てることが難しいのではないか。その点、特定法人は自分の考えで経営できる。従って、若い担い手の育成も大きな課題として取り組む責任もある」と考えている。統合する前の高田地域法人協議会のとき、そのなかで集落型法人と担い手型(特定農業法人)法人の2つの部会をつくり、研究してきた。
(写真)
集落法人協会の研修
◆若手の専農「農考会」に
農場では2人の常雇のほか、研修生を一人入れ、26aの施設野菜の責任者にして、。将来は自立できるよう支援するつもりだ。松川さんは昨年、10年も放置されていた3.1haの荒廃水田を再生させた。長年放置された水田の再生は難しいが、自ら範を示すことで、再生のモデルになればという期待を込めた取り組みだった。
さらに、JAは、平成22年度には、45歳以下の専業農家を対象にした「ひろほく農考会」(会員37人)をつくった。若い農業者の交流・研鑽の場で、JA青年部の活動を補うとともに、歴史が浅く前例がない分、さまざまな活動ができるものと、JAは若い農考会の活動に期待する。
(写真)
上:意見交換する若い専業農家の「農考会」のメンバー
下:JA祭りで演ずる神楽の練習をするJA職員
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