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特集:日本農業の未来を創るために―JAグループの挑戦―

2013.11.14 
【現地ルポ・JAみやぎ登米(宮城県)】米づくりが地域づくり 環境保全米運動10年の成果一覧へ

・伝統ふまえ価値高める
・冷害乗切り評価が定着
・住民参加で地域運動に
・次代見据え新たな挑戦

 米価の下落、需要の低迷、生産調整の見直し...など米の生産環境は一層厳しさを増している。JAみやぎ登米は、環境保全米運動をすすめることで農業と地域社会を次代へ継ごうとしている。運動のこれまでとこれからを聞いた。

生産者と地域住民が一体となって環境保全米運動に取り組んでいる

(写真)
生産者と地域住民が一体となって環境保全米運動に取り組んでいる

JAみやぎ登米【JAみやぎ登米の概況】(平成24年度末)

○正組合員数(准組合員数)=1万4111人(2312人)
○販売品販売高=163億9662万円
○購買品供給高=116億4503万円
○貯金期末残高=1285億9190万円
○長期共済保有高=7217億5199万円
(組合員数は25年3月末現在)

◆伝統ふまえ価値高める

 JAみやぎ登米が環境保全米運動を始めたのは、合併から5年後の平成15年。今年で丸10年が経過した。
 この地域の米づくりは400年以上の伝統がある。それゆえ、米づくりに対する地域住民のこだわりは強く、かねてから化学農薬や化学肥料を減らした生産を行うなどの、いわゆる篤農家と呼ばれる人たちもいた。
 しかし出荷先が農協であれば、販売する時は慣行栽培米と一緒になる。「なぜ、わざわざ面倒なことをするのか」と冷ややかな目で見られていたという。
 JAがそれに注目したのは、MA米の輸入、食管法の廃止などを契機に、米づくりへの危機感がたかまったためだ。地域農業を守るため、「消費者に価値を認められる米」、つまりは「完売する米」をつくろう、というのがJAのねらい。いい米をつくっても売れ残ったら負け、お金はあとから付いてくる、という理念で運動は始まった。

JAみやぎ登米環境保全米の生産タイプ

JAみやぎ登米環境保全米の生産タイプ別割合

◆冷害乗切り、評価が定着

環境保全米運動に取り組むほ場にはオレンジ色の旗が立てられる 旧JA単位で生協と連携し減農薬減化学肥料栽培をしていた部会の取り組みをモデルにした。初年度の作付は約1080ha。管内水田面積の10分の1ほどだったのは、生産者から「害虫や病気が発生したら誰が責任をとるのか」、JAの内部でも「資材の販売が減る」と疑問の声が強かったからだ。
 しかし15年は奇しくも大冷害に見舞われ、穂いもち病が大発生した年。県の作況は69という大凶作だった。そんななか環境保全米だけはいもち病への感染率が著しく低く、ほとんど減収がなかった。そのため、生産者の間には「冷害に強い環境保全米」という評価が広まり、翌16年に作付面積は6000ha超に急増。運動参加の目印となるオレンジ色の旗が各地の水田で目立つようになると、「自分だけ遅れていられない」と瞬く間に運動が拡がった。
 さらに18年、稲作部会が日本農業賞を受賞したことで「この取り組みは間違っていない」との信頼が広がり、18年には8000haを越えた。10年目の24年も管内9530haの87%にあたる8301haが作付けられ、その運動はもはや完全に定着した。

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環境保全米運動に取り組むほ場にはオレンジ色の旗が立てられる

◆住民参加で地域運動に

田んぼの生きもの調査。全国的にも珍しく、毎年生きものが増えているという 当初、将来的には市場評価が高まり付加価値がつく、組合員への加算金も出せる、という目論見もあったが、社会情勢や消費環境は大きく変化し、残念ながら期待していたほどの経済的メリットは出せていない。しかし、それでも運動が定着したのは、これが地域運動へと昇華したからだ。
 例えば、環境保全米は、防除に使う農薬が少ないため、とくに除草作業などは人力に頼らざるを得ない。そのため年3回大規模な草刈りを行っているが、これには農業者以外の地域住民も多数参加するという。
 この運動は、大規模生産法人、集落営農組織、さらに兼業農家が一体となった運動だ。管内の平均耕作面積は約1.5haで、その多くが兼業農家。環境保全米はきめ細かい管理が必要なため、経営面積を拡大すると対応しきれないという栽培技術上の理由もさることながら、それ以上に、地域全体で米づくりを支えようという意識が共有されているのが何よりの特徴だ。だから、「米づくりを誰かに任せる、というよりも、みんなでやろうという声が根強く」(営農経済部)、それが地域ぐるみの運動の原動力となっている。

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田んぼの生きもの調査。全国的にも珍しく、毎年生きものが増えているという

◆次代見据え新たな挑戦

JAみやぎ登米の佐々木謙・営農経済部長(右から2人目)ら 来年で運動は11年目。次なる10年を見据え、さらなる発展をめざしている。
 そのひとつが、実需者による現地見学の受け入れだ。流通業者などを産地に呼び、現場を見てもらう。運動に対する理解を深め、JAみやぎ登米のファンになってもらい、ブランド力の向上、リピーターの獲得につなげようという戦略だ。
 また、現在、JAでは来年度からの新中期計画を策定中だ。そのなかで、[1]環境保全型直播栽培の技術開発[2]作付品種の拡大、をめざそうという動きがある。
 JAみやぎ登米の環境保全米は大きく分けて3タイプある。県平均の化学合成農薬使用回数は17成分なので、5割以下の8成分以内であれば特別栽培米と認められるのだが、もっとも作付の多いCタイプは、これをさらに厳しい6成分としている。これ以上資材を減らすのは難しいため、さらなるコスト削減策が直播への挑戦というわけだ。品種については、現在「ひとめぼれ」が9割以上で、あとはササニシキが4%と、ほかの品種はごくわずか。この品種を増やすことで、作付のバージョンを増やし作業の集中を防ごうという狙いがある。
 運動開始から丸10年が経過した環境保全米。この運動を次代へ引き継ぐため、JAみやぎ登米は新たな挑戦を続けている。

(写真)
JAみやぎ登米の佐々木謙・営農経済部長(右から2人目)ら

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