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特集:第59回JA全国女性大会

2014.05.13 
【インタビュー】『魅力ある地域を興す女性たち』を著したJC総研主任研究員・小川理恵さんに聞く 女性の力が地域を盛り上げる一覧へ

・「幸せ」の基準は
・最初は一人でも
・参画に停滞感も
・”バイアス”払拭
・JAの支援期待

 今日、地域における生活や福祉、文化、さらに経済的な分野を含めて、女性が参画し、女性によって担われている活動が多い。それは、単に「やり甲斐」、「楽しみ」というレベルを超え、具体的に地域社会づくりに取り組み、優れた結果を出しているが、そのことが社会的に十分認識されているとは言い難い。その背景や、女性の社会参画をさらに進めるために取り組むべき課題について、『魅力ある地域を興す女性たち』(2014年3月農文協発行)で、女性活動発展のメカニズムを示したJC総研主任研究員の小川理恵さんに聞いた。

「心豊かに暮らす」ことに価値


◆「幸せ」の基準は

――いまなぜ、地域で活動する女性に注目したのですか。
JC総研主任研究員・小川理恵さん 「3・11」東日本大震災以後、日本人の価値観は大きく変わりました。「幸せ」の基準が金やモノから地域・仲間・家族になった。つまり、経済一辺倒の考え方から心の豊かさを求めるように変化してきたのです。そのようななか、特に地域がクローズアップされていますが、そこに目を向けると、いろどり豊かな女性の活動が数多く存在し、地域を盛り上げていることが分かります。
 これまで女性の活動は、「儲かっていないから事業体として評価できない」とか、「本人たちがやり甲斐を持ってやっているのだからそれでいいのではないか」などとして片付けられてきました。
 しかし、地域では、多くの女性がもっと自由に、楽しみながら地域活性化の役割を果たしているのです。それはもはや反経済であるとか「やり甲斐」などといった狭義のものではない。それを知ってもらいたいという思いを強く持ったことが、本書を書くきっかけになりました。

◆最初は一人でも

――地域における女性の活動からどのようなことが分かりましたか。
 頑張っている女性の活動は、最初は一人、あるいは数人で始めたつむじ風のようなものですが、それが地域全体を覆うトルネード(竜巻)となり、地域全体を底上げし、「魅力ある地域」をデザインしています。
 こうした活動の発展過程は、「バネ」と「接着剤」という言葉で説明できると思います。「バネ[1](内発的なモチベーション)」→「接着剤[1](つなぎ合う力)」→「接着剤[2](ネットワークで広がる力)」→「バネ[2](飛躍する力・跳ね返す力)」という循環です。これを「内発力の発現と成長モデル」と名付けました。
 つまり、最初は個人が「幸せになりたい」、「心豊かに暮らしたい」という思いをモチベーションに活動を始める。それが核となり、組織づくりへと発展する。さらに他の人の力を借り、活動を外に広げ、地域全体を包括する活動となる。直売所や加工、6次産業化、福祉活動などに取り組み、雇用を生んで地域を元気にする。それがグローバル経済の圧力を跳ね返す力になる、という循環です。
 取材した5つの女性活動のすべてが、この発展過程を経て成長しています。これはグループ活動だけではなく、個人にも当てはまります。取材したJAの役員や幹部職員として活躍している女性からも同じプロセスをみることができました。
 「アベノミクス」では、女性の活用を成長戦略の1つとして掲げています。しかしそれは生産年齢人口の減少に対応したもので、不足した労働力を補うものとしてのみ女性を位置付けているように思います。しかし、いま女性の力が求められている本当の理由は、別のところにあると私は考えています。女性活動の発芽のきっかけとなる「心豊かに暮らしたい」、「この地域で幸せに老いたい」といった、女性たちのなかに生まれた内発的なモチベーション(バネ[1])は、いま私たち日本人が考えるあらたな価値観とぴったり合致するのです。あらたな価値観に即した「あらたな目線」、それが女性パワーなのではないのでしょうか。よい種をまけば、よい実がなります。価値観が変わったいまだからこそ女性の出番だと考えています。

◆参画に停滞感も

――こうした女性活動から何を学ぶことができますか。
魅力ある地域を興す女性たち 活発な女性の活動がある一方で、政策面での後押しはあるものの、女性の参画には停滞感があり、政策と現実のズレも感じます。このズレを埋めるものとして、[1]「魅力ある地域」づくりを担う女性を支援する政策、[2]女性の多様性に対応した政策、[3]「昇格」における教育制度の確立、が必要だと考えています。
 特に政府の「男女共同参画政策」は、主に大企業や行政機関で働く女性を対象としており、地域で活動する女性を支えるという視点が手薄なようなイメージを受けます。そこで「魅力ある地域づくり」の担い手としての女性活動をさらに支援する政策が必要だと思います。
 また女性の働き方は多様になっています。「子育て支援」も必要ですが、未婚のまま働き続ける女性も増えています。地域における女性起業をみても、かつてはグループが中心でしたが、今は個人による起業が伸びています。そのような女性の多様化に対応した、きめ細やかな支援が求められるでしょう。
 一方、企業や組織で働く女性には「昇格」での障壁があります。まだ女性管理職のロールモデル(規範)がなく、責任ある地位への昇格を、女性自身が躊躇するというケースが少なくないのです。女性の力を本当に発揮させたいと思うのなら、男性と同じように教育の機会を設け、経験を積ませるような対策が必要です。特に、多様な事業分野を持ち、地域で活動するJAにおいては、女性を育てることを目的とした、JAならではのトレーニングシステムがあってもいいのではないでしょうか。

◆”バイアス”払拭

――さらに女性の社会参画を進めるために必要なことはなんでしょうか。
 意識改革がとても重要だと思います。いまだ、長時間労働を前提とした評価基準が根強く残る男性サラリーマン社会では、出産で一時職場を離れた女性や育児・介護を担う女性が、正当に評価されて、キャリアアップするのは難しい。そのような社会通念を払拭することがまずは必要です。
 次に男性の意識改革です。「予言の自己成就」という現象がありますが、これは、男性上司が女性に極度に気を遣ったり、また「女性はどうせ辞める」と考えて重要な仕事に就かせないことで、女性が成長の機会を逃してしまい、その結果「やはり女性はだめだ」と、男性上司が自分の思い込みを確認し、納得してしまうことを指します。こうした男性の「ジェンダー・バイアス」を取り除くことが、女性の社会参画を後押ししてくれると思います。
 この「ジェンダー・バイアス」は、実は女性同士のなかにも存在しています。女性同士けん制し合うのではなく、今はまず、一人でも先に進んでもらって道幅を広げることが先決だと思います。
 さらに女性の場合、「インポスター(ペテン師)・シンドローム」といって、十分な実力がありながら、理由もなく自分を過小評価する傾向があると言われています。女性に不利なバイアスが数多く存在しているのもその原因の1つでしょう。でも、いま、女性に追い風が吹いていることは事実です。ならばその風に乗って、ふわりと上昇してしまった方がいい。そのためには、私たち女性一人ひとりが、勇気を持って1歩を踏み出すことが肝心だと思います。

◆JAの支援期待

――JAはどのような支援ができるでしょうか。
 JAには地域におけるさまざまな協同の活動のマネジャーとしての役割があります。地域の女性活動が、いま「成長モデル」のどの段階にあるかを見極めて、女性の活動を見守り、育てていくことが必要です。活動を「点」で終わらせず、「面」さらには「球」にまで広げていくような、地域ごとに特色を持った、懐の深い支援を行ってほしいと思います。私自身も、具体的にどのような対策があるかについて、引き続き研究したいと考えています。

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