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JAの活動:創ろう食と農 地域とくらしを

開拓と増産支えた協同の力 有塚利宣・JA帯広かわにし組合長2014年8月6日

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・自然と世界大きな2つとの闘い
・安心安全を消費者に
・営農指導にこそ農協の意義
・誰が国民を守るのか

 本州と同じく農業改革やTPPへの懸念、生産者の高齢化といった課題を抱えながらも食料自給率1100%(カロリーベース)を誇る元気な産地・十勝。その力の源泉は「不撓不屈」の開拓者魂にある、と有塚組合長は語る。そして、常に前を向き、自らの役割を精一杯果たせば、十勝のような農業ができると、全国にエールを送る。

「不撓不屈」の精神で
自給率1100%

 

◆自然と世界 大きな2つとの闘い

 

――十勝はいまや北海道だけでなく、日本農業を牽引する農業地帯です。これまでの発展の経緯をお聞かせください。

 

有塚利宣・JA帯広かわにし組合長 十勝農業は本州府県に比べて、非常に歴史が浅い。開拓が始まって、今年でわずか132年の歴史しかありません。そのなかで絶えず自然との闘いがあり、そして今や世界の農業とも闘わなければなりません。この、大きな2つの闘いを続けながら今日までやってきました。
 十勝の食料自給率は1100%。しかし、これは一朝一夕でできたものではありません。政治の役割はもちろん、小さな力しかない農業者が肩を寄せ合い、体温を分かち合い、協同の力で支えてきた農協という組織の役割、そしてその組織を支えてきた個々の生産者の役割。これらがお互いの役割を理解しながら、ともに発展してきたからこそ、いまの十勝農業があるのです。
 昭和30年代後半、農業と都市の所得格差が問題になり構造改善事業が始まりました。その当時、機械を買って、土地を広げて、本気で農業をやろうとすると当時の金額で500万円は必要でした。その時、十勝農業の土台を作り上げたのが、どんな困難にも向かっていく不撓不屈の開拓者魂を持った人たちです。十勝は、ここ30年間で2万1000戸あった農家が6100戸にまで減りました。しかし、この6100戸は、何があっても絶対に投げ出さない強い精神力を持っています。そのパイオニア精神が、現在の十勝農業26万haを支えているのです。

 

――生産現場、組織、政治。3つの個別の役割とは具体的にどのようなものでしょうか。

 

 まず、生産現場の役割とは、安心安全なものを消費者に届けること。しかも持続的でなければなりません。

 (写真)
有塚利宣・JA帯広かわにし組合長

 

◆安心安全を消費者に

 昨年、十勝24農協のネットワークを駆使して、6100戸をひとつにまとめてワーキンググループを作り、「十勝型GAP宣言」を出しました(関連記事参照)。
 これは、一年のうち十勝で生産される畑作、野菜の全農産物410万トンが、100%GAPに取り組んだことを証明するものです。これだけの面積、戸数、ロットが責任もってGAPに取り組めるのは、おそらく十勝以外には見当たらないでしょう。これにより、全国の消費者のみなさんは、安心して安全な十勝の生産物を求めることができるようになりました。

 

――農協の役割とは?

 

JA帯広かわにしのナガイモ工場 生産者個々の力ではできないことをやるのが農協です。例えば、組合員に代わって農産物に色々な付加価値をつけ、より高く販売することです。
 いま、十勝は世界に向かっています。
 というのは、日本国内より、むしろ外国の方が十勝の農産物の良さやGAPの取り組みなどを評価してくれて、高い値段をつけてくれるからです。われわれは、この評価が何よりも嬉しいのです。だから、十勝はどんどん輸出にも力を入れます。
 その成果の一つが、8月帯広に設立される野菜を輸出するための外国資本100%の貿易会社です。主に台湾、米国に帯広特産のナガイモなどを販売する仲介をしてくれます。今まで以上に海外へ、よりダイレクトに販売でき、生産者の所得をより増やせると期待しています。
 また、国の役割も重要です。35年前の土光臨調では、当初は農家個人の土地に国の財政は投資できないという話でしたが、食料生産は個人の経営ではなく国全体の問題だ、絶対に必要だと直訴し、そうして基盤整備を実施してもらいました。そのおかげで、40年前にはちょっと雨が降っただけで、人間や馬の足がずぼずぼぬかるみに入ってしまって作業できなかった畑が、今では何千万円もするような大型のトラクタが入れるように発展しました。
 このように国、農協、生産者、それぞれが役割を発揮することで相乗効果を生み、自給率1100%を実現しました。それが十勝農業の今の姿なのです。

 

――いま、政府はさまざまな形の農業改革を進めようとしています。これについては、どう考えますか。

 

世界に輸出するブランド品の「十勝川西長いも」 強調したいのは、これまでの歴史を無視し、逆戻りさせてはいけない、ということです。
 戦後、日本国民1億人の食べ物がなくなり、食料増産のため昭和22年に農地解放が実施され、農協法が成立しました。われわれ農業者は義務感と、そして経営者になった喜びに燃え、一生懸命働き国に食料を供給し、一時期には自給率70%を達成したのです。


(写真)
JA帯広かわにしのナガイモ工場(上)と世界に輸出するブランド品の「十勝川西長いも」

 

◆営農指導にこそ農協の意義

 しかし、今の農地制度改革は、小作制度へ逆戻りするような政策です。資本家が土地を持ち、労働者が働くような農業では生産性はあがらず、農業の喜びも感じられないでしょう。

 

――農協改革については、どうですか。

 

 地域には地域ごとの役割と特性があります。だから、中央会がすべて命令を出し、上意下達で動いているわけではありません。北海道には109、十勝だけでも24の農協がありますが、それぞれ山岳地帯、海岸、内陸など条件はさまざまです。隣同士でさえ、営農の形態は異なります。そうした個性あふれる気候風土の中で、適地適作の農業を作り上げてきたのは、地域にあった営農形態をコンサルし、地域組合員の生活と農業経営を支えてきた農協です。中央会は中央会の役割を十分に果たし、それで補いきれないところは、地域の農協が担うという今のやり方が大事なのだと思います。
 例えば、制度の合理性だけを追求するなら、人件費を削り、農協の規模はどんどん縮小し、儲かる事業だけをやるようになります。しかし、それは農協本来のあり方とはまったく逆です。営農指導それ自体が収入をあげないからといって、人を減らすことは有り得ません。
 また、農協は株式会社ではないので、組合員から生活や経営のコンサルでお金をもらうわけにもいきません。地域にあった営農指導で、組合員に信頼してもらい、そして地域の生活を守る。それがひいては食料生産を守ることにつながるのです。
 そもそも、どんどん組織や規模が小さくなるようでは、職員も組合員も夢や希望を持った仕事はできないでしょう。

 

◆誰が国民を守るのか

――最後に、全国に向けて十勝からのメッセージをお願いします。

 

 農業には、食料・農業・農村基本法が示す4つの大きな柱があります。1つは食料の安全保障、2つめが環境を守るなどの多面的機能、3つめが親から子、子から孫へと絶えず続けられる持続的発展、4つめが農村の振興、つまり集落がなければこの国は成り立たないということ。これだけの役割があるのだから、当然たくさんのお金がかかることを、広く国民に認識してもらわなければいけません。
 特に食料の安全保障については、いったい、この国の人たちの食料安全保障を誰が担うのかが問題です。日本は国内で必要な食料4000万トンのうち、実に3000万トンを輸入し、穀物ベースの食料自給率はたった25%。海産物を含めた27%が日本の本当の自給率です。一方、中国やインドはより豊かになり食料を輸入し始め、輸出大国だった米国は地下水の枯渇、気象変動などで安定した食料生産が危ぶまれています。
 そうしたなか、私たち日本の生産者と農協には、まだまだやれることがたくさんあります。最新の技術を取り入れ、もっと生産性を高め、省力化をすすめれば、国が求める自給率50%どころか、その先にいけると思います。何があっても人のせいにせず、自分の役割を精一杯発揮し、前に向かって進んでいくことが何より大事です。そうすれば、十勝のような農業ができるのではないでしょうか。

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