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特集:第27回JA全国大会特集 今、農業協同組合がめざすこと

2015.10.16 
農業と地域に全力!JAの現場から(2) 障がい者の就労支援 空き店舗を〝核〟に一覧へ

JA東びわこ(滋賀県) 働き教育センター甲良

 滋賀県のJA東びわこは支店の統廃合で空き店舗になった支店を活用し、障がい者の就労を支援している。学校法人関西福祉学園(京都市)と連携し、JAの持つ施設を活用。栽培技術などを指導。植物を育てる農作業を通じて技術を習得し、農業法人など、農業関連企業への就労を促す考えだ。JAが障がい者の就労支援に取り組むのは全国でも初めて。今年の4月からスタートした。

JA支店の名残のあるセンターと椋梨センター長 滋賀県東近江の中心都市、彦根市近郊の水田と住宅地が混在するところに、障がい者の就労移行支援事業所「働き教育センター甲良」はある。もとJA東びわこの甲良西支店だったところで、事務所内には支店時代のカウンターや金庫など名残りがある。
 事務所の玄関や周辺に並ぶプランタには事業所の利用者(雇用者)が丹精込めた花が植えられ、明るい雰囲気が来所者を迎える。センターの裏の作業場ではセンターの利用者(就労生)が、パンジーや葉ボタンなどの苗をポットに植え替える作業に汗を流している。
 同センターを運営する関西福祉学園は、滋賀県と京都に5か所の施設を持ち、障がい者の相談・就労支援事業を行う学校法人。
 就労支援事業には、就労継続支援A型とB型があり、「働き教育センター甲良」は、雇用契約を伴うA型。利用者はセンターに雇われ、契約に基づいて働く。
 ことしの4月に開所し、5月から事業開始。5人の利用者からスタートし、現在6人が働く。同学園は「将来50人くらいまで雇用者を増やしたい」(辻勝司理事長)という。
 年齢は20~30歳の人が多く、ほとんどが地元出身者。通いで1日4時間、月~金曜日までの5日間勤務する。センターの目的が就労支援のため、契約期間は1年で更新する。

(写真)JA支店の名残のあるセンターと椋梨センター長


◆CSRの活動として

自分たちで育てたコスモスの前で この事業をCSR(社会的責任)事業として位置付け、支援する企業が増えており、滋賀県内ではブリジストンやヤンマーなどが、JA東びわこと同じように連携企業として支援している。
 ブリジストンは、センターの事務所として、工場内の一室を無償で提供するとともに、職業実習の面でも協力。JA東びわこも同じようなスタイルだが、工場内と農村では環境(フィールド)が異なる。
 もともとJA甲良支店時代、近くにある甲良養護学校とは、人権ボランティア活動を通じて交流があり、栽培したハボタンを公共施設に届けるなどの活動を支援していた。
 一方、関西福祉学園は、この養護学校から卒業生を受け入れていたが、障がい者がうまく適応できず、やめてしまうことが多かった。このため、新しいセンターでは、就職することを見据え、より実践的な訓練や社員(職員)あるいは地域の人とのコミュニケーションをはかる機会を増やした。
 その方針で提携した企業がJA東びわことブリジストン(働きセンター彦根)などだ。農作業を基本とする教育センター甲良は、特にJAの職員を含め、地域とのコミュニケーションという点で特徴がある。

(写真)自分たちで育てたコスモスの前で


◆企業・地域と連携で

植物から学ぶことが多い センターで生産した花苗は、一日かけてJAの12支店に配達するが、その仕事は、すべて利用者の役割。体を動かし、人と接することで自閉症だった人も生き生きと参加している。センターはATM(現金自動預支払機)を併設しており、コンビにも隣接。
 この利用者がセンターを訪ねてくることもあり、また配達で管内を回ることで、地域の人とのコミュニケーションが生まれる。地元の神社の清掃や、今年の夏は甲良町の夏祭りにも誘われた。JAの支店がなくなっても、新しい地域の拠点としての役割を果たしているわけだ。
 さらに植物を扱うことも
他の連携企業と違うところ。同センター椋梨純子センター長は「種まきから始まり、土に触れて植物を育てることで、ここにくるとみんな生き生きしてくる」と言う。
 また何人かはその企業に雇用されるが、就職後のアフターフォローができるのも強味」と、同センター長は評価する。
 なお、「働き教育センター甲良」はスタートしたばかりだが、先行した「働き教育センター彦根」で見ると、訓練内容は、施設内の園芸など農作業、DM(ダイレクトメール)などの封筒入れの事務作業から、就労移行支援として、(1)企業内作業訓練、(2)ビジネスマナー習得、(3)SST(社会的生活技能訓練)やパソコン習得、(4)農作業・スポーツ等を行うとなっている。
 A型の事業所は自ら仕事つくらなければならない。このため働く場所の少ない農村部では成り立ちにくいタイプといわれている。雇用契約を伴わないB型の事業所はあるものの、この地域でもA型はほとんどない。

(写真)植物から学ぶことが多い


◆JAの力で仕事作り

 このため企業と連携して仕事をつくることがセンターにとっては重要になる。この点で農業を基盤とし、総合事業を営むJAは幅広い仕事を用意できるという強みがある。
 JA東びわこは事務所のほか、春しか使わない育苗施設を提供。教育センターはJAの委託を受け、このガラスハウスで花苗を生産する。
 栽培に必要な種子や肥料などはJAが用意。またJAの営農指導員のOBを専属として派遣し、栽培を指導する。そのほか、「米の検査の手伝いや、事務作業、JAだよりのチラシの折り込みなど、さまざまな体験ができる。また地域の耕作していない畑を借りて野菜を作り、直売所で販売してもらうなど、幅広い仕事を経験できる」と、同JA総務部の柳本上司部長は言う。
 10月には、甲良町がまち興しとして取り組んだサツマイモ畑の掘り取りを頼まれている。もともと就労支援事業はセンターと支援企業、養護学校、それに行政の連携で成り立つもの。行政の支援は不可欠だ。その点にも行政の枠を越えたJAの役割がある。
植物育てる喜びを
 JA東びわこ・木村正利理事長は、「JAとして、人権教育や地域貢献の活動に力を入れてきましたが、障がい者の雇用促進はそれが発展したもの。農業分野で就労の機会を増やすことが、地域の再生・活性化につながるものと考える」と話す。
 JAにはいろいろな施設があり、働く機会が多い。これを有効に活用できる。JAを含め、実際の就労につながると、センターの利用者にも好評だ。センターに来て初めて農作業を経験する若林武彦さん(39)は、「普段何気なく見ていた植物だが、実際、栽培してみて、苗がひしめきあっていると、植物も競争しているのだなということが分かった」と感動。
 また「近くの畑の作物の様子をみて、雑草をとったり、肥料をやったりしないと枯れてしまうことが分かります。これまでは家に閉じこもりがちでしたが、ここにきて毎日が新鮮です。機会があれば農業の仕事につくことも選択肢の一つに考えています」という。
 8月に来たばかりの杉谷美雪さんは、「これまでも花が好きで作っていました。先のことは考えていないが、今の仕事が好きです」と、花苗の移植の手を休めずに話す。

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