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特集:第27回JA全国大会特集 今、農業協同組合がめざすこと

2015.10.19 
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JA農協連会長 JA中札内組合長・山本勝博氏

 畜産と輪作体系が確立した畑作中心の農業は、北海道十勝地方をささえる重要産業だ。TPPはその十勝農業を直撃するものだといえる。「大筋合意」に山本勝博十勝農協連会長は、国の支援を見据え、JAの自主自立を強調する。

◆十勝を支える酪農と畑作

 ――北海道はJAグループと行政、経済界が一致してTPPに反対してきましたが、昨日「大筋合意」しました。これをどう受け止めますか。

JA中札内組合長・山本勝博氏 十勝は北海道の農畜産物生産の4分の1を占めています。十勝農協連では2012年に「十勝農業ビジョン2016」を策定し、16年には農業生産高2900億円を目標に取り組んでおり、14年実績は2798億円となり、更に16年を待たずに目標を達成し、3000億円もと期待しています。
 その55%が生乳など酪農や養豚などの畜産で、45%が小麦・馬鈴薯・豆類・甜菜などの農産物です。畑作では、小麦・大豆(枝豆)・馬鈴薯・甜菜・雑豆の輪作体系が確立されているので、品質の良いものが生産されています。つまり、TPP交渉で対象となっている農畜産物は十勝農業の中心的なものですから、今回の「大筋合意」は、大きなショックです。
 しかし、困ってばかりいられないので、「これから、私たちはどうしていかなければいけないのか」ということを改めて議論して「TPPは、怖くない」という気持ちで対応していかなければならないと考えています。もともとTPPの話が出たときに、私は「これからのJAは自主自立していかなければならない」と考え、組合員にも話をしてきました。私たちが自信を持って生きていける。そして子や孫に伝えていけるようなJAでなければいけないと思っています。


◆輪作体系壊すTPP

 ――TPPは十勝の農業に非常に大きな影響を与える...。

toku1510191402.jpg 十勝では輪作体系がしっかり構築されていますから、そのどこかが欠けても成り立ちませんし、簡単に「これが麦の、甜菜の代替え」だとはいえません。もし代替え作物があったとしても、また一から輪作体系を構築し直さなければいけないことになります。中札内村は枝豆を中心に生産していますが、売れるからといって輪作をせず枝豆だけを作ると連作障害により一粒しか入っていないなど規格外品や、菌核などの病気で収量がとれなくなります。それほど輪作体系を守ることが大事です。
 畜産では、例えば生乳ではバターやチーズなど乳製品が入ってくるようになれば生産者に大変なご苦労をかけることになります。
 どれを取上げても、十勝に計り知れない影響がありますから、国がどう支援してくれるのか、しっかり見極めなければいけないと思います。

(写真)輪作体系を確立し、高品質な農作物を安定して供給する中札内村の畑


◆何を「改革」するのか不明

 ――国から「農協改革を」といわれていますが...。

 農協改革についてはたくさんの話を聞きました。農水省の方からは「十勝管内の24JAは、JAとしての見本で問題は何もない」といわれました。そうすると私たちは何を改革するのでしょうか。

 ――中央会が「改革」の矢面に立たされましたが...

 私たちは、中央会はなくてはならない組織だと考えています。改革しなければならないほど、中央会は何か悪いことをしたのでしょうか。問題があったのでしょうか。
 私たちが中央会に頼んでいることを、私たちでやるためには、そのプロ職員が必要です。JAがそういう人材を育てるには何年もかかります。

 ――准組合員の問題が大きくとりあげられていますが...

 JA中札内村は、組合員160戸に対して准組合員は600戸です。准組合員の人たちは、金融やガソリンスタンドを利用し、直売所で野菜や農産加工品を購入して生活しています。また、非農家でも庭などで家庭菜園をする人も多く、この人たちはJAから種子や肥料・農薬などを購入しています。これを制限すると、こんな小さな村での生活ができなくなります。そんな改革がなぜ必要なのか、不思議で理解に苦しみます。

 ――何を改革しなければいけないのかが明確ではない...。

 「これが問題ですよ」「ここを直しなさい」と指摘される事項があり、「なるほど、こういうことを改革しなければ地域のみなさんにご迷惑をかけることになるのか」と納得できればいいのですが、私たちに思い当たることは何もありません。
 組合員との距離といわれますが、JA中札内村では、馬鈴薯や枝豆などの事業部会で組合員が話し合ってJAに提案する仕組みになっているので、組合員とJAに距離など何もありません。


◆1戸当たり千万円超の農業所得

 ――信頼関係が築かれているわけですね。

 信頼というよりも、組合員を守るのがJAの基本的な使命ですから、そのことに全力を注いでいるわけです。
 昨年度のJA中札内村160戸の組合員があげた事業高は、122億7000万円と7年連続で過去最高を更新し、7億142万円と十勝管内JAで過去最高の当期剰余金となりました。そして1億6000万円を事業分量配当金として組合員へ還元しました。
 これは、JAが組合員から預かった農畜産物をただ流通させるだけではなく、付加価値を付けて有利販売を実行しているからです。
 JA中札内村の枝豆生産者108戸から預かった枝豆を全国で有利販売するために、私が先頭に立って消費地で食べてもらい販売量を拡大してきましたし、海外9か国にも輸出しています。そして枝豆加工施設を24年前に設置し、今年12月に建設費を完済できます。そうなれば競合する中国産価格に近付けられますし、組合員への還元も多くすることができます。
 消費地では、求める量を安定的に供給することが求められますから、JAがそれに応える体制を整え、JAのトップ自らが消費地に出かけて販売しなければ、6次産業化といっても成功しません。
 また、枝豆羊羹や味羮はJAで製造していますが、地元での農商工連携を促進して、せんべいやカレー、餃子など、枝豆を原料としたさまざまな加工品を開発し、いまでは63アイテムになっています。

 ――地元の産業振興にもなっているわけですね。

 そうです。そして、JA中札内村の生産農家1戸当り農業所得は1844万円を超え、十勝農協連24JA中20JAが1000万円を超え、残る4JAも全国平均を大きく上回る700万円以上の農業所得となっています。そうしたこともあって、中札内村は離農者が十勝でも一番少ないJAですし、後継者も育っています。
 中札内村は4100人という小さな地域ですが、農業が元気なので、地域も豊かだといえます。


◆組合員を守るのはあたりまえ

 ――北海道、とくに十勝では農業が地域を支える産業としてきちんと位置付けられているわけですね。

 その通りです。そして、北海道から沖縄まで、全国一律で考えていろいろなことを提案されても、無理ですし、誰も理解できないと思います。
 北海道には北海道の、さらに十勝には十勝の農業の在り方があります。さらにいえば、十勝農協連の24JAは、それぞれの地域にあった農業や事業を展開しながら、互いに協力し連携して切磋琢磨して今日を築いてきているわけです。
 十勝農協連に道中央会、ホクレン、JA共済連、道信連の十勝担当責任者を加えたJAネットワーク十勝では、独自に財務基準を設定し、各JAの財務状況についても率直に意見交換するなど、非常に価値のあるネットワークとしての機能を発揮しています。


◆24JAがネットワーク

 ――最後にこれからの農業協同組合の役割について改めてまとめると...

 組合員が生産した農畜産物に付加価値を付けて有利販売をし、組合員に還元する。そのことにつきますし、「組合員をしっかり守る」のは農協人にとって常識です。そしてその地域にあった方法を考えることです。
 そしてTPPによって、日本農業は厳しい状況におかれると思いますが、これからが勝負です。農民が一致団結してその底力をみせる。それが私たちに課せられた「自己改革」ではないでしょうか。

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