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特集:JAは地域の生命線 いのちと暮らし、地域を守るために 2017年今農協がめざすもの

2016.12.30 
【インタビュー・JA愛媛中央会 田坂實会長】農家組合員の声を聞き、農地・農業を次代につなぐ一覧へ

聞き手:村田武 九州大学名誉教授・愛媛大学アカデミックアドバイザー

 田坂實氏は、2004年から愛媛県JAおちいまばりの専務、理事長、さらに経営管理委員会会長を務め、全国のJA直売所では20億円を超える売上高でベスト5に入る「さいさいきて屋」の開設などに取り組まれた。昨年6月にJA愛媛中央会会長に就任された田坂氏への期待は、「JAグループ愛媛営農・経済改革実践運動」(2015~18年度が改革集中期間)にとりくむ愛媛県JAグループの陣頭指揮である。

村田 TPP発効が絶望的となり、安倍政権のアベノミクス成長戦略が八方塞がりです。そのなかで、11月11日の規制改革推進会議農業ワーキング・グループの提言のように、農業改革の成否が農協改革にあるとして、「農協解体」攻撃があからさまになっています。こうした事態をどう受け止められていますか。

田坂實会長田坂 たいへん驚きました。われわれは5年間の改革集中期間として自主的な改革にとりくんでいる矢先の規制改革推進会議の唐突かつ乱暴な提言です。JAは組合員のものであり、ここまで協同組合のガバナンスとマネジメントに踏み込むことは許されません。われわれは、自主自立の協同組合として、組合員の意志にもとづく改革を自ら実践していくことに全力を注ぎたいと考えます。
 アメリカ・トランプ次期政権はTPPではなく2国間FTAを要求してくることが予想され、非常に不安を感じています。今、わが国の関税収入は1兆1000億円で、その多くが農畜産物関税です。農林水産関係予算2兆円の一部もそれが財源です。農畜産物関税の撤廃を迫られれば、農家支援の面から非常に懸念されます。食料自給率が40%を割ったままの状態にあり、関税撤廃はさらにその低下につながります。このことに対する対処、すなわち食料自給率の回復と向上を最優先とする政治を望みます。

村田武氏村田 田坂さんのJA愛媛中央会会長への就任は、同中央会の「JAグループ愛媛営農・経済改革実践運動」(2015~18年度が改革集中期間)のさなかですが、愛媛県JAグループの自主改革をどのように自己評価されていますか。また、そのポイントはどこにあるとお考えですか。

田坂 4か年計画で推進している「JAグループ愛媛営農・経済改革実践運動」は、「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」の3つを基本目標とする愛媛県JAグループの自己改革運動です。今後のポイントは、いかに徹底して組合員目線で改革内容を決定し、実践していけるかです。というのも、農山村を多く抱えた愛媛県は農業者の高齢化が進むなかで、耕作放棄地の広がりが深刻です。
 最新の農林業センサス結果によれば、販売農家の耕作放棄地が3200haと経営耕地総面積3万600haの10.5%に達します。10%を超えるのは、全国で福島県の10.8%と愛媛県だけというたいへんショッキングな数字です。JAグループ愛媛が県下の営農指導にかける予算は年間23億9000万円に上りますが、農地・農業を次の世代につなごうとするなら、生半可な気持ちではだめだということです。
 そして、今、とくに力を入れているのが新規就農者の育成支援や集落営農の組織化、JA出資型農業法人の立ち上げです。たとえばJAえひめ中央の「新規就農支援センター」やJAおちいまばりの「出資型農業法人(株)ファーム咲創(さくぞう)」、JAにしうわの「西宇和みかん支援隊」などは、研修生の受け入れなどで成果をあげています。県内農協の取り組みをサポートするために、中央会・連合会レベルで「JAグループ愛媛担い手サポートセンター連絡協議会」を立ち上げたところです。
 2010年からの6年間に愛媛県での新規就農者は合計で1095人になっています。そのうち505人は40歳以下の青年層です。JAの新規就農者育成支援をさらに強めたいと思います。
 愛媛県のJAグループの「農業者の所得拡大」に大きく貢献している事業として、JA農産物直売所に注目してほしいと考えています。農協直営の直売所は県下で18店舗、その販売高は合計110億円に達し、「直売所共同研究会」を設置して、JA直売所を起点とした地産地消運動の発展を図っています。
 JA直売所ができて地域の小中学校の学校給食の地元産食材の割合が大きく高まり、子どもたちに地域の食についての理解を深めさせ、それこそ地域活性化につながるものだと、関係者を喜ばせています。今全国で食品残渣が800万トン、その処理費用に2兆円かかっているといわれます。直売所を通じて生産者の姿を見せることは、食料の大切さをもっと県民・消費者に伝えることにつながると考えています。
 柑きつ農業の産地化で全国トップにある愛媛県のJAグループには、かつて果樹専門農協がたくさんありました。われわれは専門農協の販売に強いというDNAを保存しています。すなわち、専門農協のDNAを活かした販売戦略の強化によって、「農業者の所得拡大」に貢献したいと考えています。 

村田 JAグループは愛媛県の地域社会再生にとって生命線となっています。2017年にめざすもの、戦略についてのお考えをお聞かせください。

田坂 JAグループ愛媛は、JAならではの総合事業の展開によって「地域のインフラ機能」を発揮し、地域コミュニティの維持に重要な役割を果たしつづけたいという思いから、自己改革のもうひとつの目標に「地域の活性化」への貢献を掲げています。
 JA直売所だけでなく、農山村への移動購買車の巡回が「買い物弱者」対策としていくつかの農協で始まっています。県内12農協のうち9農協が訪問介護事業やディサービスセンターの設置、JAおちいまばりの訪問歯科診療施設2か所設置、JA西条の小規模多機能型居宅介護施設のオープンなど、農協独自の介護事業の取り組みが積極的であることを誇りに思います。
 地域のインフラ機能、コミュニティ機能を支えることは、これからも地域を守り続けるということです。自然環境や農村集落の人々とのつながり、地域の伝統など、農業の基礎ともいえる大切なものを守っていかなければ、将来地域に人は残りません。食と農を通じた豊かな地域づくりをしていくことがJAの使命です。そのためにも、「協同のちから」で助けあいながら地域を守り続けたいと思います。
 また、「JAとして組合員のために何ができるのか」「地域に根ざす協同組合として地域に何ができるのか」を常に問いつづけることを、役職員全体にぜひとも浸透させていきたいものです。
 2017年は「JAグループ愛媛営農・経済改革実践運動」の3年目です。「農家組合員と話す、聞く、そして組合員目線で期待に応える」を合言葉に、ぜひがんばりたいと思います。

〇田坂實氏の略歴
 1949(昭和24)年生まれ、今治市出身。
 1970年合併前の今治南農協に入組。JAおちいまばりの総合企画部長、総務部長、管理本部長、代表理事専務、代表理事理事長、経営管理委員会会長などを歴任。2016年6月から、県農業協同組合中央会会長、県厚生農業協同組合連合会代表理事会長を兼務。

【インタビューを終えて】
「農家組合員と話す、聞く、そして組合員目線で期待に応える」を合言葉にがんばるという田坂實会長の決意をお聞きすることができた。財界の要求そのままの農協つぶしを叫ぶ規制改革推進会議を利用する安倍政権は一刻も早く退場いただかねばならない。八方塞がりのアベノミクスは農業・農協との無理心中を狙っている。そうさせてはならないのであって、農協陣営にはいっそうの奮闘を願いたい。(村田武)
(写真)田坂實会長、村田武氏

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