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特集:JAは地域の生命線 いのちと暮らし、地域を守るために 2017年今農協がめざすもの

2017.01.07 
【インタビュー・JA鳥取中央 福山巌代表理事組合長】大事なことは国民の食料安保一覧へ

JA改革すでに 言うべき事を明確に 全中は指導力を
聞き手:小池恒男 滋賀県立大学大学名誉教授

 梨、スイカなどの果菜類を中心とする西日本でも先進的な産地。生産コスト削減、紙上開拓などによる農業者所得の増大、農業生産の拡大はJA改革が問題になる前から取り組んでいる。また鳥取中部地震では協同の力を目のあたりにした。福山巌組合長に聞いた。(聞き手は小池恒男・滋賀県立大学名誉教授)

 ――JAの自己改革で全国のJAは、経営体質強化のためさまざまな改革に取り組んでいます。合併による一層の広域化もその一つですが、鳥取県ではどうですか。
 
JA鳥取中央 福山巌代表理事組合長 鳥取県中央会は、来年度事業方針のなかで1JAに向けた議論を再開することにしています。かつて研究し、5、6年前に一度まとめた経緯がありますが、それを来年から再開する方針です。となりの島根県が1JAとなり、中国四国ブロックの山口、高知県でも検討しており、合併の流れが出てきたように思います。
 JA鳥取中央では、以前から改革のための委員会やプロジェクトを立ち上げ、できるところから取り組んでいます。大会で決議した農業者所得の増大、農業生産の拡大、地域活性化の3つの目標は、これまで農協が当たり前のこととしてやってきたことです。
 
 ――中・長期の地域の農業ビジョンはどのように描いていますか。

 鳥取県が取り組んでいる「鳥取県農業活力増進プラン」を基本に産地化を推進し、魅力ある鳥取県中部ブランドづくりを進めています。農業振興策を農協として提案し、市・町の「まち・ひと・仕事創生総合戦略」の地方創生ビジョンに盛り込むことで、元気で生き生きとした地域づくりを進めようと考えています。
 提案は農業生産基盤の拡大、農業生産額の拡大、担い手の確保と育成、地域活性化の4本柱で、これに基づき12haのイチゴ団地、30haのハウス施設の増設、梨・柿の新品種の増反、繁殖牛・肥育牛の増頭などを盛り込んでいます。管内は1市4町からなり、それぞれの市町がばらばらではだめで、農協が、農業を中心にした地域振興の戦略を提案しています。そのため、各市町の首長、県の出先機関、それに農協による農業戦略会議があり、提案について話し合い、調整します。
 地域農業振興はJAの自己改革の一番の柱です。所得を上げるとか、新たな需要をおこすとかで農業の生産を維持し、地方創生の本来の目的である仕事づくりに取り組んでいます。それでIターン、Uターンで定住してもらおうというものです。
 北栄町とJAで出資した北栄ドリーム農場のイチゴ団地はその一つです。ドリーム農場では新就農者希望者を雇い入れたり、独立支援したりします。洋菓子の不二家の会長が鳥取出身ということもあって、鳥取県産のイチゴを使いたいという話がきっかけです。また北栄町は「名探偵コナンの町」として知られ、コナンの記念館があります。観光とタイアップも考え、第1号のハウスは、この記念館の近くにつくりました。名前のように、夢を感じられる農業を軌道に乗せたいと思っています。
 
 ――JA鳥取中央は、規制改革会議が問題にする准組合員が1万人を超えていますが。
 
小池恒男 滋賀県立大学大学名誉教授 准組合員のみなさんが農協の組織運営にかかわるようにする仕掛けが必要です。来年からの合併議論再開の検討課題の一つです。全中の一般社団法人化、今度は全農改革と続いていますが、これ以上は、という一線があります。そこでは毅然と対峙していかなければならないと思っています。
 JAの理事の資格にも注文をつけていますが、どういう意味が有るのかよく分かりません。私のところでは既に認定農業者と実践的能力者で4分の3になっています。そうした実態も知って欲しい。
 
 ――JAの自己改革は営農事業改革が中心になると思いますが、生産資材の価格引き下げについて、どのように考えますか。
 
 生産資材については、現場で組合員から常に言われています。1円でも安く提供する努力をしてきました。規制改革推進会議は全農を攻撃していますが、だれも反対できない農業所得増大の名のもとに、農業改革の本丸は全農だと言う。なぜそうなるのでしょう。農業改革を生産資材、コスト問題に陥れ、それを阻害しているのは全農だという。考え方がおかしい。それよりも、世界各国が一番重要視している食料安保、国民をどうやって食わせるかということが大事です。その視点が抜けているのではないでしょうか。
 一般的に農産物の場合、生産者の手取りは小売価格の3~4割ほどにしかなりません。それもコスト含めての手取りです。スイカでみると、肥料・農薬代は10a当り市場販売額の1割ぐらいで、その価格を10%下げても販売額から見れば1%にしかなりません。そして市場価格の倍ぐらいが小売価格となっています。これをどうするのかという議論が必要です。
 買取販売にすると卸売市場は必要ないと言う意見もありますが、無くなると農業者の所得は上がるでしょうか。買取販売には必ずリスクが伴うので、リスクをコストに入れて買い取らざるを得ません。いまの市場制度はそのリスクを市場の卸・仲卸売会社が負っています。青果物の集荷・ストック・分配、そして価格形成・代金決済等世界でも最も合理的なシステムです。もちろん改革は必要でしょうが、買い取りによる直取引きが所得増につながると単純に言うのは間違いです。
 購買事業でも全農が取引の当事者でなくなれば、農協がそれぞれメーカーと交渉しなければなりません。だから全農があるのです。全農以外とも取り引きするようにと言いますが、すでに多くの農協でやっていることです。
 
 ――全農、全中は何を改革しなければならないのでしょうか。
 
 全農は手数料やコスト等をはっきり知らせるべきだと思います。物流の姿・内容などがはっきり見えるようにしてほしい。われわれ単協は肥料、農薬、その他生産資材では手数料が何%か分からないということはありません。取り引きの情報をオープンにして信頼感を高めることが必要です。
 もう一つは、生産にもっとコミットしてほしい。いま商系は次々と生産に参入し、優秀な担い手をどんどん囲い込んでいます。JAグループのバリューチェーン構築が必要で、それができるのは全農です。生産現場で全農の事業が役に立っていることが分かると存在感が高まります。
 全中については、現場から少し離れすぎているのではないかなと感じています。農政問題などで頑張っていますが、本当の意味で現場を掌握し、それをJAの政策として打ち出してきたか、発信してきたかが問われます。もっと現場を歩いて生きた政策をたて、JAをリードしていただきたい。
 同じ国内でも、東北・北海道と中山間地域の多い中国地方の農業は、生産している作目や経営規模などが違います。政策要求として一本化することは重要ですが、中山間地域のこまめの要求も取り上げてほしい。地方をもっと歩き、今まで以上にリーダーシップを発揮していただきたい。
 
 ――国は農協について、地域協同組合でなく専門農協でよいと言っています。どう考えますか。

 それは無理です。全国的にも営農事業で利益を出している農協はほとんどありません。JA鳥取中央でも、指導部門だけで3億円ほどかけていますが、専門農協化すると、この経費はどこから得たらいいのでしょうか。販売事業からといっても、たやすいことではありません。信用共済事業の利益で賄うしかありません。かつて果実の専門農協がありましたが立ちゆかなくなり、総合農協に吸収された経緯があります。総合力というのが農協の強みであり、世界の協同組合が日本の総合農協を評価している所以です。

 ――10月の鳥取県中部地震では、復興に対してJAが大きな役割を果たしたと聞きましたが。

 農協は素早い対応ができたと思っています、近畿、中国ブロックや、全共連からも職員を派遣してもらい、農協の職員は自宅の片付けは後回しにて、地震の翌日から共済の査定を始めることができました。契約者からは、「農協でよかった。建更に入っていてよかった」と感謝されました。しばらくたってある町長から、「ありがとう」と言われました。「こういうことが起こると農協の力は大したものだ。被災者の復旧・地域の振興に大きな力になる。協同組合の力は偉大であることを再認識した」と感謝されました。地域で農協は大きな存在だということを改めて感じました。

 ――ありがとうございました。

(ふくやま・いわお)
 昭和50年鳥取県信連入会。平成2年大栄町農協専務理事、同10年鳥取中央農協理事。14年同農協代表理事常務、17年代表理事専務、22年代表理事副組合長を経て、23年代表理事組合長。

【インタビューを終えて】
 地域農業振興に全力で取り組んできた自負が、いまさらのように「農業所得の増大、農業生産の拡大」をいう政府・官邸に対する反発、違和感の強さにむすびついているのだなと、強く感じました。
そしてまた新たに、地方創生を通じた特産梨の振興、イチゴ団地の造成、他の園芸品目の振興、畜産クラスター事業を活用した繁殖・肥育牛の増頭を盛り込んだ4本柱の地域農業の振興計画の実施に向けて力強く歩み始めている姿が印象的でした。(小池恒男)

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