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特集:JAは地域の生命線 いのちと暮らし、地域を守るために 2017年今農協がめざすもの

2017.01.13 
【インタビュー・JAちば東葛 勝田実代表理事組合長】JAブランド力は環境保全型農業一覧へ

コウノトリと共生 若手農業者を組織化 自治体、商工会と連携
聞き手:東京農業大学名誉教授 白石 正彦氏

 JAちば東葛管内は都市化が進む一方で、若手農業者を中心とするブランド力のある伝統野菜の栽培も盛ん。また行政と連携し、コウノトリの放鳥による黒酢米の栽培など、自然と共生する環境保全型の農業をめざしている。勝田実組合長に都市農業とJAのビジョンについて聞いた。(聞き手は白石正彦・東京農業大学名誉教授)

 ――JAちば東葛は大都市近郊の地域特性を活かし、どのような経営理念とビジョンで運営していますか。
 
JAちば東葛 勝田実代表理事組合長 JA管内は、東京都心から20~40kmの通勤圏内にあり、千葉県北西部の野田市全域と柏市・船橋市の一部地域を包含した総人口が54万人の大都市近郊地域です。一方で耕地が約3000ha(水田率48%)あり、比較的若い農業者も多い農業地域でもあります。JAの平成28年3月末の正組合員、准組合員の個人はそれぞれ5000人、1万人で、28年度の販売取扱高は31億円(うち野菜68%、畜産19%、米6%)、年度末貯金残高は1800億円の規模です。
 JAの経営理念は、(1)未来へとつながる農業を築きあげる、(2)組合員・地域の皆様と共に豊かな地域社会づくりをめざすことの2本柱です。ビジョンでは、(1)安定した生計をたてることが出来る農業環境づくりに力を注ぐ、(2)組合員や地域の皆様ひとりひとりの声を大切にする、さらに(3)農業を通じて自然環境の保全に取り組み、豊かなまちづくりをめざす、ことを明確にしています。
 
 ――JAの組織改革にはどのように取り組んでいますか。
 
 JAは平成22年に、飛び地となっている東葛地域の3つのJA合併で発足しました。このうち、野田地区と柏地区は東を利根川、西を江戸川が流れこれを挟んで茨城、埼玉県と接しており、西船橋地区は東京湾に面しています。
 さらに、昨年10月の臨時総代会で今年4月には、JA東葛ふたばとの合併が承認されました。今後、東葛地域一円の広域合併も想定されます。
 現在、JAの地区運営委員会を充実させ、非常勤理事を中心に地区ごとの協同活動を強化していますが、さらに基幹支店を中心としたブロック制の導入を考えています。
 JA職員の人材育成面では、協同組合人らしい専門の技能向上が最優先されるべきですが、加えて本JAでは職員の自発的サークル活動が活発で、例えば今年度のJAグループの軟式野球県大会で優勝するなど、横断的なチーム力が若手職員に広がり職場環境が明るくなっており、ソフトな組織風土改善を重視して支援しています。
 
 ――青壮年部・女性部、生産部会組織さらに地元の自治体・商工業者と連携して農畜産物のJAブランド力の向上や地産地消にどのように取り組んでいますか。

東京農業大学名誉教授 白石 正彦氏 管内には野田地区の枝豆(減農薬栽培)、柏地区の小カブ(GAP等を導入)、西船橋地区の小松菜(葉物共販部員がエコファーマー)と、それぞれ伝統があり、ブランド力を持った野菜があります。
 こうした野菜や果実、米、畜産物のブランド力を向上させるためには、まず地元の農畜産物を知ってもらうことが大事で昨年5月にJR柏駅近くにアンテナショップ「daichi」をオープンしました。繁華街の中心という立地のよさもあり、若い女性や子ども連れも多く、主に地域の農畜産物加工品や地元の酪農家の生乳等によるジェラードやスムージーなどが人気です。西船橋にあるJA農産物直売所「ふなっこ畑」(出荷者200名)は新鮮な地元産の農畜産物を地域の消費者のみなさんに販売し、PRしています。 
 昨年3月には埼玉県の管理栄養士と共にJA葉物共販組合の組合員2名が、県産農畜産物地域ブランド商品開発コンテストで「小松菜とピーナツの汁粉」が最優秀賞に輝いており、米粉や小松菜などの地元農産物を使った加工品の開発や品揃えを充実させる予定です。
 地元産小松菜のパウダーを使用したパンマルカンは、船橋市災害用備蓄品の一つで、当JAでも、JAのネーミングを明示して販売しています。営農経済事業改革にはJAの直販事業部が中心に直売店舗の増設を進めており、そのネットワーク化が重要だと考えております。
 管内の西船橋地区では、行政だけでなく地元企業や飲食店と提携した小松菜のイベントなどの取り組みが定着しています。また、柏地区には老舗の菓子屋、野田地区には大手の醤油メーカーがありますので、商工会などとの連携を強めていこうと思っています。
 
 ――未来へとつながる農業を築きあげるため若手農業者やJAの青壮年部・女性部への支援にどのように取り組んでいますか。
 
 地域農業振興には次世代づくりがポイントですのでJA青壮年部協議会と3地区の青壮年部の活動を本店の指導経済部と各支店の営農指導員が連携して支援しています。このうち野田地区(木間ケ瀬)の青壮年部長は、420aで長ネギを中心に複数のスーパーへ直販し、さらにJA直売所等も活用し高付加価値農業をリードしており、TAC担当職員は営農指導や青壮年部活動を支援しています。また、野田地区木野崎には祖父の農業経営を父親が農外就業のため、1世代飛び越して30歳代の長男が1昨年JAの全国組織を退職後にUターンし、普通畑90aで枝豆・ほうれんそう・春菊を栽培しており、5年後には6haに拡大をめざしており、注目しています。JA女性部は短期大学開催や多彩な生活文化活動に取り組んでおり、これらをJAが支援しています。
 また、JA主催の"婚活イベント"(農業や酪農に興味のある20~40代までの独身女性を募集)「農コン開催!!」を農協観光ホームページからWeb申込み、またはエヌツアーコールセンターを通じて受け付けた結果、今年度は予定の応募者が上回り、このイベントで着実にカップルが生まれています。
 
 ――コウノトリが生息し、農業法人・家族経営・水田オーナー市民・JA・自治体が協働した環境保全型農業づくりにどのように取り組んでいますか。
 
 JAでは学校給食への地元農産物の供給や食農教育活動を積極的に展開しています。野田地区では毎年、組合長の私が市長、教育長と市内の小学校に行って、地元産の減農薬黒酢米や米粉パンなどを子どもたちと一緒に食べ、米づくりや農業についての話をします。そのときはJAの"ラッキー"などのキャラクターも連れていきます。将来の地域を担う子どもたちに農業やJAの仕事を知ってもらうことが大切です。
 さらに野田市は飼育施設「こうのとりの里」でコウノトリの飼育・放鳥事業などを行い、一方で環境保全型農法の定着のため「(株)野田自然共生ファーム」(99%市の出資、他に5名の農業者が出資)を設立しています。同市は利根川、江戸川、それに両河川を結ぶ利根運河に挟まれた地域で、利根運河の周辺には90haほどの広い谷地田があります。不耕作地が広がるのを防ぐために取り組んだのが「共生ファーム」で、環境保全型営農と水田型市民農園に取り組んでいます。そこを拠点にしたコウノトリの放鳥です。
 コウノトリの行動範囲は広く、放鳥するには餌になるドジョウや小魚が生息する環境づくりが必要で、農薬を減らし殺菌効果のある黒酢を混ぜてヘリコプターで散布する費用を市が負担しています。そこで作ったのが特別栽培の減農薬黒酢米で、現在、市内の水田の約半分にあたる500ha以上で実施するまで広がっているJAブランド農産物です。
 私が「コウノトリと共生する地域づくり推進協議会」の副会長を務めていますが、JAとして積極的に支援しています。
 
 ――戦後、農協が設立されて70年。「いま農協運動がめざすもの」は何でしょうか。
 
 政府の政策は多面的な農業・農村の価値を発揮する多様な担い手とJAの連携を支援すべきですが、現段階では主として農協批判に変質しているところに最大の問題があります。JAグループや本JAにおいては組織主体である正組合員と准組合員の結集力を土台に農業所得増大などの経済的目的と地域の農と食、環境・暮らしに貢献する農の社会的目的さらに文化的目的の3つを結びつけて、JA組合員と市民・自治体・国民が共感し納得できる地域循環型のJA事業への斬新な改革運動を加速すべき大転換期にあると思います

 ――どうもありがとうございました。

(かつた・みのる)
 平成3年~9年ちば県北農協理事、18年同農協理事。20年代表理事組合長。22年ちば東葛農協代表理事組合長。

【インタビューを終えて】
 勝田組合長がJAのトップリーダーらしく「信賞必罰」と「和顔愛語」を座右の銘とされ自らの言動を律して、当JAの地域特性を活かして課題解決に挑戦されている姿に感動した。今後とも、国内外の人びとに当JAが総合農協として農の価値を環境保全型農業によって引き出し、地域社会に貢献し続けるJAブランド力のすばらしさを誇りとして発信し、地域ぐるみの内発的改革運動を前進させてほしい。   (白石正彦)

※JAちば東葛の「葛」の字は正式には内側がヒの表記です。

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