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特集:第63回JA全国青年大会特集号

2017.02.13 
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提言
使命とプライド持ち 運動を
岡山大学大学院環境生命科学研究科教授 小松泰信氏

 農業協同組合へのいわれなき攻撃は、農業という産業の崩壊と農村社会の衰退を加速させる。この「有事下」にある現在の状況をしっかりと肝に銘じ、次代の農業と地域社会を切り拓くための闘いが、今、JA青年組織に求められている。小松泰信教授が青年組織の歴史をふまえ盟友に提言する。

◆青年組織はアクティブたれ

岡山大学大学院環境生命科学研究科教授 小松泰信氏 2015年10月に開催された第27回JA全国大会の決議事項で注目したのが"組合員の「アクティブ・メンバーシップ」の確立"である。アクティブ・メンバーシップとは、"組合員が地域農業と協同組合の理念を理解し、「わがJA」意識を持ち、積極的に事業利用と協同活動に参加すること"である。
 理屈の上では、協同組合の組合員が「わが組合」意識を持つのは当然で、わざわざ全国大会で組織決定しなければならないことではない。しかし実態は、組合員の顧客化が進み、当事者意識の希薄な組合員が増えていることを反映したものである。
 多くの青年組織や女性組織が、すでにアクティブ・メンバーシップを確立しているとしても、当事者意識が希薄な正組合員や新規加入の准組合員、あるいは職員に対して組合員のアクティブな姿を具体的に示すために、さらなる確立に向けた不断の取り組みが不可欠である。
 ただしそこで問われるのが、JA青年組織は、何に向かってどのようなアクティブさが求められるのか、という今日的問題である。

◆ポリシーブックを武器に

 農業協同組合論のテキスト『私たちとJA』に記された青年組織の活動や位置づけは、次の3点に要約される。
 第一点は、日本の「食」を支える若手農業者たちが集まり、営農強化、地域づくりなどの活動を行っている組織である。 第二点は、2011年度より、ポリシーブック(盟友一人ひとりが営農や地域活動をしていく上で抱えている課題や疑問点について、盟友同士で解決策を検討してとりまとめた「政策・方針集」。以下PBと略す) への取り組みを活動の中心としている。
 第三点は、PBの取り組みによって、コミュニケーションやリーダーシップを学び、相互研鑽を積むことから、地域農業やJA経営のリーダーの育成組織として位置づけられる。
 第二、第三の点から、PBが青年組織の現在を象徴する重要な役割を担っていることは明らかで、「まさに時代に求められた武器」と評価されている。そしてこの武器を用いて、2010年8月に決定された"新たな農政運動基本方針"の実現が期待されている。
 基本方針は次の4項目からなっている。
(1)生産者主導の農政運動を確立しよう。
(2)自立的な農政運動を確立しよう。
(3)民主的・公正・誠実な議論・集約を武器に幅広い政党、政治家からの信頼を勝ち取ろう。
(4)政策提言を活用し、地域社会をはじめ国民各層からの信頼を勝ち取ろう。
(「JA全青協創立60周年記念誌『農魂』」JA全青協、2016年、18頁)
 PBやこれらの基本方針について否定する理由はない。ただし、悠長に構えている気がしてならない。青年組織と盟友が日々活動している農ある世界が平時の時ならば問題はない。今は明らかに"有事"である。もっと闘う姿勢を前面に出すべきである。

◆有事こそ青年組織が行動を

1962年の米価大会(日本武道館) 青年組織が、有事下においてどのように考え、いかなる行動をとるべきかのヒントとなる、過去における取り組みを前掲の『農魂』から6項目紹介する。
 (1)前史ではあるが、昭和一桁期の反産運動(肥料商、米穀商、などによる産業組合への反対運動)に対して千石興太郎氏らの指導により反・反産運動が展開された。産業組合青年連盟(産青連)は全国各地で反・反産運動の中心的存在として活躍する。ただし若手農業者の意思と産業組合の運営が乖離していることに問題意識を持ち、連合会の事業計画が天下り的であり地域に立脚していないことを批判するなど、産業組合・連合会・中央会に対して"言うべきことは言う"という「実践的批判者」のスタンスをとった。
 (2)1953年5月農協青年組織の組織目的のあり方・性格を定義するいわゆる「鬼怒川5原則」が採択され、翌54年に全青協が設立される。鬼怒川5原則にある「政治的に中立の組織である」をめぐって、政治活動にどこまで関わるべきかという議論と対立がくすぶっていたが、63年には政治に積極関与すべしとの観点から"解釈文"が変更される。すなわち、若手農業者の求める方向性と実際の政策のズレが次第に明確化・先鋭化してきた象徴的な出来事とされている。
 (3)農業情勢が厳しくなる中、1974年の「米価要求全国大会」において、怒りを爆発させた一部盟友が壇上を占拠した。この間の事情は、「行政に対する要請、陳情、請願に終始した物乞い、物もらい運動にはもはや限界がある。マンネリ化した農協農政運動を改革するのに、われわれが立ち上がらなければ! という危機感が、あぜ道の声として村々から出てきた」(富樫文雄氏)ことから推察される。
 (4)90年代に入るとアメリカ大使館周辺の2・5<CODE NUMTYPE=SG NUM=5B89>を英文のプラカードをもって取り囲んだり、市場開放論が強まるマスコミの論説委員・解説委員と盟友約100名による討論会を企画したり、従来にない運動を実施した。
 (5)92年秋、米の緊急輸入米を載せ横浜港に到着した第1便に対し、3隻に分乗した盟友が海上から抗議した。
 (6)92年には、「農業政策確立研究会」を設置し、12月に「青年農業者が目指す食料・農業・農村政策」という1万字を超える提言書を作成し、政府・与野党への要請などに活用した。
 もちろん組織的武勇伝としても語られることがあろうが、青年組織ならではの熱き思いを感じさせる、まさに組織運動の数々である。
 これらの組織的遺伝子を眠らせておくべきではない。あの手この手を使い、JA全中を戦えない組織にしたのは、この遺伝子が目覚めることを恐れるからである。そしてこの圧力に屈して出てきた対話路線は、現場の怒りに目を背けた自己保身のための単なる逃げ口上でしかない。

◆目覚めよ! 眠れる遺伝子

1985年牛肉・オレンジ自由化阻止運動を強力に展開(JA全青協創立60周年記念誌より) 最近盟友から、「トランプ大統領になって、TPPから二国間FTAになりそうですが、これからの農業は不安だらけです。青壮年部としてどのような反対運動をしたら良いか」という質問を受けた。"不安だらけ"という表現に形容しがたい胸の痛みを覚えながら、次のように答えた。「FTAは、TPPをスタートラインにおいてはじまるはずだからTPP以上に日本農業にマイナス影響を及ぼすはず。当然、反対すべきだ。私も反対する。本気で反対するなら、理路整然ではなくてもいい。まず自分自身が反対であることを表明すること。組織的対応はその後。組織決定をしたら、JAグループだけではなく、他の協同組合陣営、とくに生活協同組合と連携した運動を展開する。さらに、地元の商工会や青年会議所にも働きかける。なぜなら、地域農業の衰退を加速させ地域経済を低迷させることが容易に想定されるから。絶対にやってはいけないこと。それは、FTAに意欲を示す政党や政治家とつるまないこと」である。
 青年組織にとってもJAグループにとっても、最後の姿勢を貫くことが最も難しいことであろう。しかし、TPPの国会承認過程において、JAグループが支援した衆参両院の議員たち全員が行った裏切り行為を経験した青年組織やJAグループのこと、もう過ちは犯さないはず、と信じたい。
 前述した基本方針の(3)には、「民主的・公正・誠実な議論・集約を武器に幅広い政党、政治家からの信頼を勝ち取ろう」があげられている。PBという武器を駆使した政策論を機軸とした、政党や政治家との等距離外交を展開すべきである。
 その場しのぎの甘言や巧言を弄する発信力しかない政治家のパフォーマンスに見惚れ、聞き惚れる必要はない。地域に根ざした目線で、あるべき政治の姿を自分たちの素朴な言葉で提起する。これが基本方針(2)の「自立的な農政運動」の実践である。
 (2)(3)を愚直に行うことが、基本方針(4)の「地域社会をはじめ国民各層からの信頼」に導くことになる。

◆地元メディアと連携を

 (2)(3)(4)という基本方針を遂行するために、青年組織とその盟友に求められる姿勢を示しておく。
 第一には、基本方針の(1)に示された「生産者主導の農政運動」を肝に銘じることである。より焦点を絞るなら、"生産者"であることの使命とプライドをもって運動に取り組むということである。使命を果たさせない、あるいはプライドを傷つける、そのような事態に対しては、兵糧攻めをするぐらいの気概が求められる。この兵糧攻めこそ、生産者が持つPB以上の武器であることを自覚すべきである。
 第二には、地元のメディア(新聞や報道機関)との連携を強化することである。彼らも、地域に根ざし、地域と共に生き続ける存在である。両者が情報交流を密に行うことで、地域住民の地域農業へのまなざしは確実に変わるはずである。これも運動の一形態といえよう。ちなみに、全国的メディアの眼中にあるのは政財界や省庁である。
 第三には、学ぶ姿勢である。悲しいかな、盟友をはじめJAグループの構成員における、農業やJA関連情報を多数掲載した新聞や雑誌の購読率が年々低下している。情報の共有は組織運動にとって不可欠である。猛省すべきである。

◆政治家の裏切り忘れず

 今、JAグループはいわれなき弾圧を受けている。
 繰り返すが、農ある世界は有事下にある。この間の出来事は、政権与党や規制改革推進会議が、農ある世界から発せられる声に対して、聞く耳を持たないことを証明している。
 自らが支援した政治家たちの裏切りも決して忘れるべきではない。彼らも弾圧する側に回ったのだ。弁解に耳を貸す必要はない。
 この弾圧は、単に農業協同組合をつぶすだけにとどまらず、農業という産業の崩壊と農村社会の衰退を加速させる亡国の所業である。
 農業協同組合の青年組織がその渦中にあって、闘う姿勢を示すことは間違いなく多くの人々に勇気と希望を与えるに違いない。
 「JA青年組織」なめんなよ。
(写真)1962年の米価大会(日本武道館)、1985年牛肉・オレンジ自由化阻止運動を強力に展開(JA全青協創立60周年記念誌より)

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