JAの活動:農協改革を乗り越えて -農業協同組合に生きる 明日への挑戦―
五所川原農林高校の挑戦 日本の農業を世界につなげる(前半)2017年10月31日
人口減少などで国内市場は縮小するから、日本農業を続けていくためには、海外に輸出することだと盛んに言われている。そして東京オリンピック・パラリンピックで訪日する海外の人たちに食材提供するためにも生産者はGAP(農業生産工程管理、適正農業規範)を取得する必要があるとも。しかし、JAなど生産現場では必ずしも進展しているとはいい難いのではないだろうか。だが、こうした課題に果敢にチャレンジし、グローバルGAP(以下、GGAP)認証のリンゴを海外へ輸出し自ら販売している高校生たちがいる。青森県立五所川原農林高校の生徒たちだ。
◆農業の存続に危機感!
(写真)最初のGAPチームの15名
「私はこの学校に赴任するまで農業とは一切無縁でした。専門は英語の教師です」と、山口章五所川原農林高校(以下、五農)校長。農業未経験の山口校長は五農に赴任してから「まっさらな目で農業をみつめ」ることで、「青森県の農家は5年で9200戸も減少」し、五農の生徒も「父母は勤め人だが祖父母が農業を...」を含めて「実家が農業は2割以下」、五農を卒業しても65%は農業関連以外の仕事に進むという現実を知り、農業の存続に「危機感」をもち、何をすべきかを考える。
そして、日本の農業は、生産工程レベルが高いことや少量・多品種栽培が多く、国内流通に主眼を置いていることから、これまでは世界に目を向ける必要がなかった。しかし、日本社会そのもののグローバル化が急速に進んでいるので、未来を担う高校生には世界の常識を教えなければいけない。その「世界の常識」とは、グローバル・アグリビジネスにおける農産物の安全にかかわる第三者認証で、世界124か国の18万もの経営体が認証されている、グローバルGAPだ。
(写真)今年は28名が挑戦したGAPチーム
◆試験ではなく改善-GGAPの審査
認証取得のターゲットは、五農がある津軽の主要農産物「リンゴ」と決め、平成27年にグローバルGAP認証取得の先駆者・弘前市の山野リンゴ(株)社長山野豊氏を招き講演会を催し、全校生徒を対象に認証取得に挑戦する生徒有志を募ると15名(8月なので1、2年生のみ)が名乗りをあげ、挑戦が始まる。
15名のGAPチームにとって最初のハードルは、「書いてあることを理解する」ことだった。分からない言葉は、一つずつ調べ、園地を見回り、何度も話し合い、リスク管理やデータ化などの整備を進め、五農のリンゴ販売先約10か所にトレーサビリティの仕組みを取り入れていくなどをしてGGAPの理解を深めていく。
そして審査の日を向かえる。審査員の質問にはすべて生徒たちが回答する。審査は「落とすために採点される」とGAPチームは思っていた。ところが「なぜこうするのですか?」と聞かれ「日常的に考え行っていることを正直に」答えると、「それはこうした方がいいのでは...」と課題を明確にし改善点が提案されるなど「試験ではなく対話」だったことに驚いたという。
例えば、残留農薬検査はほ場のどの箇所のデータでかという問いに「ほ場の四隅と真ん中」とごく常識的に答えると、「散布の最初と終わりの地点、そして折り返し点で濃度が高くなりませんか?」と、具体的で納得できる改善方法が提示される。各項目についてこうした対話をするので、審査は8時間かかる。
取り組み始めて4か月、27年12月に五農GAPチームは、日本の高校で初めてGGAP認証を取得した。このことを小泉進次郎前自民党農林部会長が取り上げ「GAP取得の重要性」を全国に宣伝し、五農の名前が全国に轟きわたる。だが、これは彼らにとっては一つの通過点に過ぎなかった。
◆青森・リンゴは日本のGAPの出発点
その前に、日本におけるGAPについて振り返ってみる。
日本でGAPが話題になったのは、青森のリンゴ農家が(山野さんもその一人)が、欧州にリンゴ輸出と考えたとき「ユーロGAP(現GGAP)認証を取得していないと欧州は輸入しない」ことが分かり、ユーロGAP取得に挑戦すると同時に、同等の相互認証できるような日本のGAPをつくりたいと考え、生産者が中心となり日本GAP協会(JGAP)を平成18年に設立する。その後、農水省も後押しして現在の県GAPを含めたGAPの流れが生まれていく。その後、紆余曲折があり、GAPへの糸口をつくった生産者は、JGAPを離れ、GGAP認証取得に力を注ぐ。
日本のGAPは、青森のリンゴ生産者から始まり、いま同じ青森・津軽の五農の生徒によるリンゴで世界に羽ばたこうとしているのだ。
後半では・・・
◆パスポートは飾り物ではない
◆卒業後の進路逆転65%が農業関連に
◆高校生コンサルで地域へGGAP普及
・・・後半へのリンクはコチラ
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