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特集:農協改革を乗り越えて -農業協同組合に生きる 明日への挑戦―

2017.11.06 
【インタビュー木下小次郎・日産化学工業(株)社長】地域農業の特色を活かしたビジネスモデルを(後半)一覧へ

聞き手 谷口信和東京農大教授

 耕作放棄地については、政府が推奨している法人経営や大規模化、企業の農業参入は有効な方法だとは思いますが、一番大切なことは「なぜ、耕作放棄地が生まれたのか」という原因です。まず、これを明らかにすることから耕作放棄地問題への取り組みが始まるのではないでしょうか。国や自治体が原因究明を含めて本腰を入れて考えなければ、抜本的な解決にはつながらないと思います。

 

◆地域の多様性活かし 楽しく儲かる農業に

 ―新規就農者、担い手についてはどうお考えですか?
 
木下小次郎・日産化学工業(株)社長 法人化、大規模化による新規就農者の増加は期待できます。その前提は農業を魅力あるものにすることです。そのためには、安全・安心の確保と食料供給の厳格化による農産物商品ブランドの確立が必要です。

 

 ―農業が楽しいものでなくては、人は来ないのに、農林水産業は"汚い""つらい"という意識が強くあります。これをどうにかしないといけないと思いますが...。

 その概念は観念的、文化的にこびりついていますので、はずすのは大変ですが、教育し正しい知識を提供することが大切です。根本から変えるのは経験です。農業体験・就農体験の機会を1回でも与え「けっこう面白い」という経験を作り出す。そういう場を提供する側も「文化を変えるのだ」という気持ちで取組まないといけない。

 

 ―水田農業の維持については...。

 水田の役割について考えることは、最近、水害が多いこともあり保水能力の確保です。そして景観の保持です。もっとお金をかけて水田を維持していく必要があります。

 

 ―米や日本酒が旨いのは、積雪寒冷地帯です。それは雪が春に向かうなかで徐々に溶けて地中に染み込み、その水で稲を育て、酒をつくっているからです。四季があり農業や自然が維持されている、それが文化であるということを考える必要がありますね。

 水田には大きな多様性があり、大事な役割を担っているという捉え方をしなければならないと思います。

 

 ―農産物直売所についてはどう見ていますか。

聞き手・谷口信和東京農大教授 日本は地域によって季節によって農産物が異なっていますから、地域ごとの特色ある戦略商品をつくっていくことが大事だと思います。それをインバウンドの増加と結びつけることが日本の農作物の国際的認知にもつながるのではないでしょうか。

 

 ―かつてダイコンは日本各地に270種類ありましたが、一時27種に集約されました。それは270もの多様なものを食べるチャンスを奪われたということでもあります

 その地域ごと、銘柄ごとの需要があります。その多様性が日本農業の凄さですから、それをもっと強化していくことです。農業の見方を変えていくべきですし、農業の魅力の発信が必要だと考えます。


◆"自立自存"の思想で "あてにされる農協"へ

 ―最後に、地域農業におけるJAの役割についてお聞かせください。

 JAは小規模農家への営農指導などを担っていますが、もっと総合的に地域振興をどうJAが中心になって主導していくのかが非常に重要なことです。日本農業は紆余曲折を経て今日があるのですが、一貫して大事だといわれてきたのは「自立自存の思想」です。この考えに基づく農家経営をどう実現していくか、というときにJAが果たすべき役割は大きいですし「あてにされる農協」とはそういうことです。

 

 ―そのときのポイントはなんですか?

 どうすれば儲かるかという営農指導をしていくことが、JAの大事な役割です。そういう意味を込めて私がJAグループに期待することは、組織力を活かした農産物輸出をもっと具現化すること。そして家族経営を大事にすると同時に、ビジネスとして成り立つモデルを地域ごとの特色を活かして作ることです。これらにより、国内の生産力が向上し、私たち生産資材メーカーも恩恵を蒙ることができますから、そういう流れをつくっていただきたいと思います。

 

【インタビューを終えて】
 ニューヨークで"我々は99%だ"と叫ぶデモ行進に出会ったときに、世界は変わりだしたと実感した大企業社長のみずみずしい感性に感銘を受けた▼誰もが若かりし頃にもっていた素直な感覚を豊かな経験を積んだ熟年に至るまで持ち続け、それを高みに引き上げることの大切さを教わったからである▼日本初の化学肥料メーカーから出発した日産化学は今日では除草剤のみならず、半導体・医薬品へと進出し、価値創造型企業から、"社会の要請に応える未来創造型企業への"脱皮をめざしているという▼そこでのキーワード、"独自性と革新性"は日本の地域農業が求められている課題そのものであり、それを中心になって牽引することがJAに求められると力説される社長の言葉は自社の発展の歴史を踏まえただけに説得力があった▼とりわけ、農業経営やJAにおける"自立思想"の重要性を説かれたのは、近年のJAをめぐる改革論議に欠落していたものを見事に言い当てた"頂門の一針"であった。(谷口信和)

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