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【クローズアップ・農政】農政運動2013秋の焦点 農協組織の存在意義発信を  冨士重夫・JA全中専務理事に聞く2013年8月30日

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インタビュアー:田代洋一・大妻女子大教授
・交渉加速化を見据え
・海外農業団体と連携
・国会決議を守らせる
・JAは地域に貢献
・農地集積に積極的関与
・支店を拠点に存在感を

 TPP(環太平洋連携協定)交渉は8月末まで行われたブルネイ交渉で年内妥結が強調され、交渉の加速化が懸念される。一方、国内では規制改革会議が農業をテーマに議論を始め農協組織の改革がまだ俎上に乗る可能性もある。
 こうした農政課題に対してJAグループはどのような運動と事業への取り組みを進めるべきか、JA全中の冨士重夫専務に聞いた。

TPP交渉・規制改革議論への対応

◆交渉加速化を見据え

冨士重夫・JA全中専務理事 田代 最初に日本が正式参加することになったTPP(環太平洋連携協定)交渉について今後、どう対応していくのか、お聞きしたいと思います。
 冨士 情報が開示されずよく分からない部分が多いこと自体が問題ですが、ブルネイ会合冒頭の閣僚会合でフロマンUSTR(米通商代表部)代表と甘利経済再生担当大臣は年内合意に向けて交渉を加速化していくと表明しました。(関連記事3面)表向きはおそらくそうなのだろうと思いますが、一方では各国それぞれセンシティブな問題を抱え主張に溝があるなど困難な状況が依然としてあることにも言及しており、専門家の見方は年内合意は難しいのではないかということです。
 しかし、目標は一括合意であっても一部先行している分野だけ妥結するという動きもあり、やはり加速化することを見据えながら対処していかなければならないと考えています。
 田代 米国などは先に決まるものは決めてしまえばいいと考えているようですが、そうなると農業だけが分断され最後まで残されてしまうのでは、という心配もあって国民的運動が展開しづらくなりそうです。
 冨士 TPP交渉は交渉の仕方が非常に複雑で、サービスや基本的な貿易ルールなどはマルチ(複数国間=全参加国間)で交渉し、農業も含め物品関税などはバイ(2国間)交渉を積み重ねていくことになっています。さらに日米間ではTPP交渉と並行した2国間協議も行われている。 とくに物品関税については、このところ“自由化率”を交渉するといわれていますが、そうした統一したルールを決めるにしても、一方での2国間の個別交渉の積み上げをどう整合させるかは不透明です。たとえば、農産品について米国は豪州とはすでにFTAを締結していますから、もうこれ以上の交渉はしないと言っていますね。その一方でやはりマルチで交渉するべきだという国もあり、そこがまだ決着がついていないという状況です。

◆海外農業団体と連携

TPPに関する主要閣僚会議 田代 不透明な部分が多いなか、運動をどう展開していきますか。
 冨士 1つは国内で広範な国民運動を展開していこうとこれまでネットワークをつくってきた団体や、さらに大学教員や弁護士の会なども結成されていますから、そこも含めた連携で国民世論を盛り上げるということです。そして、もう1つは海外農業団体との連携です。TPP交渉は、とくに先進国では団体や企業が政府を突き上げ、その意を受けて政府が交渉しているわけです。
 したがって、われわれ農業団体がやれるのは米国やカナダなど各国の農業団体と意見交換して彼らが何を考えているのか、本音と建て前を探って共通認識に立てるのかどうか、それを積み上げていくことだと思います。
 そこでJAグループは米国班、カナダ班、ベトナム・マレーシア班、NZ・豪州班と4つ班を結成して各国農業団体と意見交換をしていこうと思っています。
 3つめは政治力の結集です。選挙を経て大きな与党になったわけですが、与党のなかにも推進派も中立派もいます。この状況のなかでわれわれと思いを同じくする政治勢力をできるだけ拡大していく地道な取り組みをしていくということです。
 田代 交渉参加前から分かっていたことだとはいえ、情報がほとんど開示されないことについては与党の会合でも、これで批准できるか、と問題にされています。
 冨士 改めてTPP交渉の秘密性を実感しているということだと思います。やはり国会で批准するにしても合意形成のプロセスを経ないまま、この交渉結果でどうか、というのでは、そこから大議論になりますよ。
 日本は民主国家であって、しかもTPPは国民生活に関わる大きな問題ですから、中身を徹底的にチェックし大議論にしなければなりません。それをせず、批准するかどうかだけ問われるのは認められません。
 一方で米国はかなり情報開示をしているのではないかという話もあります。一部の国会議員は協定文書を閲覧しているのではないかという。そのように国ごとに情報開示の仕方が違うことも、だんだん問題視されれば、ある程度のレベルでは開示されていく可能性もあると思います。引き続き情報開示をして国民的議論をするというプロセスを踏むよう求めていくことが大事だと考えています。

(写真はTPPに関する主要閣僚会議)


◆国会決議を守らせる

 田代 先ほども指摘されたように、物品の関税交渉では自由化率が議論されていくという報道もあります。そうなると自由化の水準がせりあがってきて80%から90%、95%へと話が進みかねない。
 そうした局面では日本もこの品目は守るがこの品目は譲るといった選別を行うことも出てきそうです。それでは地域によっては深刻な問題になります。
 冨士 われわれも関税撤廃品目をどのくらいにするかという自由化率といった議論ではなく、地域ごと、案件ごとに詰めていく必要があると思います。その積み上げた結果が一定の水準になるということであって、最初から中身が何もないなかで自由化率を議論するのはおかしい。
 国会決議では重要5品目等については関税撤廃の除外とするということですから、それをしっかりと実現する。そのうえで関税は残すけれどもどの程度削減するのか、あるいは無税枠の拡大をどう考えるかといった交渉も考えられます。
 米国もすべての農産物に競争力があるわけではありません。砂糖は豪州のほうが競争力があるし、コメはベトナムのほうが強い。こうした問題が国ごとにあるわけで、その案件ごとに交渉を積み上げていくのがバイでの関税の2国間交渉だと思います。
 その意味でも全中として各国農業団体と意見交換していこうということです。たとえば、米国は砂糖の輸入国ですから、砂糖の団体はわれわれと共通する立場です。カナダの供給管理品目、酪農・乳製品、鶏肉・鶏卵に関わる団体も同じです。
 それからベトナムにはJAグループとして協同組合の育成に貢献してきていることもあり、さまざまな連携ができるし共闘もできると思います。
 田代 TPP反対運動については、国会決議や自民党の決議でも聖域は6つに関わるのであって農産物だけではないわけです。引き続き国民的な運動になるようにがんばっていただきたいと思います。


◆JAは地域に貢献

 田代 さて、国内問題としては規制改革会議に農業ワーキンググループ(WG)が新たに設置され、農協改革もテーマになるとも言われています。先の参院選では一部政党が農協攻撃をしましたが、公党が特定の団体の問題を公約に取り上げたことは今までにないことだと思います。
 このような動きに対してどう備えていくお考えでしょうか。
 冨士 規制改革会議は農業WGで農業や農協について議論し、来年6月にとりまとめを行う予定です。農業の問題については農水省が秋の臨時国会に法案を提出しようとしている「農地中間管理機構」を先行して検討するとしています。
 そして、もうひとつが農協問題ということになりますが、これまでの議論をふまえると信用・共済の分離、中央会監査、准組合員など組合員制度の問題などがあります。しかし、これらについては真正面から正論を主張していくということです。
 ただし、規制改革会議が問題にしているのは地域経済や農業の活性化に弊害となっている制度や規制、です。ということは弊害になっていなければ問題はないということですし、逆にわれわれは地域経済や農業に貢献しているという自負を持っています。したがって、われわれは、かくのごとく地域経済、農業の活性化に取り組んでいるということをもっと積極的に説明していかなければならないとも考えています。
 とくに信共分離論、あるいは信経分離論というのは農協の総合事業をどう捉えるかということですから、ここは徹底的に論戦をし、総合事業を展開することがもっとも合理的であることを分かってもらうようにしなければなりません。


◆農地集積に積極的関与

 田代 農地中間管理機構の議論にも関わることですが、平成21年の農地法改正で農地利用集積円滑化団体ができてその5割はJAが担っている実態があります。ところがこの機構の検討状況をみると円滑化団体の役割は今のところ明確に位置づけられていません。
 冨士 われわれはむしろ農地利用集積円滑化団体をきちんと使っていかないと、この機構の構想は実現しないと思っています。県に農地の受け皿機構をつくっても、現場で農地の出し手と受け手を結びつける機能は市町村、そしてJAなどの円滑化団体です。
 今回のこの機構の構想で大事なことは、耕作放棄地も含めて農地を農地として利用するための手立てであって、県農地中間管理機構はその機能発揮にノーとはいえない点です。出し手から農地を借り、基盤整備して担い手に貸すという流動化が従来よりも強いかたちで実施されることになると思っています。
 しかも、実際の機能発揮は集落段階から話し合って策定する「人・農地プラン」と連動させるわけです。人・農地プランはJAグループが取り組んでいる「地域営農ビジョン」と重なりますし、これはセットで推進していこうとしています。つまり、担い手の特定や農地利用集積の合意形成だけでなく、さらには生産する品目、販売戦略まで策定していこうということです。
 こうした地域農業の絵姿を描いていこうとするプランと農地中間管理機構の機能を連動させるということですから、現場のプランと調和しないような、いわゆる農外企業がむやみに農村に進出するということにはならないと思います。
 田代 JAグループとしては、やはり地域の農業者の話し合いを基盤にした取り組みをしっかり進めていくなかで担い手への農地利用集積を図っていくということですね。


◆支店を拠点に存在感を

 田代 そこで問題になるのは最初は集落ごとにプランを作成しようとしましたが、実際は集落を超えてビジョンを描く必要があるのではないかというのが現場の課題だと思います。
 そうなるとJAの支店単位で地域営農ビジョンも動かす必要があって、実際に支店長がリーダーシップを発揮している事例もあります。第26回JA全国大会決議では支店の拠点化を打ち出したわけですが、改めて支店拠点化の意義についてお聞かせください。
 冨士 JA合併を進めるなかで、組織全体として効率化、合理化の観点から支店統廃合に取り組んできたわけですが、実は協同組合とは効率化によって価格をより安くするといったことだけではなく、メンバーシップの組織ですから組合員、准組合員に事業利用を高めてもらうことがまず大切で、そこに強みもあるわけです。
 その意味では組合員の結束を強めることが必要で、したがって支店を事業拠点としてだけではなく組織拠点と位置づけ、そこで協同活動を展開しようということです。組合員、准組合員、地域住民、そしてJA役職員が一緒になって活動するというような取り組みを通じて事業利用につなげていかなければなりません。その最前線に支店がいるということを提起したということです。
 田代 農政運動の課題は山積していますが、現場では足下を固めて地域に存在感のあるJAになる取り組みを期待したいと思います。ありがとうございました。

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