脱原発と「TPP」が快勝要因-新潟県知事選を振り返る(上) 伊藤亮司・新潟大学農学部助教2016年10月29日
10月16日に投開票が行われた新潟県知事選挙は、告示日6日前に立候補を表明した米山隆一氏が、大方の予想に反して自公推薦候補を6万票以上引き離して快勝した。都市部で票を獲得したと言われているが、詳細に分析すると「TPPから新潟の農業を守る」と明確な訴えが農村部でも支持を集めた。新潟大学の伊藤亮司助教は「農家ひとりひとりの心情」が大方の予想を裏切って地方を変えようとしていると分析する。
◆「即席の」米山候補がふたを開ければ...
与野党対決(森民夫=自・公VS米山隆一=共・社・生等+市民)となった今回の新潟県知事選。当初、盤石とみられていた森民夫氏に対し、告示日6日前に、ようやく出馬表明した「即席」候補であった米山隆一氏のたたかいは、ふたを開けてみれば森氏の46.5万票(得票率46%)に対し、米山氏が52.8万票(得票率52%)と一定の票差をもって勝利した。
前回参議院選挙における中原八一(与党)と森ゆう子(野党+市民)の対決では、わずか2000票差でギリギリ勝利を掴んだ「野党共闘」は、その意味では前進した訳である。選挙期間中「福島の検証なくして再稼働はありえない」を持論とした泉田前知事の継承を強調した米山氏と、「(原発については)県民の安全を最優先にする」としつつも、自・公を含めた原発再稼働派に担がれた森氏の差がはっきり出た結果でもある。
この間、中越地震、中越沖地震を経験してきた県民にとっては、原発災害はリアルで身近な生活問題であり、選挙戦前の県内世論調査で60%以上が柏崎刈羽原発の再稼働に反対・慎重であった県民意識が素直に出たものと思われる。
◇ ◇
ただし、ここまでの軌跡は、まさに紆余曲折。戦後処理を含めて今後の県政の安定化が次の課題になるのは間違いない。事の始まりは、3期連続知事をつとめ、続投を公言していた泉田前知事の8月末における突然の「敵前逃亡」である。森氏は、自・公与党からの推薦に加え、県都新潟市の篠田市長率いる市長会の支援、さらには、当初候補擁立を図った民進党がその実現を諦めるなかで「自主投票」となり、それを受けて、電力総労を傘下のひとつとする連合新潟が森氏支持に回った。一時は、ライバル不在の独りレースになりかけた森氏の圧勝を誰もが疑わなかったのではないか。
そこに急転直下、民進党をさっさと離党してきた米山氏を「市民」および5党(共産・自由・社民・新社会・緑)が迎え「対立候補」づくりが一気に実現する。市民側の受け皿組織として個人が集う「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」が結成され、磯貝潤子氏(3.11原発災害により福島県から避難・安保関連法に反対するママの会@新潟)など4名が共同代表となり、米山氏と政策協定を結んた。それに各党や団体を加えた連絡協議会が共闘組織として選挙運動の実行部隊となり、いわば政党は一歩下がる間接的な関係のもとで「市民」が前に出る方式が採用された。
重要な記事
最新の記事
-
【現地レポート・JAの水田農業戦略】新たな輪作で活路(2)子実コーンの「先駆者」 JA古川2024年3月29日
-
農業者所得増加へデジタルビジネス加速 農林中金 中期ビジョンを策定2024年3月29日
-
「子ども世代に農業勧めたい」生産者の2割 所得向上が課題 農林中金調査2024年3月29日
-
東京・大阪で組合長らが 「夢大地かもと」スイカをPR JA鹿本2024年3月29日
-
全国から1,000名を超える農業の担い手が集う 「第26回全国農業担い手サミットinさが」開催 佐賀県2024年3月29日
-
家族みんなで夏の農業体験はじめよう 食農体験イベント「土袋でデコきゅうり」開催 JA兵庫六甲2024年3月29日
-
(377)食中毒1万人は多いか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年3月29日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第96回2024年3月29日
-
【人事異動】全国農業会議所(4月1日付)2024年3月29日
-
品種で異なるメロンの味わいを体験 自由が丘「一果房」で29日から 青木商店2024年3月29日
-
第160回勉強会「レジリエントな植物工場運営・発展に向けて~災害からの復旧・復興事例から学ぶ」開催 植物工場研究会2024年3月29日
-
創立55周年記念 ガーデニング用 殺虫・殺菌スプレーなど発売 住友化学園芸2024年3月29日
-
「核兵器禁止条約」参加求める26万の署名 藤沢市議会が意見を採択 パルシステム神奈川2024年3月29日
-
尾鷲伝統の味「尾鷲甘夏」出荷開始 JA伊勢2024年3月29日
-
令和6年能登半島地震 被災地農家を応援 JA全農石川へ寄付 KOMPEITO2024年3月29日
-
林木育種センター九州育種場 九州育種基本区の「スギエリートツリー特性表」公表 森林総研2024年3月29日
-
農業フランチャイズのクールコネクト シードラウンドで3200万円を調達2024年3月29日
-
鳥インフル 米メイン州からの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年3月29日
-
畜産施設の糞尿処理で悪臭対策 良質な堆肥化を促進 微生物製剤を開発 B・Jコーポレーション2024年3月29日
-
水田のスマート水管理で東大大学院農学生命科学研究科と共同研究開始 ほくつう2024年3月29日