【TPP】交渉脱退覚悟も求め自民議連が決議2015年7月22日
自民党の議連「TPP交渉における国益を守り抜く会」は7月22日午前に会合を開き、ハワイで行われるTPP閣僚会合で国会決議を実現するよう厳しく交渉にあたることを政府に求める決議を採択した。
会合で冒頭に決議案が読み上げられた。出席した110人の議員は次々と意見を述べた。「懸念を払しょく」との内容では弱いなどとの意見が相次ぎ、▽国益が確保できなければ交渉から脱退することも辞さないよう盛り込むべき、▽12カ国で合意すべきことも求めるべきなどの指摘があった。そのため江藤拓会長はこれらの指摘を盛り込んだ修正を行うとして了承された。修正された決議は23日に安倍総理に江藤会長が手渡す予定になっている。
(会合で示された決議案。議論を反映した修正は江藤会長に一任された)
○決議(案)
本会は、平成22年11月4日、「TPP参加の即時撤廃を求める会」として発足し、平成25年2月の安倍総理・オバマ大統領の首脳会談において、一定の農産品にはセンシティビティが存在し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことが確認されたため、平成25年3月15日、我が国は交渉参加を決定し、それ以降、累次の党の決議を守り抜くため、「TPP交渉における国益を守り抜く会」として再スタートした。
7月28日から米国・ハワイにおいて、12力国のTPP閣僚会合が開催され、交渉は山場となると言われているが、今一度、政府は、このセンシティビティの存在を明確にするため行われた党の決議、そして衆参農林水産委員会の決議の内容を遵守し、重要5品目など下記に関する懸念を払拭することが強く求められている。
(コメ)
一 コメについては、国民の主食であり、我が国の基幹作物であることは言うに及ばないが、現在、需給の緩和、そして価格の低迷に全国の生産者が苦しんでいる。このような中で、飼料用米の拡大などにより懸命に需給の安定に取り組んでいるところであり、コメの輸入拡大はこのような生産現場での努力が水泡に帰してしまう懸念がある。
(麦)
二 麦については、重要な土地利用型作物であり、近年次々と新品種生産に取り組み、品質の向上に努めるなど自給率の低い国産麦の生産拡大を懸命に進めているところである。麦の輸入拡大は、このような生産者の頑張りに冷や水を浴びせてしまう懸念がある。
(牛肉)
三 牛肉については、現行の関税水準が大幅に引き下げられてしまえば、輸入牛肉と品質格差がない乳用種や交雑種を中心に、国内産牛肉と競合し、肉用牛生産の意欲が失われ、営農継続がままならなくなるのではないかとの不安が肉用牛農家にある。
(豚肉)
四 豚肉については、養豚農家が、国際競争の波にさらされて以来、規模拡大を必死の思いで進めてきた申で、安価な輸入豚肉の大量輸入を防いでいる差額関税制度の枠組みが維持できなくなれば、これまでの努力を無にし、多くの国内産豚肉の価格が下落することとなり、さらなる経営発展に向けた投資意欲を大きく阻害することから、今後の養豚の経営展望が拓けない事態が懸念される。
(乳製品)
五 乳製品については、国家貿易制度や関税割当等の基本的枠組みが崩れ、輸入が無秩序に拡大すれば、輸入バター・脱脂粉乳により容易に加工乳が生産されることとなるなど、国内の生乳需給のバランスが壊れてしまう。そうした場合、北海道を中心とする加工原料乳の生産はもちろんのこと、都道府県の飲用乳の生産も成り立たなくなることが避けられず、全国の酪農家を暗澹たる状況に陥れる懸念がある。
(甘味資源作物)
六 甘味資源作物については、北海道において、てん菜は輪作体系の中心を成す。また、九州、沖縄の離島では、さとうきびが地域になくてはならない基幹的作物であり、「さとうきびは島を守り、島は国土を守る」との言葉どおり、国土を守る観点からも主要な位置づけを有している。
これらの市場開放は、地域の経済が成り立だなくなるのみならず、日本の国土保全をも損なう大きな問題となる懸念がある。
(食の安全・安心)
七 食の安全・安心については、残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務、輸入原材料の原産地表示等我が国の食の安全・安心に関する制度が損なわれれば、国民の食生活に重大な影響が懸念される。(漁業)
八 漁業補助金については、我が国の漁業補助金制度が維持できなくなれば、持続的農業の発展や多面的機能の発揮、さらには震災復興にも影響が生じることが懸念される。(林業)
九 合板、製材については、これらの関枕について最大限の配慮がなされなければ、国内の温暖化対策や木材自給率向上のための森林整備の推進
に支障が生じることが懸念される。
(ISD条項)
十 ISD条項については、濫訴防止策などが含まれなければ、国の主権が損なわれるこどが懸念される。
TPP交渉に関する十分な情報がない中で、不安に駆られている全国の農林漁業者に対し、このような重要5品目などについての懸念を払拭するとともに、将来にわたって希望を持って農林水産業に取り組むことができる交渉結果を、それ以外の事項についても懸念が十分払拭される交渉結果を勝ち取るまで、そして最後の最後まで全力で交渉に当たるよう、政府の毅然たる対応を求める。 以上、決議する。
平成27年7月22日
自由民主党
TPP交渉における国益を守り抜く会
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