集落法人をJAの新たな協同のベースに-日本協同組合学会2016年5月18日
日本協同組合学会は5月14日に埼玉県の聖学院大学で春季研究大会を開いた。テーマは「地域における生活・生産の当事者から協同組合運動をエンパワーする」。大会では当事者による地域の協同組合運動の取り組みをJA三次の村上光雄代表理事組合長(JA全中前副会長)が「集落法人と新たな協同」をテーマに報告した。
JA三次では▽個人では農業を続けることが困難になってきた、▽個人では鳥獣害に対処できなくなってきたことなどから、集落機能が維持するためにも集落法人の設立に力を入れてきた。目標は50法人で現在、34法人が設立されているという。村上組合長は集落法人の設立の成果として▽集落機能が強まり活性化、▽協同労働による団結の強まり、▽農地の共同利用による効率の向上などを指摘した。
とくに農地の共同利用に関しては「農地に対する第3の意識改革が必要だ」という。第1の意識改革は戦後の農地改革、第2は基盤整備事業による区画整理と大区画化で、現在は農地について所有は個々人でも利用は共同という意識への転換が迫られているという。
同時に、集落法人づくりは、必ずしも最初から全戸が参加に同意する必要がないかたちで進めていることから「かえってまとまりよく、設立と運営が進んでいると」と評価した。そのなかで個々の能力と技能が発揮できるほか、計画的な農地利用と活発な共同作業によって鳥獣被害を防ぐこともできるようになった。集落によっては繁殖和牛の水田放牧に取り組むなど経営も向上したという。
ただ、課題として、若い後継者が育っていないことや、高齢化と能力差によって作業効率が上がらない法人も出てきたこと、和牛放牧などで経営改善を実現をした法人はあるものの、全体として補助金依存体質から抜け出せないことなどを挙げた。とくに農作業の効率を求めると、体力や能力から共同作業に参加しなくなる人も出るなど「作業を一部の人に任せて傍観者になってしまう。集落活動からも離れてしまうなど、地域の和と作業効率化の両立が難しい」という。また、JAが開く集落座談会などにも法人の役員だけが参加すればいいという意識も生まれがちという現実も指摘した。
こうした課題を指摘しながらも同組合長は「集落はJAの基礎組織、集落崩壊はJAの崩壊」と強調し、JAが集落法人を応援し、一緒になって営農と集落を持続させようとJAによる出資や事務局機能、職員参加などを力を入れてきたという。集落法人のうちJAが出資法人は現在20法人ある。
また、JAが金融、販売、購買、営農指導など組織を挙げて支援する方針も強調し、こうした集落法人の活動を村上組合長は「小さな協同」と位置づける。
「いいJAづくりとは、集落組織を含め既存の協同を活性化し、小さな協同、さらに協同モドキでもいいからそれをつくっていくこと。その取り組みをマネージメントし、集落法人を協同のお手伝いしていくことがわれわれの務め」などと語った。
研究大会では広島大学の小林元氏の「地域での小さな協同に協同組合はどう接合していくのか」などの報告があった。
(写真)JA三次の村上組合長中心のシンポジウム風景
(日本協同組合学会の関連記事)
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