生乳指定団体制度-秋までに結論-規制改革会議答申2016年5月20日
政府の規制改革会議(議長=岡素之住友商事相談役)は5月19日、指定生乳生産者団体制度の抜本的改革について秋までに検討し結論を得ることなどを盛り込んだ「規制改革に関する第4次答申」を安倍首相に提出した。
規制改革会議はわが国の酪農について▽年率4~5%の生産者が離農、経産牛頭数も30年で30%減少、▽生産量は約20年にわたり低下傾向、▽後継者不足で将来が不透明など厳しい状況にあることを指摘。また、酪農家の苦労が所得面で報われておらず、その要因として生産・流通構造の問題から所得還元につながっていないなどの認識を示した。
そのうえで、現在の指定生乳生産者団体が有している諸機能を評価・検証し、この制度の「是非、現行の補給金の交付対象の在り方を含めた抜本的改革について検討し結論を得る」と答申した。時期は「28年秋まで」。
規制改革会議農業WGは4月に、生乳流通の見直しに関する意見をとりまとめ、そのなかで指定団体制度の廃止を提起した。これに自民党・農水省は強く反対し調整の結果、指定団体制度の是非も含めて「抜本的改革」について検討するとの文言とした。
また、28年度中に可能な限り速やかに実施する事項として、バター不足がしばしば起きることから国家貿易で輸入したバターなど乳製品が最終消費まで着実に流通するよう計画することや、その着実な実施を検査する体制づくりなども求めた。また、業務用バターの需給状況もモニタリングすることを答申に盛り込んだ。
そのほかロングライフ(LL)牛乳の製造認可審査事項の見直しについて29年度までにデータを収集し、データがそろった時点より半年から1年後に見直し事項について結論を得ることも求めた。
農業WGの金丸恭文座長は指定団体の見直し問題について「需給調整という機能が重要だという話だが、総合計の生産量が減っているなかで需給調整というのはちょっと不思議な感がある」と述べたうえで「今回、指定団体制度を評価、検証して秋までに酪農が継承可能な産業に転換ができるよう貢献できればと思っている」などと述べた。
同時に、生産資材価格形成の仕組みの見直しについても答申に盛り込んだ。
金丸座長は「農家の競争力を問題にするが、農家にモノを売っている人に国際競争性はあるのかというのが今回の問題。隣の韓国と比較していろいろ高いことが判明した。農家の周りの方々の国際競争性も向上していただくことがフェアなことではないか」などと述べた。
秋までに▽生産者の所得向上につながる生産資材価格形成の仕組みの見直し、▽生産者が有利な条件で安定取引を行うことができる流通・加工業の業界構造の確立について「具体的方策について結論を得る」とした。改革の具体策は盛り込まれなかったが、農水省が夏をめどに進めている生産資材価格の調査結果などをふまえて議論が本格すると見られる。
また、公正取引委員会に対して▽農業者等から情報提供を受け付ける窓口について農水省とともに積極的に公表・周知活動を行い、独禁法違反被疑行為の情報を収集すること、▽違反被疑行為に対して効率的な調査、効果的な是正措置を実施・公表するための「農業分野タスクフォース」による取締強化も求めた。これらの事項について公正取引委員会は今年度から実施する。
(写真)規制改革会議答申後の記者会見。中央が岡議長、右は金丸農業WG座長
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