農業WG委員「農業のことは素人」と発言2016年10月21日
規制改革会議の後継組織として9月に発足した「規制改革推進会議」。農業WG(ワーキング・グループ)も9月13日に第1回会合を開きこのほど議事録も公開された。それによると委員は自己紹介のなかで次々に「本当に農業のことは素人でございます」、「これから勉強させていただきたい」とあいさつしていたことが分かった。
弁護士の林いずみ委員は3年前の規制改革会議から引き続き農業WGの委員となった。農協改革を提起したメンバーの一人でもある。それでも「本当に農業のことは全く素人でございまして」と挨拶。一方で、「昭和20年代の占領下でつくられた農業委員会法、農地法、農業協同組合法、この3つを基にした、いろいろな慣行も含めた非常に絡み合った制度の問題を解決しないことには次世代への農業の継続ができないことを痛感しました」と3年前の改革議論を振り返っている。
東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏も再任された委員。しかし「農業にはまったく素人」と挨拶。
今回、新たに委員になった野坂美穂・中央大学ビジネススクール大学院戦略経営研究科助教は水産が専門。「農業についてはこれから勉強させていただきます」。
農業WG会合は非公開で委員等の発言概要は会合後に担当参事官が記者ブリーフィングする。これまで要領の得ない説明や意味の分からない発言だと思うこともあったが「素人」の意見であれば仕方がないか...と思う。が、もちろん見過ごせない問題だ。専門委員には市場原理主義者の学識者もいる。そんな人たちから「農業を勉強させていただいた」らどうなるのか。農協改革をフォローアップすることにもなっている農業WG。徹底して注視し反論すべきは反論しなければならない。
◇ ◇
それを前提にしてJAグループから全農の事業改革などをヒアリングした10月13日の会合概要を改めて紹介したい。
委員からはこんな意見があった。
「全農のビジネスは生産者にとってのリスク要因を回避することではないか。野菜を売るという全農の役割を考えると、生産者が価格、数量に関連するさまざまなリスクを持っているなら、早めに全農がそれを買い取って自分たちがリスクを取って販売していく役割こそ全農が担うべき」。
本紙の取材によると、JAグループ側はこの発言ははじめ米の買い取りをもっとすべきとの指摘かと受け止めたという。米ならば全農は28年産で30万tの買い取り数量目標を打ち出しているほか、実需者と複数年も含めた事前契約を28年産で120万tまで拡大する目標だ。
しかし、この委員はあくまで"野菜"の買い取りにこだわったのだという。そのこだわりを感じ取った出席者の胸のうちに浮かんだのは「腐ってしまう青果物の在庫抱えてどうするの? だから青果センターがあるのではないか」だった。
JA全農青果センター、つまり卸売市場は集まった青果物の取引をただちに成立させて実需者へ供給する。代金決済も短時間だ。つまり、実質、買い取りと同じ機能を発揮しているといっていい。生産者にリスクを負わせない仕組みで実需者との仲介機能を果たし、販売先を開拓するなどしてつくってきた。どこまで理解しているか分からない相手からのヒアリングに応えるのに苦労したようだ。
この委員は発言の後半では以下のような発言をしているが、まったく意味不明である。「(販売?)実績に応じて数量を扱っていくというような役割である限りでは、1円でも高く生産者のために売るということはなかなか具現化しないのではないか」。
全農側の回答は「具体的な買い取りも含めて検討している」とだけ説明された。
いずれ議事録は公開されるが、JAグループの事業については組合員も含めて改めて正確に説明、発信していくことが求められる。そのうえで農協改革は現場では生産者、組合員とJAがしっかり向き合ってどう地域農業の展望を描き、豊かな地域を実現するかだということにぶれずに取り組みたい。
(写真)9月20日に開かれた未来投資会議と規制改革推進会議の合同会合。左から農業WGの金丸座長、石原経済再生担当相、山本規制改革担当相
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