二国間貿易 米国の動向注視-日米関係2017年4月26日
4月18日に行われた日米経済対話に関する両国の共同発表では、日米FTA(自由貿易協定)に関する直接的な記載はないものの記者会見で米国のペンス副大統領は「将来のある時点で日本とのFTAをめざす可能性がある」と述べた。農業分野で牛肉、米など品目別の交渉を求めてくる可能性もある。一方、日本は麻生副総理が米国抜きのTPP発効の意向を示したとされる。日米経済対話は年末までに第2回会合が行われるが、今後の日米両政府の動向に注視が必要になってきた。
日米経済対話は2月の日米首脳会談(米国・ワシントンDC)で「日米関係をより強化するための枠組み」として合意された。
4月18日に来日したマイク・ペンス副大統領は安倍総理大臣を表敬訪問した後、総理官邸で麻生副総理と日米経済対話を行った。
発表された共同プレスリリースでは経済対話を以下の3つの柱で構成することで一致したことを明らかにした。
(1)貿易及び投資のルールと課題に関する共通戦略
(2)経済及び構造政策分野での協力
(3)分野別協力
(1)に関して麻生副総理は日米二国間の経済関係を一層強化し、「両国のリーダーシップで高い貿易及び投資に関する基準を構築し、アジア太平洋地域に自由で公正な貿易ルールを広げていきたい」などと述べた。
これに対してペンス副大統領は「対話を通じて日米両国における経済成長、雇用創出及び繁栄のための強い基盤を構築することが重要だ」との発言があったという。
(2)ではG7で合意した財政、金融、構造政策の積極活用について意見交換し、(3)の分野別協力では、高速道路等のインフラ整備、エネルギー、経済での女性のエンパワーメントなどでの協力が取り上げられたという。
今回の対話では▽近いうちに具体的な成果をもたらすこと、▽今年末までに米国で第2回経済対話を開催すること、でも一致した。
発表された共同文書では「高い貿易及び投資に関する基準についての二国間の枠組み」に取り組むとしており、日米FTAに関する直接的な記載はない。
しかし、共同記者会見のなかでペンス副大統領は貿易交渉に関連して以下のように発言した。
▽TPPは米国では過去のものである。トランプ政権は公式に離脱の手続きを行い、われわれの政策を前に進めている。 ▽トランプ大統領は二国間で貿易協定の交渉を行うことが米国のためになると確信している。
▽今回は対話の始まりであり、お互いが高め、強めあうことのできる経済連携の分野を確認した。将来のある時点では日本とのFTAをめざす可能性がある。
ペンス副大統領は「TPPは米国では過去のもの」と記者会見で繰り返した。トランプ政権は発足当時から貿易赤字解消を目的に「自由で公平で相互利益的な貿易」をめざし、TPPをはじめとする多国間の貿易交渉から二国間の貿易交渉へ転換する意向を表明している。
その皮切りにNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を位置づけ、また中国との貿易赤字解消も最優先事項とされている。しかし、今回の日米経済対話までに、通商代表候補のライトハイザー氏や農務長官候補のパーデュー氏の議会承認が得られていないことから、閣僚人事が決まらないなかでは踏み込んだ提案はできないだろうというのがワシントンの空気だったと関係筋は指摘する。 ただ、ペンス副大統領が記者会見で日米FTAへの意欲を示したことで、年末までに行われる第2回会合までに、米国側が日本との二国間貿易交渉を開始するために準備を始めるのか、それともNAFTAや中国などとの交渉を優先させるのか、など動向に注視する必要がある。
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