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2017.05.17 
多様化する「田園回帰」と地域づくり一覧へ

農村計画学会が議論

 総務省の「田園回帰に関する調査研究会」が3月にまとめた中間報告書では都市部の住民の約3割が「農山漁村地域に移住してみたい」と回答していることや、平成22年の国勢調査では移住者は20代がもっとも多く、30代にも広がりを見せている動向を分析した。また、若い世代の約2割が農山漁村地域は子育てに適していると回答し、実際に過疎地域の4割で30代女性の移住が拡大したという。報告書は「田舎暮らしはもはや夢として語られるレベルではなく過疎地域において着実に起きている」と指摘した。こうした田園回帰について農村計画学会は4月の春季大会で学会として初めて田園回帰を研究テーブルに乗せようとシンポジウム「田園回帰と農村計画学の課題」を開いた。シンポでは農村への移住者の量的変化とともに、移住目的や移住形態の多様化など「質的変化」が起き始めていることも注目された。

◆若者に移住志向

多様化する田園回帰とその課題を話し合ったパネルディスカッション 報告とディスカッションを行ったのは地方に移住し地域づくりに関わっている実践者と研究者。
 新潟県十日町市内の住民10数名の池谷集落に地域おこし協力隊として家族とともに移住、住民とともに地域づくりを続けているNPO法人十日町地域おこし実行委員会(4月1日から「NPO法人地域おこし」に名称変更)の多田朋孔事務局長は、集落人口が減少するなかでも住民とボランティアが車座になって話し合い、5年後の将来ビジョンを描くなど参加型のワークショップがスタートだったと振り返った。
 ビジョンで掲げたのは「日本の過疎の成功モデルを示し日本と世界を元気にする」。活動の柱のひとつとして、無農薬、無化学肥料による米づくりと加工品(おかゆ)を開発、ネット販売を行っている。現在10tほどの販売実績に。集落営農組織として認定農家にもなりメンバーの雇用もしている。
 年間を通じた地域外の人たちとの交流にも力を入れ交流人口は1000人になった。十日町市内への移住促進にも取り組み、情報発信や移住相談などを行い、インターンとして受け入れた31人中11組14名が十日町市に移住した。池谷集落としては平成21年に6軒13名だったのが、28年には11軒(うち1軒は民宿)24名に増えた。年少人口(0~14歳)割合の全国平均は約12%だが、この集落は21%となっている。
 移住には、生活できる仕事の確保が重要だが、「それ以上に地域の人がよそ者を歓迎する姿勢が重要」と多田氏は話した。
 NPO法人ふるさと回帰支援センターの嵩和雄氏は、地方への移住を望む理由としてかつては「自然環境」がもっとも多かったが最近は「地方で働きたい」がもっとも多くなっていることを紹介した。年齢層も定年後の移住ではなく、20代~40代が増えている。
 嵩氏は「農村への移住は、変わり者のすることだったが一般化した。地方の概念が広がったことも理由にあるのでは」と指摘。シンポジウムのコーディネーターを務めた小田切徳美明大教授は「移住の大衆化」が起き始めているとすると、田園回帰の多様性を検証することが、受け入れ側にとっても課題になると提起した。
 移住を望む都市住民の多様性について神戸大学の中塚雅也准教授は▽農業という営みを拠点とする、▽暮らしの場として農村を拠点とする、▽都市に拠点を置きながら農村に通う、▽どこも拠点としない、といった類型がみられるのではないかと提起した。多田氏も炭焼きに関心があって移住したいというが「農業には関心がない」という人も出てきたと話した。

◆働き方の見直しも

 NPO法人いわて地域づくり支援センターの若菜千穂常務は「私らしい仕事が地方でならできる」と考える人が増えており、農業に必ずしも関心がない人がいることを報告し、若い世代で人事異動などをきっかけに移住を考えるという傾向も指摘した。嵩氏は「働く場と暮らす場の距離を近くしたいなど、自分の意志でライフスタイルを変える人が多くなってきた」と話した。
 一方、会場からは都会での生活が厳しいから地方での暮らしを、という人々の思いは「人材派遣会社も狙っている」という指摘も。非正規雇用など労働環境の問題なのに、それが地方への移住促進という課題にすり替えられてしまうような、政策全体のありようへの批判的視点の必要性も強調された。

◆地域づくりどう進める

 鳥取大学地域学部の筒井一伸准教授は、移住者の受け入れから地域づくりへ発展させる課題を指摘した。
 「もともと移住者は多様。よそ者の受け入れ体験をどれだけしているか、その積み重ねが地域の懐を深くする」と指摘。都市農村交流は大切だが、それは移住者を何人増やすかなどの数値目標を達成することではなく、移住者によって地域がどう変容できるかの視点を指摘した。
 中塚氏も「多様な人々の関わりのなかで農村のガバナンスを考える。移住者の受け入れにあたっては、この機会に集落のルールを見直してみようという取り組みもあっていいのでは」と提起した。
 若菜氏も「移住者へのインタビューなどによって自分たちの魅力を発見できる。人々の田園回帰の目的は何か、地域が明確にしていくことも必要では」などと話した。
 小田切教授は若者の志向の変化を詳細に検討し続けていくことや、コミュニティ論の構築、さらに地域政策を支える財政面の検討も課題になるなどと指摘した。
(写真)多様化する田園回帰とその課題を話し合ったパネルディスカッション

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