高温でも容易に着色する極大粒ブドウ育成に成功 農研機構2018年2月16日
・新品種グロースクローネの育成に成功
農研機構は2月15日、高温でも容易に着色する極大粒のブドウの新品種「グロースクローネ」の育成に成功したと発表した。
グロースクローネは、極大粒の紫黒色品種「藤稔」と早生の赤色品種の「安芸クイーン」を交雑させて育成したもの。またネーミングの由来は、ドイツ語で「大きい」を意味するグロースと「王冠」のクローネを組み合わせた造語による。昨年10月20日に品種登録出願が公表された。
現在、わが国で栽培されている大粒ブドウは、巨峰やピオーネなどの果皮が紫黒色の品種が中心だが、夏季の高温の影響で、九州や四国、岡山県などの西南暖地を中心に着色不良が発生している。こうした果実は「赤熟れ」と呼ばれ、商品性が著しく低くなるため、生産現場では大きな問題になっている。
また、近年、食べやすさを求める消費者の志向を反映し、種なしブドウに対するニーズが増大している。そこで農研機構では、樹勢が強く、種なし栽培が容易で、夏季の気温が高くても、巨峰やピオーネより良好な着色が得られる紫黒色で味も良い極大粒品種「グロースクローネ」を育成した。
(写真)極大粒の見事な果房
これは巨峰、ピオーネとほぼ同時期(8月下旬頃)に収穫でき、ジベレリン処理で容易に種なし果を生産できる。同処理による果房の果粒は両品種よりも大きく、20g程度となる。
全国の巨峰栽培地域で栽培が可能であり、特に巨峰、ピオーネの着色不良が生じやすい西南暖地での普及が見込まれる。
グロースクローネの苗木は(一社)果樹種苗協会を通して今年秋から販売される見込み。
開発の中心にあたった佐藤明彦同機構ブドウ・カキ育種ユニット長によれば、このグロースクローネの育成で、遺伝子レベルでの着色能力に着目し、その高さを確認したこと。また2010年から開始した系統的適応性検査試験を通じて、西南暖地での着色の優位性を確認したことが成功につながったとしている。同氏は「今後はシャインマスカットのように皮ごと食べられるように、さらに品種の改良に努めたい」と話す。
(写真)グロースクローネの結実状況
○問い合わせ先:同機構果樹茶業研究部門企画連携室
○TEL:029-838-6451まで
※ジベレリン処理:
ブドウにおいて、種なし化、果粒肥大などを目的に行われる植物ホルモン(ジベレリン)剤の処理のこと。
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