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農政:どうするこの国のかたち

教育研究の理念「実学」 世界へ 創立125周年を迎えた東京農大(1)2016年7月20日

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東京農業大学学長髙野克己氏
JA岩手県五連会長藤尾東泉氏
司会:東京農業大学名誉教授白石正彦氏

◆生命切り離して農学はない(髙野氏)
◆組合員の声聞き現場に学ぶ(藤尾氏)

 東京農業大学が今年で創立125周年を迎えた。「学問のための学問」を排し、実際から学ぶことを重視した「実学主義」を教育研究の理念として学んだ卒業生の活躍は農業・農村はもちろん、農協・行政などあらゆる分野に及び、今日の日本の農業の形をつくってきた。髙野克己学長と1969年卒業の藤尾東泉・JA岩手県五連 会長(JAいわて中央会長)に、今日の国内・世界の農業・農村・食料の抱える問題、農業教育のあり方について語ってもらった。(司会は白石正彦・東京農大名誉教授)

教育研究の理念「実学」 世界へ 創立125周年を迎えた東京農大 白石 東京農業大学は1891年(明治24年)に榎本武揚によって、実学を重んじる育英黌農業科として創設され、1893年東京農学校と改称されました。1911年(明治44年)には東京農業大学となり、明治農学の第一人者である横井時敬先生が初代学長に就任、その伝統を引き継いで今日に至っています。横井先生は1890~1900年代の栃木県の足尾銅山鉱毒事件では、その原因が鉱山にあることを証明して被害農民を救い、また戦前の産業組合(協同組合)の発展にも尽力されました。それらを踏まえ、東京農大の建学の理念・原点と、現在までの到達点をお聞かせください。


◆社会ニーズに対応 農学系総合大学へ

東京農業大学学長 髙野克己氏 髙野 紹介いただいたように、本学は榎本武揚公がつくられて、その思いを初代学長の横井学長が実現してこられました。この二人無くして今日の東京農大はないといっても過言ではありません。その後、横井学長の意志を継いで多くの教職員、卒業生が国内はもちろん、世界で広く活躍しています。第9代の松田藤四郎学長のとき、単科大学では間口が狭いということで、「食料・環境・健康・エネルギー」をキーワードとする社会のニーズに合わせて、1998年に6学部(農学部、応用生物科学部、地域環境科学部、国際食料情報学部、生物産業学部、短期大学部)19学科の農学系総合大学になりました。
 これによって東京農大の社会的評価が高まり、受験生が増えました。
 創始者の榎本武揚公は政治家であり、科学者であるとともに教育者でもありました。その志の継承の一つが1989年に新設したオホーツクキャンパスの生物産業学部です。少子高齢化が社会問題になる前に、これからは農業を中心とする地方の再生・創成が重要になると考え、網走市に設置されました。社会ニーズをいち早く取り入れ、教育研究の組織をつくってきたことは、われわれが誇りにするところです。

 お蔭さまで、2017年改組では、文科省から定員370人の生命科学部の新設が認められました。「農」は「命」を扱うものです。その過程のなかで、われわれも生命のもたらす産物を利用して、命をつないでいます。生命を切り離したら農学ではなくなります。その思いで申請したものです。
 ただ残念なことに短期大学部は廃止になります。元気のよい短期大学部で、学生の人気もありますが、卒業生に求められる仕事が高度化した今日、短大では対応できなくなったということです。より困難になる前にと考え、やむなく廃止しました。
 新しくできる生命科学部はバイオサイエンス学科、分子生命化学科、分子微生物学科の3学科からなります。また地域環境科学部のなかに地域創成科学科を、国際食料情報学部のなかに国際食農科学科を新設しました。


◆新たに生命科学部 2学部に新学科も

 都会を含め、日本全体の人口が減る中で地域をどのように支えるかが、これからの大きな課題となります。
 地域環境科学部には、すでに森林総合科学科、生産環境工学科、造園科学科がありますが、このなかでとくに地域の生態系維持、土地利用、自然災害防止の政策と管理技術・アセスメントなどの教育研究をするのが地域創成科学科です。
 また、日本の農業や「食」は、世界的に評価が高まっています。農産物の輸出だけでなく、食農文化を創造し、伝える必要があります。国際食農科学科はその思いを実現するためにつくりました。従来のブランドに新しいブランドを加えて、新しい東京農大をPRできると期待しています。

 白石 農業、環境・エネルギー、食料・健康、地域創成の4つのキーワードをもとにグローバルでローカルの視点を保ち、実践は現場でということですね。東京農大は多くの卒業生が農業、農協で頑張っています。卒業生である藤尾会長に、現場からの実践・課題をお聞きしたい。戦後70年、農協の組織基盤、事業環境は大きく変わっています。東京農大で農業のミッション(使命)を学び、畜産学科を卒業して就農。有畜複合経営を実践し、青年組織のリーダー、組合長、会長として農協運動に関わってこられました。JAいわて中央が導入したGIS(地理情報システム:本学の先生が、文科省の助成を受け民間企業連携で開発のシンプルGIS)や農協における人材育成など、その原点には東京農大で学んだ実学があると聞いています。農協の取り組みの現状について聞かせてください。


◆現場直結のGIS 農地管理画期的に

JA岩手県五連会長 藤尾 東泉氏 藤尾 在学中は毎週実習があり、夏休みも2週間、北海道で実習しました。やはりここで得たことは実学です。今日、農協では東京農大の卒業生が数多く活躍しています。いずれも実学が大きな支えになっているのだと思います。
 卒業後、すぐ就農し、そのうち農協青年部に入りましたが、そこで相互扶助、共存共栄の大切さを学びました。農家から学ぶ。これが農協運営の基本だと思っています。中期事業計画を立てるときは必ず組合員アンケートをします。これまで合併を繰り返していますが、合併計画づくりもそうです。組合員から意見を聞きながらやってきました。
 いま農協の課題は、中核農家への対応、農産物の有利販売、そして生産資材価格の引き下げの3つだと思います。販売は生産中心のプロダクトアウトから「消費者から望まれるものを作る」というマーケットインへ、産地戦略の転換が必要です。
 また農協の扱う生産資材価格は高いという声があります。だが奨励金などを含めると決して商系より高いことはありません。だがもっと努力して農家の生産コストを引き下げるよう努めなければならないと考えています。こうした問題に直面するたびに、「現場から学ぶ」という東京農大の建学の精神を思い出します。
 GISは、東京農大総合研究所の農協・GIS研究部会が行ったシンポジウムに連れてきた営農担当の職員が、「こんな便利なものはない。ぜひ使いたい」という要望を聞いて導入しました。集落営農の転作に伴う農地管理や出作・入り作など、ほ場が入り乱れたところでは地図の制作が大変です。担当者は手書きで苦労していましたが、GISだと簡単にできます。画期的な技術で、今後さらに利用していこうと思っています。
 農協の管内には1000ha規模の集落営農組織があります。いくつかの作業班に分かれて運営していますが、作目・品種別の作付状況が把握でき、大変助かっています。職員を東京農大に派遣するなどして技術の取得に努めました。大学と現場の連携で可能になった実践例です。

 白石 2011年の東日本大震災の後、農業復興のプロジェクトに取り組んでこられました。

 髙野 大震災の時は2000人近い学生がキャンパスにいて、その対応に追われ、そのときは考える余裕がありませんでしたが、その後、農業が中心の地域で大きな被害が出たことが分かりました。そこで、「本学として何ができるか」ということで、5月の連休には調査のため、土壌と経営の先生を福島県相馬市に派遣しました。その結果、被災地では一日でも早く営農を再開しないと農家が意欲を失い、離農が進むという報告でした。
 津波を被った水田農地の表面には津波で海底から打ち上げられた土砂が5~10cmの厚さで堆積していました。津波土砂には良質の粘土や作物生育に有効な養分が含まれていました。
 そこで、津波土砂と元の作土を混層して、雨にあてたところ、塩分を容易に除去することができました。その後の土壌酸性化を抑制する目的で転炉スラグを施用し、2012年5月に1.7haの復興水田で田植えを行いました。順調に伸びる稲の姿を見た周辺の農家が営農意欲を取り戻したため、2013年には50haの水田を前年と同じ「東京農大方式」で復興させ、営農を再開することになりました。その際必要な転炉スラグは新日鐵住金(株)から無償提供して頂きました。
 この復興水田で作った米はJAグループの支援もあり、「そうま復興米」として東京農大収穫祭などで販売しました。2016年までに作付けが再開された相馬市の津波被災水田は約650haです。このような津波被災農地の復興と農業経営の支援、復興米の販売については相馬市長からも感謝され、支援の学生たちは、被災地に対して自分たちがどれだけ役に立ったか、また危機にあたっていかに指導力、計画性が大事かということを学んだと思います。
 問題は風評被害です。福島県産は危険だから駄目だという一部の人がいる一方、検査で安全なことがわかっているのだから大丈夫という人がいます。科学的根拠に基づいて安全性が証明されたものなら問題ない。風評で拒否することが非科学的だということを伝えていければと思っています。

東京農業大学名誉教授 白石正彦氏 白石 現地での農家意向調査、現地の土壌にあった作物の実証研究など、現場重視の姿勢は、まさに東京農大の伝統です。言葉でなく理論と実践、この2つは融合することで生きたものになります。
 いま農業は、TPP、政府の農協攻撃など、多くの困難に直面していますが、それを切り返すのは農業者と地域社会の連携であり、農協はその中心となって波を起こす組織だと思います。横井学長は、儲かるからといってすぐ飛びつくのではなく、足元の課題を一つずつ詰めていくことが成功につながるといっておられます。二宮尊徳の「積小為大」の考えです。どのようにして改革の波を起こすか。JAいわて中央では「食農立国」の戦略を打ち出し商標登録されていますが、その思いはどこにありますか。

教育研究の理念「実学」 世界へ 創立125周年を迎えた東京農大 1 2

(写真)座談会、東京農業大学学長 髙野克己氏、JA岩手県五連会長 藤尾 東泉氏、東京農業大学名誉教授 白石正彦氏

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