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シリーズ:日本農業とともに

2016.08.29 
農協・法人・行政が共働することで力を(上) 佛田利弘(公社)日本農業法人協会副会長一覧へ

農業の新しい価値を創造
佛田 利弘
(公社)日本農業法人協会副会長
((株)ぶった農産代表取締役)

 いま日本農業をめぐってさまざまな議論が行われているが、これからの日本農業にとって何が大事なのかを、佛田利弘(公社)日本農業法人協会副会長に聞いた。佛田副会長は、農業の担い手である生産者・法人経営や農協だけではなく行政も含めた農業に携わる人たちが同じ土俵に上がり、ともにプレーヤーとなって共働して新しい価値を創造することが必要だと強調した。

◆兼業を生み出した米価と経済のギャップ

佛田 利弘 (公社)日本農業法人協会副会長 ((株)ぶった農産代表取締役) 「いまの日本農業をどうみますか?」という質問に佛田さんは、日本農業の問題点を考えるには、歴史的に一度振り返り整理することが重要だとし、次のように語った。
 そのときの視点は、それぞれの時代に、農村が他の地域とアクセスする方法と広がりの変化でみることだ。
 江戸時代の交通手段は徒歩を中心としたもので、基本的に農村がアクセスできるのは限られた狭い範囲だった。明治から戦前の時代は、自転車とか荷車によって人の交流や農産物の流通が国内へと広がってきた。戦後はバイクや自動車によって、人やモノの動きが非常に広くなった時代だ。
 戦後の食管法時代は、戦前からあった産業組合の流れから農業協同組合が生まれ、脆弱な農家経営を支援するという非常に重要な役割を果たす。ぶった農産がある北陸の水田農業をみれば、みんなが米を作って農協に出す。値段もみんな一緒で少しでも多く米を出せば所得が増えた時代でもある。
 しかし、米の供給が過剰になると米価が下がり、米の価格と経済成長のギャップが広がり、農家は所得の最大化に向けて兼業化するようになる。そうした流れを後押しするように、耕うん機・トラクター・バインダー・ハーベスタ・田植え機・コンバインと農業機械が次々と登場。米づくりの労働生産性が極端に上がり省力化が進み「完全なる兼業化」が成立する。兼業化が進むことで、作業の外部化や農地を貸す「土地持ち非農家化」が進み、農地集積が専業農家経営で始まる。
 「いまの日本農業が置かれている問題のトリガーはここにあるといっていいと思います」と佛田さんはいう。


◆組織的農業経営が地域農業の中心に

 そして、食管法から食糧法になり、米が統制物質から基本的に自由な流通が可能になるなかで、農業法人経営が成立してくる。言い換えれば、専業の家族経営では規模拡大に限界があるので雇用する経営になり、雇用の安定化のために法人経営へということになる。このように法人経営は農業の兼業化が進むなかから必然的に生まれてきたもので、農業生産の統合化が進んだ経営形態で、何か特別な存在ではない。
 そして地域には「二つの法人経営がある」と指摘する。一家族なり複数家族が共同化したような法人経営と、「人格なき任意組合の集落営農やその発展系の集落法人」だ。
 地域農業のなかでみれば、「絶対的に農地を持っている農家を中心に農業を考えれば、法人経営も集落営農も補助的な機能でしかない」。しかし、「すでに家に農機具を持たない農家が増え、生産技術の伝承も途絶えている現状のなかで考えると、補助的な機能を担ってきた集落営農や法人経営が、実は、いま地域農業の中心になっているといっても言い過ぎではないと思う」。そしていま一番重要なことは、「集落営農や法人経営といった組織的農業経営と農協がどうやって力を合わせて地域の農業を戦略的に、人や情報の交流を含め考えていくかにある」と指摘する。
 その時のポイントは何だろうか?
 「いまの時代は、人の交流と情報の交流がどんな田舎にいてもものすごく幅広いものになっている、ということに目を向けなければならない」。スマホなどネットによってグローバルな情報にどこにいても接することができることなどがある。
 そして地域の現状をみると、「農家経済の外部化が著しくなり、その外部から得た家計資金で金融と共済分野での農協のビジネスが成立していることも無視できない。なぜならメガバンクや大手保険会社と同等のビジネスモデルを確立し、一番優れたサービスをJAグループが提供している」からだ。


◆資材のキーワードは高機能とハイテク化

 一方、営農経済事業は、「収支が成り立った時代から、成り立たない時代に入った」。それは、さまざまな物流や情報の仕組みが作られ、必要な資材の多様な入手ルートや販売ルートが作られ「兼業農家であっても効率的な生産・販売ができるものを、多くの選択肢の中から選択できる」時代になったからだ。
 だから。営農経済事業も「従来のシステムを見直し、金融・共済事業のように効率を考えたビジネスモデルを確立する」ことであり、それは「十分に可能だし、そうでない限り、営農経済事業が発展的な方向に向くことはない」。
 営農経済事業では、最近、生産資材価格について「日本のものが高いとか海外のものが安いという議論がありますが、資材のスペックとしてどのレベルが要求されているのかという議論も一方で必要ですし、使い方など技術でのコストダウンのほうが効果的なこともある」。日本の資材が過剰品質(オーバースペック)になっているという指摘があるが、それは「資材の高機能化と表裏問題」であり、法人経営の場合「快適な労働条件を提供しなければ農業に従事する人がこない」。「農業生産における安全性や快適性は、日本では先進国並の高い水準が要求される」。なぜなら「クーラーのないトラクターに乗せて熱中症のなるようなことはさせられない」からだ。
 だから、生産資材が高い安いの論議よりも「どういう農業をするのか」「戦略的に(農業が)未来を見据えて何を提供するべきなのかを考えていく必要がある」。そのために生産資材に要求されるもっとも重要なキーワードは「ハイテク化と高機能化」だとも。
 ぶった農産では、新たな水稲栽培技術として注目されている「密苗」を、友人の農業者の濱田さん((有)アグリスターオナガ)、石川県農試、農機メーカーのヤンマーと「三者一体」となり開発し、7月に密苗の田植えができる農機を発表したが、農機展示会としては珍しく「黒山の人だかり」だった。

(下に続く)

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