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農政:真の地方創生に英知の結集をーJAの果す役割は甚大である-

第2回 農民・農業が主体性をもつこと2016年11月7日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

◆農業の6次産業化を「3×2×1=6」にしてはならない

 私はこれまで中国を55回訪ね、農業・農村・農民そして食料問題の実情を調査するとともに、各地域の農民、農村組織、農業・農村指導者と意見を交換し、改革の提言を行うなど多面的な活動を行ってきた。
 そういう私なりの活動の中で、遼寧省瀋陽市で瀋陽大学と遼寧省政府共催の大シンポジウムに16年前に講師として招かれたことがある。テーマは「農業の発展を目指す新路線の開発」というものであった。私はこれまで書いてきた内容の農業の6次産業化の推進というテーマと内容の報告をした。
 ところが中国側の一人の報告者は農業の発展のためには、きちんとした市場開発能力の高い企業を中心に地域農業の再編成、再構築を行わなければならないという報告をした。
 私は立ち上って、それは私の言う農業の6次産業化とは全く違うと批判した。
 「あなたの言う農業の6次産業化とは『3×2×1=6』であり、私の主張する6次産業化は『1×2×3=6』です。農民・農業の主体的組織が中心となり生産そして加工、さらに販売を農民側の主体性をもって行うというものです。あなたの言う6次産業化は龍頭企業と言われている大商社が主導権を持ちその下に農産物加工企業を従え、その加工企業がまたその下に農業生産者・農民を組織している姿ではないですか。つまり、3×2×1=6という図式であって、私の主張する1×2×3=6とは全く逆の違うものだと思います」。
 このように批判した。会場の大聴衆は一瞬静まり返ったが、閉会後、省政府の有力者が私を訪ね、政府としては今村先生の言われる方向で努力していきたいという回答があったが、その後どのように具体化したかいまもって報告はない。
 しかし、この瀋陽のシンポジウムだけでなく、その後も乞われるまま中国各地、特に江蘇省の各地で乞われるまま「農業の6次産業化の推進を農民の主体性を確保しつつ推進しよう」というテーマで講演してきたが、私の言う6次産業化の路線を推進している先進事例が各地で芽生えてきていると喜んでいる。
 しかし、この中国・瀋陽での報告事例が示すような動きが、わが国でも各地で見られつつあることに改めて関心を寄せ、資本主導の方向ではなく、農民主導、農協主導の方向と路線をより明確に打ち出さなければならないと警鏡を鳴らせておきたい。
 とりわけ注目しておかなければならないのが、自民党農林部会長をしている小泉進次郎氏の言動である。『文芸春秋』2016年11月号のJA全中会長奥野長衛氏との対談「日本農業改造計画」を読んでみても言質をとられないような巧みな言い回しをしてはいるが、私なりの読み方で深読みすれば、明らかに、これからの日本農業の発展のためには「3×2×1=6」という路線を提起しているとしか読めない。そういう路線への大転換を実務的に農政面で実行するために、農林水産省の主要局長クラスを農水省出身者からではなく経済産業省からもってきて配置し、これからの農政の方向の大転換を進めようとしていることが明らかである。それがどういう姿で形を現してくるかこれから注視し、批判の矢を放たなければならないと考えている。
 「3×2×1=6」という路線には全力をあげて反対し、本来の地域農業、日本農業の発展を目指し、全力をあげて「1×2×3=6」の路線を推進するよう全国の農業者、農協の皆さんに呼びかけたい。

◆食料・農業・農村基本法の精神を忘れてはならない

 食料・農業・農村基本法は、旧農業基本法に代って1999年7月に公布・施行され、それにもとずき農政の基本方針を策定するために、同9月に、食料・農業・農村政策審議会が設置され、私はその初代会長に内閣総理大臣により任命された。
 その初日の会合において、私は次のように述べた。(別紙、添付資料参照※)
 食料・農業・農村基本法の核心は次の5本の柱にあると私は考えるので、この5本の柱を基本に新たな農政の路線は策定されるべきではなかろうか。以下紹介しよう。
第1. 農業は生命総合産業であり、農村はその創造の場である。
第2. 食と農の距離を全力をあげて縮める。
第3. 農業ほど人材を必要とする産業はない。
第4. トップ・ダウン農政からボトム・アップ農政への改革に全力をあげる。
第5. 共益の追求を通して私益と公益の極大化をはかる。
 これが「食料・農業・農村基本法」の精髄だと私なりに整理・集約して述べた(この5本の柱それぞれにさらに5本の小項目を立て、合計25本の柱に集約していたが繁雑になるので省略する)。
 この5本の柱は読めば誰でも判りかつ実践可能な指針として打ち出してあるので、説明は必要としないと思う。
 ただし、第5項の「共益の追求を通して私益と公益の極大化を図る」についてだけは若干の注釈を加えておこう。私は中国はもちろんアメリカや西欧の国々を訪ねてきたが、それらの国々と比較してみて日本の農村が最も異なるところは何か、ということを考えてきた。
 アメリカはじめ西欧諸国の農村は私の観察では、公・私2セクター社会だと考えているが、わが国の農村は、公・共・私という3セクター社会であるという歴史的なすぐれた特質を持っていると考えている。例えば判りやすく例をあげれば「我田引水」、つまり水不足危機の中も我が田にだけ水を引き入れるというようなことはしないしできない。しかし、中国でもアメリカでも干ばつの時、能力のある者、機械力を持っている者は堂々と我田引水をしている。日本の農村と決定的に異なるところである。この歴史的な英知が、わが国の産業組合から農業協同組合へと引き継がれ実践されていると考えている。

(シリーズ記事)

第1回「農業の6次産業化」とは何か

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