農政:緊急特集 TPP大筋合意―どうする日本の農業
国の繁栄は、農(1次産業)の成長にあり2015年10月30日
JA新ふくしま代表理事組合長菅野孝志
多くの国民や生産者が反対していたにもかかわらず、米国アトランタで行われていたTPP交渉が10月5日に大筋合意した。大筋合意への意見や今後の日本農業の在り方などについて、多くのご意見が寄せられている。これらのご意見を逐次掲載しているが、今回はJA新ふくしま(福島県)の菅野孝志組合長のご意見を掲載する。
◆騙し討ちには断固たる決意と行動を
2015年10月5日「環太平洋戦略的経済連携協定TPP大筋合意」翌日の朝刊に大きく文字が掲載された。そして今、秘密交渉TPPの全容ともいうべき事柄がゾクゾクとマスコミの記事として紙面を躍らせている。
「重要5品目」の聖域確保を求めた我が国における衆参国会決議は、何んだったのだろうか。私ら農業者やJA関係者の想いと大いなるギャップを感じざるをえない。
現政権が誕生するキッカケとなった衆議院選挙では、「嘘つかない。TPP断固反対。ぶれない。」が選挙公約でした。通常の認識からして、全く理解し難い真逆の政治手法を平気で使うことに怒りと憤りだけが込み上げてくるのです。
我々は、このような馬鹿にした騙し討ちに対し断固たる決意と行動をとる必要であると考えるのである。
◆消費者とともに継続した反対運動展開
2010年10月、菅首相(当時)からTPP交渉参加検討の発言があり、当JAは、間髪入れずに11月20日に反対の狼煙を上げるべく600名を超える農業者や消費者などによる反対集会とデモを企画実施した。
一過性に終わることなく運動の継続をするために、組合員や消費者をも取り込み小集会・学習会・署名運動・1800名規模の集会・デモなどを継続してきた。
TPP反対の運動を展開するにあたり確認したことは、「日本国を守ることは、1次産業の農業(治山治水・国土保全・環境・景観)の健全な成長をベースに2次・3次産業の成長を促すことであること。TPP交渉は、農業交渉のように捉えられがちであるが、20数分野に上るものであり、農業、暮らし、医療、健康等、『いのちの主権』を縮小させるものでしかない。経済合理主義(新自由主義)のもとに『いのち』を他国に委ねてしまい、さらに今日の日本国を形成してきた『こころ』『制度』等すべての形を変えてしまうものである。決して、そのようなことがあってはならない。」と訴えてきた。
◆数字の魔術で消費者と分断策す
TPP合意内容は、日本の輸入関税撤廃率は、95%、米国豪州など11か国の撤廃率は99から100%。その5%(443品目)は農林水産品である。
数字の魔術により日本農業は守られ過ぎるとの認識を表面化させ、農業生産者と消費者・国民を分断させる手法を用いているように感じるのは私一人であろうか。
TPPの中で農林水産物を輸出品目とする11か国と農林水産物輸入国日本の状況の違いを分析し、本当の意味で国と国民をみどり豊かな大地(農山村)を守れるTPP交渉の結末なのかを検証確認することである。
◆若い人たちに夢と希望を
2015年4月安倍首相は、米議会で次のように述べている。「TPP...TPPには、単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意義がある...強い日本へ、改革あるのみ 実は...いまだから言えることがあります。20年以上前、GATT農業分野交渉の頃です。血気盛んな若手議員だった私は、農業の開放に反対の立場をとり、農家の代表と一緒に国会前で抗議活動をしました。ところがこの20年、日本の農業は衰えました。農民の平均年齢は10歳上がり、いまや66歳を超えました。日本の農業は、岐路にある。生き残るには、いま、変わらねばなりません。私たちは、長年続いた農業政策の大改革に立ち向かっています。...」
そうした責任は、時の政治を司る人々ではなかったのか。
仕組み制度が良くなれば、民栄え国も栄える。
今こそ集い語り捻り出し時間は掛かれども、農業者や製造流通産業の若い経営者に夢と希望を与え得るものとなり日本の力強い底力が芽生えてくるのではないだろうか。
人・食・農業・農村・自然・環境等を蔑ろにして国家・国民・豊かな大地はあり得ない。
なお、皆さまのTPPに関するご意見を下記までメールでお寄せ下さい。
(関連記事)
・【緊急提言】 TPP「大筋合意」の真相と今後の対応 食料・農業の未来のために 戦いはこれから (15.10.07)
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