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特集:JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で

2016.10.13 
【対談】JA東京むさし × 三鷹市 協働で農のあるまちづくり (上)一覧へ

農地は“公的”なもの
市民と価値観を共有
三鷹市長・清原慶子氏
JA東京むさし代表理事会長・須藤正敏氏

 都市農業振興基本法で農業が都市政策上不可欠な存在として位置づけられた。早くから行政とJAの"協働"で都市の農業を守ってきた東京都三鷹市の清原慶子市長とJA東京むさしの須藤正敏会長(JA東京中央会会長)に対談してもらった。(司会は白石正彦・東京農大名誉教授)

 ――三鷹市がめざす「農のあるまちづくり」について聞かせてください。

右から清原市長、須藤会長、白石名誉教授 清原 三鷹市は都心に近く住宅都市として発展していますが、人口の増加は農地の減少をもたらすことでもあります。それを防ぎ、農地を守るために、市と市民、農業者、農協が協働して「農のあるまちづくり」を進めています。今年3月の『三鷹市農業振興計画2022』の第2次改定で、「農地の保全と利用の推進」「魅力ある都市型農業の育成」「市民と農とのふれあいの場の提供」「推進体制の整備」を掲げ、都市農業振興のための施策を明記しています。
 私は6代目の市長ですが、「農のあるまちづくり」は三鷹市の一貫した政策です。それは、あくまで市民の皆さん、農業者と農協の皆さん(青壮年部や女性部を含む)と市が一緒に進めていくものです。これが三鷹市のかたちです。キーワードは、ともに働くという「協働」で、協同組合の「協同」と思いは同じです。
 三鷹市では農業振興事業補助金をJA東京むさしに交付し、農業施策を担っていただいています。平成27年度は6034万円で、有効に活用していただいています。農協は市の農業公園の指定管理者としても活躍しています。農業公園運営懇談会は、利用団体が推薦する方、体験農園主、指定管理者(JA東京むさし)、三鷹緑化センター出店者会が推薦する方、公募市民、市の職員によって構成されています。公園に隣接して農協の緑化センターもあり、野菜や植木・花などを販売し、生産者の名前と顔がわかる「地産地消」を通じて、市民の農業への理解を深めています。農業公園はまさに都市農業振興に向けた「協働」の象徴です。

 ――三鷹市の植木農業者でJA東京むさしとJA東京都5連の会長でもある須藤会長には、都市農業振興で果たしているJAの役割についてお聞きします。

 須藤 三鷹市の都市農業振興については農協が担い手として任せていただいています。農協、農業委員、市の担当部長などからなる農業振興対策審議会で、農業振興計画や施策について審議をしています。農協はかつて、宅地並み課税に反対して農地を残す運動を展開し、三鷹市の住環境を守ってきたと自負しています。そのころは青壮年部が運動の中心でしたが、市との強い信頼関係があったので自信を持って取り組むことができました。
 1991年の改正生産緑地法で、三鷹市の生産緑地はかなり広く指定されました。これも長年の三鷹市の取り組みがあったからです。1960年代に、当時の鈴木平三郎市長が、農業振興はプロである農協に任せ、そのほかの分野に力を入れるという方針を打ち出しました。それが歴代の市長に引き継がれ、今日のような市と農協の信頼に基づく協働に繋がっています。

 ――具体的にはどのような活動をしていますか。

◆   ◇

 須藤 JA東京むさしは、現在も生息しているカワセミをマスコットキャラクターにしていますが、水がきれいで餌になる小魚がいるということです。それには水を蓄え循環させる農地が欠かせません。
 清原 JA東京むさし三鷹地区青壮年部が毎年「農のある風景画コンテスト」を行っています。昨年は市内の小学生から728点もの応募がありました。その入賞作品で作成する「食育カレンダー」には、市の栄養士が市内産野菜を使った料理のレシピを掲載しています。年々応募が増えていることに表れているように、未来を担う子どもが農を愛し、親しみを持つ事は嬉しいことです。
 農業と農地を守るため、農協と共催で援農ボランティア養成講座を開講しています。200人以上の修了者の多くがボランティアを行っています。市長として開講・閉講式に出席し、須藤会長が組合長のころは毎回ご一緒しました。
 三鷹市の農業の特徴は、後継者が確保されていることです。他の職業を経た帰農者が多いのですが、農協の青壮年部や生産者の部会が受け皿になっています。それに、青壮年部の皆さんはPTAの役員や消防、防犯 交通安全などコミュニティを守る活動に積極的に参加されるなど、地域と農業を守る誇り、気概、使命感を持っています。21世紀に農業をするということは、国際的にも国内的にも、公共性のある仕事だと思います。
 須藤 青壮年部のOBには市議会の議員もいて、市長を支えています。

◆   ◇

 清原 都市で農業を続けるのは大変なことです。限られた農地で多品目少量生産の集約的経営の技術が必要であり、土ぼこり、エンジン音、農薬の飛散などを配慮しなければなりません。だからこそ市民の理解が大切なのです。
 須藤 それには子どものころから農に親しむことです。幼児や小学生を対象とした米づくりや野菜づくりも行っています。
 清原 その通りです。三鷹の子どもの幸せは土に触れられる機会が多いことです。市長になってまもなく、新川丸池公園に児童の提案を受けて、学校農園とは別に4つの市立小学校で使う田んぼを作りました。米づくり体験でもち米を作り、お餅をついて食べています。
 また農家に農地を提供していただき、親子が農作業をする「ちびっこ農園」もあります。子どもが農業を知り、愛するよい機会です。農家の皆様には、農業や農地が自分だけのものではなく、公的なものだと思っていただいています。
 須藤 それが株式会社と違うところで、協同組合の精神です。
 清原 東日本大震災のとき多くの市民が近くの農地に逃げて、それを農作業していた農家の皆様から自然に受け入れていただきました。災害時の避難方法を決めておくことも大事ですが、市民がとっさに農地に避難し、農家が自然に受け入れたということは、普段からの信頼関係があったからだと、実感しました。それも空き地ではなく、野菜を作り緑を供給する生産活動している生きた農地にです。ここに意味があります。定年退職後の方や主婦による援農ボランティア、子どもたちが学ぶ学校農園、ちびっこ農園などの事例から、農地は広義の教育や福祉の役割を果たしていると思います。
(写真)右から清原市長、須藤会長、白石名誉教授

・【対談】JA東京むさし × 三鷹市 協働で農のあるまちづくり (上) (下)
【現地ルポ】三鷹市(東京都) 21世紀型都市農業を拓く JA青壮年部が先駆者

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