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農薬:誕生物語

【シリーズ・誕生物語】第7回「フジワン」(日本農薬(株))2013年11月22日

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・量から質へ、時代の要請に応えて
・イオウ系化合物に着目イソプロチオランを発見
・原体製造から販売まで一貫体制備えた企業へ
・いもち病から新分野へ拡大
・画期的な成果を高く評価大河内記念技術賞受賞

 日本農薬株式会社は、1928年(昭和3年)に日本最初の農薬専業メーカーとして誕生。今年で創立85周年を迎える。この間、日本のリーディングカンパニーとして、技術革新を行いながら、安全で優れた数々の農薬を研究・開発し、製造・販売してきている。
 なかでも同社の創立50周年を祝うように1974年に農薬登録を取得して登場した「フジワン」(イソプロチオラン)は、いもち病防除の殺菌剤として開発されたが、植物成長調整剤や制虫作用など広範囲な分野まで効果がある多面的機能をもつ薬剤として今日でも多くの場面で活躍している。
 今回は多様な顔を持つこの「フジワン」の誕生に迫ってみた。

いもち病防除から
多面的機能をもつ薬剤に

多様に広がりを見せるフジワン商品群◆量から質へ、時代の要請に応えて

 第2次世界大戦後の日本の食料難を救い、工業化の労働力を提供して世界の先進国へと経済復興を果たした原動力となったのは農業だ。言葉を替えれば「農業は国の力の担い手」だったといえる。そしてその農業発展を支え推進してきた大きな柱の一つが農薬だ。
 農薬をはじめとする農業関連技術の発展で、日本人の主食であるコメについてみれば「明治時代には250kg/10a程度の収量だったのが1960年代には400kg」(※)を超える水準にまで生産性が大きく向上する。
 しかし、この時期に使われていたBHC、パラチオンなどの農薬は急性毒性や残留性が高いことなどから社会問題化した。これらの背景から1971年(昭和46年)に農薬取締法が大幅に改正され、「長期毒性試験と環境に及ぼす影響の評価が農薬登録に必須」となり「試験方法が厳密となった」(※)。
 そしてこの昭和40年代にコメの減反政策が打ち出され、量よりも質の時代へと移行するなど、日本の社会は高度経済成長から安定成長の時代へと入っていく。農業分野でも、第二種兼業農家が増加し、農薬の省力散布などの技術開発が強く望まれるようになる。
 こうした時代の要請を受けて日本農薬は、省力的で効果の高い理想的ないもち病防除剤―浸透移行性があり、持続性のある新規薬剤で、しかも安全性が高く環境汚染のない薬剤―の探索研究を開始する。そのために、従来の試験法(予防効果、治療効果)に加えて新たに浸透移行性を見出す試験系(薬剤を投与していない展開葉に対する間接効果を調べる)をつくり、この選抜試験で防除効果が認められた化合物については水面施用効果をチェックする評価系を構築した。

◆イオウ系化合物に着目 イソプロチオランを発見

 探索研究にあたっては、すでにいもち防除剤として「キタジンP」が上市されていたので、有機リン系でも塩素系でもないイオウ系化合物に着目、その後の合成展開をするなかでケテンメルカプタール化合物にたどり着く。そしてそのなかから、いもち病防除効果の高いマロン酸エステルに着目し、これの物化性を安定化させ、最終的に「フジワン」(一般名:イソプロチオラン)を1968年9月に発見・選抜する。
 直ちにほ場での評価をしたかったが、国内でこの時期(秋から冬)にほ場試験ができるのは、日本への返還前の沖縄しかなく、沖縄県農業試験所名護支所近辺の借用ほ場で試験を実施し、いもち病防除効果を確認した。
 その後、社内や各県農業試験場の協力を得て実施したほ場試験で有効性を確認。71年から日本植物防疫協会を通じた「農薬の新施用法に関する特別研究」、さらに73年から75年には一般委託試験を実施し、いもち病防除剤としての実用化検討を進めていく。
 最終的に製品化できるかどうかのキーポイントは、前述したような時代と農業の変遷による新しいニーズに応えることができる薬剤かどうかを見極めることであった。ほ場試験などで得られた特性をあらゆる角度から検討した結果、「フジワン」は新規性、安全性、防除効果がともに高く、しかも防除技術の省力化にも貢献する薬剤であることが証明され、73年に製品化を決定、翌74年に農薬登録を取得する。

◆原体製造から販売まで一貫体制備えた企業へ

 この当時、いもち病が多発していたことと、当剤は植物体内への浸透移行性があり水面施用、育苗箱施用のどちらでも高い防除効果を示したことから、広く普及し大型薬剤となっていく。
 また、このころ日本農薬は原体製造から販売まで一貫体制を備えた企業に変貌したいという願望を強く持っていた。「フジワン」はそういう意味でも「社運をかけた薬剤」であり、名実ともに日本農薬が原体メーカーとして自社独自開発した第1号であり、おりしも迎えた創立50周年記念に大きな花を添えた。

◆いもち病から新分野へ拡大

フジワンパック 「フジワン」はいもち病防除剤として開発されたが、その後、さまざまな特性の発見により、当初はまったく予期していなかった新しい用途へと展開されていく。それは
[1]ムレ苗防止効果と健苗育成効果:フジワン処理した育苗箱での良好なイネ苗生育状況の確認が発端となり発見。
[2]イネ籾の登熟歩合向上効果:フジワン処理した水田でイネ刈跡後のヒコバエが多い、生殖生長期の下葉が多い、生殖生長期の下葉枯れが少ない、根張りが良く根雪後の田起こしが大変など各地から寄せられた声を契機に、日本植物調節剤研究協会を通じた委託試験(5年間実施)で実用判定を取得。
[3]白未熟粒の発生軽減効果:上述の登熟歩合向上効果は、低温下を主対象にしたフジワンによる光合成産物の転流促進によるものと考えられ、本作用性から最近問題となっている高温障害によるイネの白未熟粒発生などによる品質低下をフジワン処理で軽減することが期待される。そこで、同社支店で実施した現地実証試験で効果が確認できたので、2008年から委託試験を開始して有効事例を確保し、11年に「高温登熟下における白未熟粒の発生軽減」へも適用拡大。
[4]果樹(ナシ)の白紋羽病防除効果:イネ苗の発根促進をヒントにフジワンを土壌混和処理したナシ衰弱樹で樹勢が回復したことを契機にみつける。
 そのほか、[5]新規製剤である水溶液剤(商品名「ザルート液剤」)はキク、カーネーションの発根促進剤として登録認可されている。そしてフジワン乳剤は温州ミカンの高温条件による着色障害に対する果皮着色促進剤として委託試験を12年から始めるなど、新しい分野への拡大にも積極的に取組んでいる。
 また、植物成長調整剤分野以外に、[6]トビイロウンカ増殖(密度)抑制効果をフジワンを散布したほ場のイネ株観察から発見。この発見は殺虫剤スクリーニング法を変更し、フジワンをリード化合物としたウンカ類防除剤「アプロード」の発見につながった。
 さらに、フジワンの安全性試験中に見つけられたラットの摂食忌避をヒントにした「野鼠の忌避作用」など、多様な分野に適用拡大されている。
 フジワンは上述の効果に加えて、その有効成分であるイソプロチオランの融点が低いために簡単に散布できる拡散剤の実用化は難しかったが、13年に研究者の新しい発想で製剤化に成功したフジワンパックを上市し、粒剤、乳剤とあわせて普及販売できるようになり、生産者の多様なニーズに応えている。
 このほか、フジワンの有効成分そのものは鶏や牛の脂肪肝治療剤としても、それぞれ「フジノール」(鶏用)、「フジックス」(牛用)の商品名で普及販売されている。さらにフジワンから合成展開された類縁化合物は肝硬変における肝機能改善薬や水虫治療薬として医療分野で販売されている。

(写真)
フジワンパック

◆画期的な成果を高く評価 大河内記念技術賞受賞

 以上のように一つの化合物が病害虫防除以外に植物成長調整効果や野鼠の食害忌避効果も加えて、非常に広範囲な分野に適用された農薬はこれまでに例をみないといえる。
 このように、現場や公的機関からの声と同社研究者の素朴な疑問、観察眼から生まれた飽くなき科学的な追及が、フジワンを“ミラクルフジワン”に成長させ、同社の研究開発の基盤となり、新規剤の探索・開発につながっている。
 フジワンのこうした成果によって、1976年に大河内記念技術賞を、84年には紫綬褒章を受章。また、本剤の学術研究に対して78年と84年に日本農薬学会、90年に日本植物化学調節学会から表彰されている。これをみてもこの研究開発がいかに画期的なものであったのかがわかる。
 日本農薬では、今後も時代の要請に応えた斬新な農薬創製を通じて、日本だけではなく世界の農業の発展に寄与していきたいと考えている。

※『農薬産業技術の系統化調査』(大田博樹、国立科学博物館技術の系統化調査Vol.18 2015March)より

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