農薬 シリーズ詳細

シリーズ:現場で役立つ農薬の基礎知識2018

2018.04.09 
水稲除草剤の上手な使い方 進化する薬剤を適期に使用!一覧へ

 雑草は毎年必ず発生して水稲の生育の邪魔をし、米の品質を悪くしたりする。このため、稲の栽培において、毎年必ず防除しなければならない厄介な存在だ。昔はこの除草に過酷な労働を強いられていたが、今では、水稲除草剤の登場により、少ない労力で効率的な除草が行われ、農家の除草にかける労力は大きく削減された。現代のように、水稲作の大規模化が進むと、除草剤の果たす役割はさらに大きくなり、より効果が高く、施用する労力も軽く済むものが望まれている。そういった要求に応えるように、水稲除草剤は年々進化して高性能な有効成分や製剤が開発され、除草作業は、一昔前よりさらに軽い労力でより短時間に行えるようになって水稲栽培の労力軽減に大きく貢献している。ただ、この優れた除草剤も、正しく使わないとその能力を十分に発揮できないので、除草剤の特性に合わせて正しく使うことが肝要だ。
 以下の水稲除草剤の上手な使い方について整理してみたので、参考にしてほしい。

福光の水田風景 どんな水稲除草剤にも、使用適期がある。これは文字通り、除草剤が持ちうる能力を最大限に発揮できる時期であり、この時期をはずして使用しても、効果が甘かったり、雑草の取りこぼしが起こったりする。除草剤を使用する場合は、この使用適期にきっちり使うようにしてほしい。
 近年は、温暖化により雑草の発生が例年よりも早くなり、いつもと同じ時期に散布しても使用適期を外し、残草が出てしまうという例が多くなっている。このため、確実に除草効果を得るためには、何よりも雑草の発生状況をよく確認して、使用適期を外さないことが重要だ。


1.圃場の準備

 除草剤の効果を安定させるためには、丁寧な耕起・代かきを行って、田面を均平にすること、適正な水深を保つことが重要だ。除草剤は、水田の水の中で拡散し、徐々に水田土壌表面に処理層と呼ばれる除草剤の成分で覆われた層をつくって除草効果を発揮する。もし、土壌表面が露出していたり、水深が浅かったりといった状態で除草剤を散布しても十分な処理層ができず、結果、期待した除草効果が発揮されなくなるのだ。
 また、丁寧な代かきで戻りの良い田面になっていれば、植えつけた後の稲の生長点が除草剤の処理層から守られ、薬害の回避にもつながるし、すでに発生している雑草を埋没・枯死させることもできる。
 このように、丁寧な耕起・代かきによる田面の均一化は、色々なメリットがあるので確実に実施するようにしたいものだ。
 その他、水持ちを悪くする小動物等の穴やあぜからの漏水は除草剤の効果を低下させる要因になるので、あぜ塗りや畦畔シートの使用により確実に防いでおいてほしい。

 

2.水稲の適正な植え付け

 水稲苗の生長点は茎の根っこに近い基部にある。この部分がきちんと土の中に入るように丁寧に植え付けることが基本だ。もし、代かき不良による浮き苗や、極端な浅植えが起こると除草剤の薬害が発生しやすくなるので、植付深度には十分な注意が必要だ。
 また、ていねいに耕起・代かきを行っても、代かき後に長期間放置すると植え穴の戻りが悪くなるので、そのようにならないよう作業日程にも注意してほしい。

 

3.除草剤の適期散布

 除草剤には、枯らすことができる雑草の大きさ(葉令)に限界がある。限界を超えた雑草に除草剤を撒いても、残念ながら効果不足になるか取りこぼしの原因になってしまう。水田内でも雑草の生育速度にばらつきがあるので、水田全体をよく観察して、水深の浅いところ等、生育の進んだ雑草を目安にして適期を逃さずに散布するようにしてほしい。

 

4.水管理の徹底

 水稲除草剤は水を介して土壌表面に処理層をつくるので、その処理層がしっかりと作られるまでは水深をきちんと保つ必要がある。このため、除草剤散布時には、水口・水尻をしっかり止め、散布後7日間は落水、掛け流しを行わないようにしてほしい。
 これは、環境影響の回避の面からも重要なポイントなので、必ず守るようにしてほしい。
 もし、自然落水して田面が露出するようなら、せっかくできた土壌表面の除草剤の層を壊さないよう、ゆっくり入水する必要がある。
 近年、ジャンボ剤や豆つぶ剤のように自分で拡散する除草剤が増えているが、このような除草剤を使う時には、除草剤散布時の水深には特に注意してほしい。ジャンボ剤や豆つぶ剤は、水深が浅いと、薬剤の拡散が不十分となったり、除草剤の投入地点に多く除草剤成分が集中し坪状薬害発生の原因となったりするので、5~6cmの水深を確保してほしい。また、水面に発生する藻類も除草剤の拡散を妨げるので、藻類発生前に確実に散布するようにしてほしい。

 

5.多年生難防除雑草の防除

 オモダカ、クログワイなどの多年生といわれる雑草は、土壌中の塊茎と呼ばれる地下茎から、しかも土中の深いところからも発生してくる。このため、水稲の栽培期間を通じて次から次へと発生し、防除が難しい雑草と呼ばれている。この多年生雑草を効率よく防ぐには、効果が長く持続する除草剤を早めに散布しておくのが鉄則だが、発生が多い水田などでは、通常の一発処理除草剤の一回散布のみでは除草しきれないことがある。このような時には、迷わず後期剤との体系処理を行うようにしてほしい。また、多年生雑草が多すぎて困っている場合には、稲の刈取り後に再び発生してきた多年生雑草に対して、根まで枯らす効果の高いラウンドアップマックスロードなどの茎葉処理除草剤を散布するとよい。茎葉処理除草剤の有効成分が多年生雑草の茎葉を通じて地下の塊茎まで届き、地下の塊茎を枯らしたり、塊茎の発生量を減らしてくれたりするので、翌年の多年生雑草の発生密度を減らす効果がある。この技術を数年続けると、多年生雑草の発生量を減らすことができるので、多年生雑草にお困りのようであれば、是非一度お試し頂きたい。
 近年普及している田植同時散布は、早めの散布により安定した除草効果が得られる省力的な散布方法である。ただし、田植時は苗が弱く、水稲にとって薬害の出やすい時期であることや残効の短い除草剤では残効切れによる効果不足や取りこぼしの原因となることなどに十分に注意してほしい。

表 有効成分と作用性

(上の表をクリックすると、大きな表が表示されます。)

 

【抵抗性雑草等に対する対策】

 水稲除草剤は、スルホニルウレア系成分を含む一発剤(以下SU剤)の普及によって大きな進化を遂げ、劇的な除草作業の軽減化が図られるようになった。
 ところが、このSU剤が広く使われ続けた結果、アゼナやコナギ、イヌホタルイ等で抵抗性雑草が出現するようになり、現在では全国的に発生している。その後、これらの抵抗性雑草対策を施した除草剤が登場して一定の成果が得られたが、近年では、難防除雑草のオモダカでもSU剤抵抗性雑草が発生し問題となった。
 加えて、クサネムやアメリカセンダングサ、タウコギ、イボクサ、アシカキなど畦畔から侵入する雑草の害も増加し、これらは従来のSU剤の効果が不十分なことが多いので注意が必要だ。
 平成22年に登録認可されたテフリルトリオン(AVH-301)は、SU抵抗性雑草やクサネム等の特殊雑草(生育初期に限る)に対しても、高い効果を示すため注目されている。このテフリルトリオン以後も新たな除草剤の開発が進み、抵抗性雑草や特殊雑草にも効果を発揮する除草剤が登場しているので、用途に合わせて適切な除草剤を選ぶようにしてほしい。なお、テフリルトリオンやメソトリオンなど白化剤と呼ばれる有効成分を含む除草剤は、飼料用米品種に薬害を発生させるものもあるので注意が必要である。

表 製品名と有効成分(農薬の基礎知識2018)(上の表をクリックすると、大きな表が表示されます。)

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