食品流通 クローズアップ詳細

2016.11.30 
農家の6次化を肩代わり (株)ピュアディッシュ一覧へ

 JA全農の関連会社(株)ピュアディッシュは、野菜・肉・魚など幅広い国産の農畜産物を使って、食品添加物を使わずに調理済み加工食品(6次化商品)を流通させる、農家の6次産業化を支援する会社だ。JA全農とJA・6次産業化ファンドの出資で2014年7月に設立された同社の生産者の所得向上のため尽力する狙いや思いを取材した。

袋詰めした商品を真空にする機械冷却装置

 千葉県千葉市の海岸沿い、全農パールライスや調理パンなどの工場が立ち並ぶ一角、JA全農千葉県本部の元青果加工センターに本社を構える(株)ピュアディッシュ。
 JA全農総合企画部事業開発課の田代典久氏は、同社設立の目的を「真空適温調理法を使って国産農畜産物に付加価値をつけ、生産者の所得向上につなげること」だという。
 「真空適温調理法」は1970年代にフランス料理で開発された調理法。同社では(1)素材ごとの一次加熱(下ゆで)、(2)個々の食材を調味料とともに手作業で計量し袋詰め、(3)真空包装、(4)100度以下の低温で二次加熱し、その後急速冷凍して製品化する。商品の中で人気なのが、ローストビーフなどの肉製品に加え、リンゴのコンポート。シャキシャキとした食感とジューシーさが売りだ。
 設立当初からこの調理法は、コンサルタントの(株)イートーピア代表の三田敬則氏が監修し、人手不足の外食産業向けを目的に展開した。しかし、低コストを望む外食産業にはなかなか浸透しなかった。
 現在は、国産・添加物不使用の食べ物にこだわりを持つ生協、人手不足だが手作りのクオリティを望む介護施設、JR東日本の駅中レストランや東北から九州のJAが取り組む食材宅配事業に採用されている。
 田代氏は、「JA全農の理念は"生産者の所得向上"に貢献すること。低コストのニーズに応えようとすれば、原料の農畜産物を安く買い取らねばならず、理念に反する。また『海外の原料を使えば安くなるのではないか』という意見もあるが、それでは生産者のためにならない」。
 農家が自分たちで6次産業化のための施設や設備を整え流通に乗せることは、人手不足の第一次産業に身を置きながらできることではない。「それならJAグループがリスクを持って農家の6次化を肩代わりし、手取りの最大化に向けて努力しよう。そのための会社なのです」と断言した。

◆  ◇

JAグループから来た食材原材料は手作業で計量

 同社の商品は生協などのほか、食材にこだわりを持つ企業からのオーダーメイドの受注があり、メニューは200種類以上にのぼる。
 工場の視察は年に約80件と注目度が高い。理由は「真空適温調理法」だ。ライン作業ができず、手間暇をかけて商品にしていくこの調理法を導入している企業は少ない。
 原料の国産農畜産物は、雑菌や土を持ち込まないためカット野菜を使用。肉・魚では消費者に販売しない特殊な部位を扱うこともある。
 田代氏は「手間暇かけないと現在流通している商品との差別化につながらず、美味しさにも欠ける」と話す。
 和食のメニュー開発に携わる工場長の工藤明彦氏は、「レトルトは120度の過加熱を行うため肉などが硬くなるが、低温調理するこの調理法は、企業担当者が肉の柔らかさに驚くなど様々な反応がある」と語る。
 困難は、試作品で成功しても、大量製品化の過程でつまづくことがある点。
 「試作の段階では小さな鍋でつくります。しかし実際に製造するとなると大きな鍋で、攪拌のペースも決まった機械で作るため、とろみをつける料理などでは、大きな鍋だとダマができることがありました」。
 そのため入れる順番を変えるなど工夫して商品を仕上げていくという。
 田代氏は「いわばシェフの仕事を大量製品化で再現する仕事。完成を想像し、計算しながら作っていくことが重要」と話した。

◆  ◇

荒巻代表取締役社長 食材宅配事業の商品があるため、毎日日替わりの加工品を製造する。メニューの多い時は1日3種類を1000パックずつ作ることもある。
 工藤工場長は、月に一度同じメニューがくる場合は「その都度、工程の見直しを行い無駄をそぎ落としていく。最終的にバランスよいものができてきます」と話す。
 国産原料で無添加、カット野菜を使っているため割高だが、JAや生協、介護施設など消費者のニーズと合致している企業等では「安心・安全」として受け入れられる。
 同社代表取締役社長の荒巻博氏は「JAグループの一員として、農家の手取りを増やすことが使命。生産者が丹精込めて作った農畜産物を"無駄なく・美味しく"提供する架け橋になることが経営理念です」。
 課題はダイコンやカブなど、冷凍したときに食感が変わってしまう青果物で、今後の冷凍技術の向上などでの改善が期待される。
 これから地産地消も取り入れながら、給食などでの活用の場を拡げていきたいという。さらに落下したり連作障害があったりして商品にすることが難しい青果物を6次化商品にするプロジェクトも進んでいる。
(写真上)袋詰めした商品を真空にする機械、冷却装置
(写真中)JAグループから来た食材、原材料は手作業で計量
(写真下)荒巻代表取締役社長

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